- 特集
~アシスト創立50周年、オラクルビジネス35周年記念~
よりお客様目線でこれまでのいい関係をさらに発展させていく
アシスト創立50周年を記念して、35年間ともにあり続けていただいた日本オラクル株式会社の取締役 執行役 社長 三澤 智光様と対談を行いました。
【対談】株式会社アイシーエス 代表取締役社長 法貴敬様
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──大塚(以下色文字):アシストでは地域密着を心がけ、10箇所の拠点から全国のお客様をご支援しています。本日は岩手県盛岡市に本拠を置かれ、やはり地域密着型で地元自治体や医療機関から厚い信頼を得られているアイシーエス様をお訪ねしました。まず、その歩みと業務内容についてお聞かせください。
法貴様(以下略):当社は昭和41年、「岩手電子計算センター」として創業しました。自治体には電子計算課といった組織があるのが普通ですが、岩手県はそれを作らなかったのです。代わりに、県と市町村で出資し合い、第三セクターとしてこの会社を作り、公共自治体の基幹システムを当社がお預かりするようになりました。また、岩手は日本一県立病院の多い県で、かつては28の病院があり、それらの病院のコンピュータ処理も当社で行ってきました。自治体と医療機関で全事業売上げのほぼ8割くらいを占めます。
──岩手から始まり、現在は秋田県や宮城県などでも事業展開をされていますね。
合併で市町村の数が減少し、市場が狭まってきました。それなら他県へも出て行こうということで、今では他の県に給与システムを販売したり、市町村向けの住民情報統合システム、内部情報システムなどは全国の市町村へ提供しています。
──他の自治体にもシステムを提供できるのは、やはりそれを専門で行ってきた強みですね。
例えば給与システムなどは岩手県担当者様からの、こういうのがあればいい、こうしたら使いやすい、といった声を聞いて何年もかけて作り上げてきました。お客様の声を取り入れ、痒い所に手が届くという仕事をしてきた結果、他県にもお客様が増えて現在に至っていると思っています。
──大きな出来事として2011年に東日本大震災がありました。震災後、貴社は公的機関や医療機関の復旧支援にご尽力されたと伺っています。ちょうど3年になりますが当時のご様子、また現在の復興状況はいかがですか。
震災当時については、特に沿岸地域は地震や津波で本当に大変でした。当社のお客様は自治体や医療機関ですから、とにかくシステムが使えるよう環境整備やデータの復旧を必死で行いました。中には庁舎の倒壊や浸水でコンピュータが使えなくなったお客様もあったため、システムを仮運用できるようネットワーク敷設作業なども率先して行いました。医療機関については、応援の医師が数多く支援に来られて仮設住宅などで診察をしたのですが、患者さんの病歴やアレルギー、どんな薬を飲んでいるかといったデータがなかったため、当社で持っていた処方箋のバックアップ・データを医師に提供しました。この震災で病院にもバックアップをとっておかないといけない、お薬手帳はデータ保管しないといけない、といった機運が出てきて、そういう意味でもお役に立つことができたと思っています。復興状況について言うと、被災地に瓦礫はなくなりましたが、がらんとしています。公共事業が活発になり一部で景気も回復していますが、東北と一言で言っても非常に温度差があります。まだ岩手県だけでも2万人くらいの方が仮設住宅で暮らしておられますので、その方たちがどこかに住んで、どこかで仕事に就いたりするには、まだ時間がかかるでしょう。どのような情報システムを提供すればより良い生活にお役立てができるかといったことをこれからも考え、実行していきたいと思っています。
──瓦礫が片付いただけでは真の復興は難しいですね。公共事業も2020年に東京オリンピック開催で東北から東京へ建設関係者が流れるのではと言われています。
これまで3年かけてインフラ整備をやってきて、仕事がたくさんあってこなせないところにオリンピックです。人件費が上がり、コンクリートや資材が高騰してきているので、沿岸の方々も当初の単価で高台移転や公営住宅の建築が本当にできるのかと気にされています。しかし東北の、特に沿岸の方々はそれを口に出して言わない、言えない方々が多い。我慢強いのです。さらに高台移転を難しくしている原因には土地の所有関係もあります。これまで境界が曖昧なまま生活していたのが、地震に津波という前例のない状態になり、土地の所有関係を整理し決着するには用地職員を増やしても10年かかると言われています。非常時なのですから、スピード感を持って土地の利用関係を調整していくことが求められています。
──昨今、ビッグデータやクラウドといった新たな技術や課題がIT分野で話題になっています。貴社のお客様での対応はいかがですか。
震災時に病院のバックアップ・データを提供したと先ほど話しましたが、当社には個人情報の問題は別とし、膨大な量の患者さんの診断データが蓄積されています。よくお医者さんからも出してくれと言われます。病院の電子カルテ化が進めばさらにこのビッグデータの分析ができるようになりますので、まさに宝の山だと思うのですが、問題はそれを分析するアナリストをいかにして育て、それをビジネスに結びつけるかということです。震災後、仙台にできた東北メディカル・メガバンクは東北地方の医療の本格的な復興として、長期にわたり地域全体の住民の健康情報に対応しながら復興の核にするというプロジェクトで、ゲノム情報まで読み解いていこうというものです。そこまでいかないとしても、当社に蓄積されている傷病統計データなどで、どうなると脳卒中になりやすいかの分析や、地域ごとの特色を考慮して予防措置の提示、といったことが行えるのではないかと思っています。
