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アーキテクチャ解説&予想!Oracle Database@AWS解析白書②
2024年12月1日、ついにOracle Database@AWSがLimited Previewにて提供されました!今回は現時点で判明している情報について、ドキュメントを読み解きながらOracle Database@AWSのアーキテクチャの予想も交えてお伝えします。
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35年以上にわたりOracle Databaseの販売を続けているアシストには、データベース技術者を育成するための独自の社内研修があります。そのうちの一つが、データベース製品の技術担当に配属された新人全員が経験する「DB構築テスト」です。
新卒入社後にゼロからデータベース構築技術を学んだ筆者(23卒入社・2年目)の立場から、DB構築テストの裏側と経験談をお伝えします!
Index
アシストのデータベース技術者の仕事は、単にデータベースを構築するだけに限らず、非常に多岐にわたります。お客様への提案やヒアリングを通して、お客様のシステムに適したデータベースの設計、導入支援、移行、チューニング、導入後のサポートを行っています。
システムの根幹となるデータベースは、お客様にとって非常に重要で欠かせないものです。そのためアシストの技術者は、高品質で安定したデータベースを構築するために専門的な技術や知識を用いてお客様へ支援を提供しています。
これからIT業界を目指す学生さん向けに補足をすると、そもそも「データベース(DB)」とは、様々な情報が保存されているデータの集合体です。一般的には、データを保存したり、整理したり、検索するなどの操作を可能にするソフトウェアのことをデータベースと呼びます。
企業においてデータベースは、給与管理や顧客管理といった社内管理システムから、銀行預金やECサイトなどのサービスに至るまで、企業活動の根幹に利用されています。
アシストが取り扱う製品の一つであるOracle Database(オラクルデータベース)は、現在世界中で広く使われているデータベース製品です。アシストは、Oracle
Databaseの販売・導入・サポートを通してお客様のあらゆるシステムを支えています。
本記事で紹介する「DB構築テスト」は、お客様の要望に沿った適切なデータベースを構築するために必要な実力が備わっているかを確認する、アシスト独自の社内育成カリキュラムの一つです。
このテストでは、同じくデータベース技術者である先輩社員がお客様役になり、お客様とのコミュニケーションスキルや適切なデータベース構築技術、関連する周辺知識など、業務知識を幅広く習得することを目指します。このテストを通して、先輩社員がお客様に実施する一連の作業と同様の経験を積むことができます。
スケジュールとしては、約1ヵ月半の練習期間の間に3回ほどデータベース構築を行います。練習で構築技術に問題がないと判断されれば、DB構築テスト本番に挑みます。
テスト本番では、データベースの設定値のすり合わせや書類の作成、データベースの構築作業まで、合計約10日間で実践を行います。このテストに合格すると、アシストの新人技術者は晴れてデータベース技術者としてデビューできます。
DB構築テストで実施する作業は、「ヒアリングシートの記入を依頼する」→「設定値を検証し、すり合わせを行う」→「設定値について合意を得る」→「DB構築を行う」→「先輩社員からフィードバックを受ける」という流れで行われます。
お客様と直接やり取りを行う実支援では、先輩からアドバイスをもらったり、作業面のフォローがあります。しかし、社内研修であるDB構築テスト中は基本的に1人で実施します。全体の流れは、以下のようになっています。
各項目について順を追って詳しくご紹介します。
まず、お客様役の先輩社員から、構築したいデータベースの設定値を提示いただきます。先輩とのコミュニケーションは基本的にメールで行い、設定値の確認にはヒアリングシートを使用します。
ヒアリングシートは、データベース構築にあたってお客様に設定値を記入いただくための資料です。お客様が希望するデータベースの設定は、このヒアリングシートを通じて把握します。
次に、受け取ったヒアリングシートを基に検証を行います。
データベース構築における検証とは、お客様環境にデータベースが問題なく導入できることを確認するためのチェックのことを指します。
お客様が希望する設定ではエラーが発生したり、正常にデータベースが動かない可能性があるため、事前に検証を行います。もし検証でエラーが発生したり正常なデータベースが構築できないと判明した場合には、お客様に状況を説明して、設定値のすり合わせを行います。