クラウドは総務省も熱心に勧めていて、各自治体もやらざるを得ない状況になっています。「自治体クラウド」と呼ばれ、クラウド・コンピューティング技術を電子自治体の基盤構築に活用して地方公共団体の情報システムの集約と共同利用を進めるというものです。これにより情報システムに係る経費の削減や住民サービスの向上等を図ることが目的なのです。平成15~16年頃、私は岩手県でIT推進を担当していたのですが、当時も、市町村を集めて内部情報システムなどの共同利用をしようという機運が高まりました。総論は、「皆でシステムを使えば安くなるので賛成」、というものでしたが、各論に入ったとたんに、会計規則や決済手法が市町村ごとに違うのです。どこかに合わせるということも難しく、そのうちに市町村の合併と重なりプロジェクトは頓挫しました。
プライベート・クラウドを構築して共同利用する、というのはいくらでもできると思いますが、それだとマシンもそれほど安くならず、回線使用料もあり、総務省の言うような3割、5割経費を削減、というようなことは難しいと思います。他県では一部やり始めている市町村もありますが単純にシステムのリプレースをするより割高になり、特定のベンダーを使っているところだけでまとまったり、クラウドに参加することをやめていく自治体も出てきています。批判をするわけではないのですが、クラウドにして仮想化技術を使ってやっているだけでは真の意味でクラウドの実績にはならないのではないでしょうか。総務省はマイナンバーを機に全市町村で共同利用を始めようという話ですが、理想的な自治体クラウドの推進は現状を見るとなかなか難しいような気がします。
──仕事をする上でお客様の声を聞く、ということはアシストでも注力している点ですが、貴社で社員教育、育成のために特に留意されている点があればお聞かせください。
技術的なことは社内で様々な研修を行うなどして修得することができ、それらは技術の現場に任せています。私が大切だと思っているのは顧客とのコミュニケーション能力をいかにつけるかということです。顧客力とでも言うのでしょうか、そしてそれをもとに自分で考えて自分で企画する力を身に付けて欲しいと思っています。このような話を毎月社長講和として社員に向けて話しています。また公共システム部、医療情報システム部といった部門ごとに固まってしまうので、もっと社内交流をして人間力を磨いて欲しいと思っています。
当社の社員は優しく、人が良い。お客様の要望を根気よく聞きシステムを作ります。しかし曖昧な仕様のまま走ると、途中で何か起きたらどこまでが守備範囲で、誰が責任をとるのかわからなくなります。真の顧客第一主義は、お客様の要望を聞いた時に、お客様がおっしゃる通りにシステムを構築するのではなく、その先の兆しというか、何を欲しがっているのか、何を求めているのかというところを汲み取ることです。それができるようになるには、さらに視野も知識も広げないといけないので、そういった視点からこれからも人材育成を行おうとしているところです。
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──アシストも『「お客様の最高」のために』というスローガンを掲げています。パッケージ・ソフトウェアの販売を通してメーカーを超える価値提供をするために、お客様の課題を理解し、ソフトウェア・メーカーの枠を超えた最適な解決策を提示することが求められ、そのためには今、法貴様が言われたお客様の言葉の先を読み取ることが大切だと思っています。
これまでは自治体からの「こんなシステムを作って欲しい」という依頼を受けて受託開発をしてきたので、顧客満足度調査をすると、提案力、企画力がない、と言われることがありました。長年お客様の要望を粘り強く聞き、忠実なシステムを作ることで培ったものは大きいですが、それにプラスして、もっとこうすればという提案を付加することができるとさらに強みが増すでしょう。当社は大手ではありませんので、ニッチを埋めるような、キラリと光るものを作って提供していきたいと思っています。再来年で創業50年になりますが、自治体向けのシステムに深く関わってきているので自分たちのシステムが最高で、他の製品に負けると価格で負けたと思ってしまいがちです。全く新しいビジネスを進めるのも1つの道ですが、我々のコア・コンピテンスから新しいものが生まれるのもいいのではないか、そのためにももっと深堀をしようとそのための勉強会なども開いています。
──アイシーエス様とは十数年来の長いお付き合いをいただいておりますが、アシストへのご要望などをお聞かせください。
今まで通り、きちんとお付き合いいただければと思っています。IT分野は本当に日進月歩です。地方にいるとなかなか最新の知識や情報をタイムリーに得ることは難しく、たいてい何歩か遅れて入ってきます。ですから様々な変化をタイムリーに提供していただければと思っています。
──貴社を通して、アシストも東北の地にお役立てができればと思います。本日はお忙しい中、本当に有難うございました。
1973年、岩手県庁に入庁、2012年、株式会社アイシーエスの代表取締役社長に就任。
取材日:2014年1月
アシスト創立50周年を記念して、35年間ともにあり続けていただいた日本オラクル株式会社の取締役 執行役 社長 三澤 智光様と対談を行いました。
【対談×トップインタビュー:金沢工業大学】
建学綱領である「高邁な人間形成」「深遠な技術革新」「雄大な産学協同」を経営の柱に、「教育付加価値日本一」という目標を掲げて、社会に貢献する大学運営を実践する金沢工業大学の大澤 敏様にお話を伺いました。
【対談×トップインタビュー:通研電気工業株式会社】
東北電力グループとして機器の開発から設計、製造、工事、保守まで一貫した体制でICTソリューションを提供、電力の安定供給に貢献する通研電気工業株式会社の竹原 秀臣様にお話を伺いました。