検証時には手順書を作成します。手順書とは、作業手順が記載された資料で、具体的な手順やコマンドを記します。合意した設定値通りにデータベースを構築できるように、構築作業時は手順書を用いて作業を行います。
最後に、検証が問題なく進み、データベースの設定値のすり合わせが完了すれば、設定書を作成します。設定書とは、お客様のサーバーに対してどのような設定を行ってデータベースを構築したかを記す文書です。DB構築テスト中には、この設定書と作成したデータベースに違いがないかを判断します。
このようにして、データベース構築作業のための準備を行います。
構築テスト日を迎えました。
構築作業ではお客様のサーバーを模した環境で、事前に作成した手順書を基にOracle Databaseのインストールから構築完了までを1日で行います。
ひと通りデータベース構築作業が終了したら、構築したデータベースが設定書の値と等しいか、正常にデータベースが稼働しているかの確認をします。
確認が終了したら、お客様役の先輩に作業が完了したことを伝えて、DB構築作業は終了です。
全作業終了後はお客様役の先輩が以下の点を確認します。
・正確な作業であったか
・設定書とデータベースの設定値に違いがないか
・データベースが正常に稼働しているか
また、メールや一連のコミュニケーションについてもフィードバックを受けます。こうしたチェックを経て、一つのミスもなくデータベース構築ができていれば、晴れて合格です。
DB構築テストでは、データベース技術者として、アシスト社員として、様々なスキルや知識を身に付けます。ここでは、このテストで身に付くスキルや知識について紹介します。
DB構築テストの主な目的は、データベース技術者として適切なデータベースを構築するための技術と知識を習得することです。Oracle Databaseそのものの理解を深めたり、お客様の環境に合わせたデータベース構築手順を学びます。また、データベース構築に必要なソフトウェアのインストールや、設定値の変更方法など、実際の作業を経験します。
お客様に対して適切なデータベースを提供するためには、正確な作業が求められます。DB構築テストでは、これら一連の作業で必要な技術や作業方法を学びます。
技術面で習得するスキルと知識は以下のようなものがあります。
・Oracle
Databaseの仕組みやパラメーター(設定値)の理解
・Oracle Databaseの構築手順
・Oracle
Database構築中に発生したエラーの調査方法
・アシスト社内ナレッジの活用方法
・アシストが提供する技術支援の一連の作業工程
・正確な作業スキル
データベースを構築するにあたっては、メーカーの資料だけでなく、アシストの社内ナレッジや、アシストサポートセンターの情報も活用します。新人は、これらの情報を上手に活用して、データベースを構築する技術を身に付けます。
データベースを動かすにはサーバーと呼ばれるコンピューターを操作します。また、サーバーへはネットワークを通じて接続します。構築時にエラーが発生した場合には、サーバーやネットワークなどの調査が必要になることもあるため、アシストの技術者は幅広い知識を十分に有していることが求められます。
アシストでは、新人のうちから研修やテストを通じてこれらの知識や、その他のデータベース構築に必要な周辺知識を身に付けます。
習得するデータベース周辺知識は以下のようなものがあります。
・サーバーを操作するためのコマンドの理解
・サーバーのメモリーやCPUといった、スペックや機能の理解
・サーバーの構築やOSセットアップなどの作業手順の理解
・ネットワークの設定の理解
コマンドとは、テキストを用いてコンピューターを操作するための命令文です。新しいファイルやフォルダを作成したり、サーバーの設定を変更するときなどに使用します。
筆者も含め、学生時代はパソコンをマウスでしか操作したことがなく、ITに関する知識がない新人がほとんどです。しかし、データベース構築の練習を通して、技術者として必要な知識を身に付けることができます。
最後はお客様対応スキルです。DB構築テストでは、お客様とのコミュニケーションスキル習得も目指します。テストではお客様役の先輩社員に対し、データベースの設定値のすり合わせから構築終了時までの全ての工程にわたってコミュニケーションを取ります。これにより、社会人としてのマナーや、技術者としての対話スキルを習得します。
お客様対応で身に付けるスキル例は以下のようなものがあります。
・メールや文書の作成スキル
・設定書のすり合わせスキルや折衝力
・報連相(作業進捗、スケジュール共有、相談)
メールの内容に不備がないか、伝わりやすい文章になっているかといった点も評価されます。また、データベース構築のために必要な設定値のすり合わせができているか、適切な報連相を行えているかどうかも、お客様目線で先輩社員に評価されます。
晴れてDB構築テストに合格することができれば、アシストの一員として技術者のキャリアをスタートさせることになります。
初めは先輩の補助や検証準備のサポートを通して、実際の案件に携わっていきます。そしてさらに経験を積み、徐々に一人で案件を担当するようになります。
DB構築テストの制度によって何度も導入作業を経験できるため、実際に案件に携わる頃にはOracle
Databaseの知識と構築技術が身に付いているのを実感します。
また実際の案件でも検証を重ねることで、知識の幅が広がり、技術者としてのスキルがさらに磨かれます。このようにしてアシストの新人技術者は成長していきます。
ここで、筆者がDB構築テスト時に経験した失敗談を紹介します。
初めてDB構築の練習を行ったときでした。
検証は中盤を迎え、パラメーター(設定値)の変更を行っていたときです。
メモリーに関する設定を、ヒアリングシートに沿って変更していました。パラメーターをデータベースに反映させるために再起動したところ、データベースが起動しなくなりました。エラーを確認すると、データベースが使用したいメモリー数に対してサーバーのメモリー数が不足しているとのことでした。
データベースのパラメーターを変更前の値に戻そうとしたものの、パラメーターのバックアップを取っていなかったこと、そしてこの状態からパラメーターを変更する方法を当時はまだ知らなかったことにより、データベースを起動させることができませんでした。それにより検証は初めからやり直しになってしまい、お客様役の先輩に練習期間の延長を依頼することとなりました。
この時に、Oracle Databaseとサーバーのメモリー容量が密接に関係していることや、検証を進めるためにパラメーターのバックアップを取ること、メモリーの変更はサーバーの値を確認しながら慎重に行うことを学びました。
テスト本番での出来事です。
構築作業自体は順調そのもので進み、作業を完了しました。
無事にDB構築テストを終了できるだろうとほっとしつつ、設定値に誤りがないか確認していた時です。
1箇所だけ、設定書に記載されている値と実際の設定内容が異なっていることに気が付きました。異なっていたのはキャラクタセットと呼ばれる、データベース内部の文字の種類に関するパラメーターです。
キャラクタセットを変更するには、データベースを一から作り直すしかありません。気付いたときには時すでに遅し。適切なデータベース構築ができなかったことをお客様役の先輩に報告し、作業を終了しました。もちろん、テストは不合格でした。準備段階でキャラクタセットの値を正しく確認・認識できていなかったこともあり、非常に落ち込みました。
後日、2回目のテストに臨みました。そのときにはキャラクタセットのような重要な値から確認するようにしました。おかげで見落としや設定ミスなく再テストに合格し、晴れてアシスト技術者としてのデビューを果たしました。
DB構築テストでは、このように失敗を重ね、大変な思いをしました。しかし、たくさんトライアンドエラーしたことで、現在はOracle Databaseについて深く理解できるようになりました。
DB構築テストでは、研修では触れなかったようなパラメーターの変更や、設定書通りに適切なデータベースが構築できているかの確認作業を行います。また、お客様役の先輩社員とのコミュニケーションの機会もあります。
私はこれら一連の過程を非常に難しく感じ、何度もつまずいてしまいました。
その度に、研修で学んだ内容を振り返ってみたり、アシスト社内のナレッジを使って検証をしたり、先輩に相談をしてアドバイスを頂きました。
そうした努力のおかげで、今ではお客様に適切なデータベースを提供できる技術者になれたと感じます。
このテストでは、基本的なOracle Database(シングル・インスタンス)の構築が目標なため、まだまだ技術者として学ぶことは数多くあります。
今後は様々な案件を担当できるように、資格勉強を行ったり、トライアンドエラーを経験してできることを増やしていき、データベースの技術力を高めていきたいと思います。
次回『新人オラクル技術者の「登竜門」を2年目が紹介!~DB支援説明テスト編~』では、データベース構築技術を身に付けた新人が、お客様役の先輩にOracle Databaseの機能紹介やアシストの支援内容を説明する「DB支援説明テスト」を紹介します。
■本記事の内容について
本記事に示した定義及び条件は変更される場合があります。あらかじめご了承ください。
■商標に関して
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