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2026.05.15

Snowflake Intelligenceで実装するAgentic AI ― Cortexによる構造化・非構造化データの統合検証(後編)

Snowflake Intelligenceで実装するAgentic AI ― Cortexによる構造化・非構造化データの統合検証

2026年1月20日、Snowflake合同株式会社のオフィスにて、セミナー「Agentic AIと実現するデータドリブン」を開催いたしました。Snowflakeの生成AI機能を活用し、組織の意思決定を高度化する「次世代データ活用基盤」の構築方法について、検証結果を交えてご紹介しました。


セッションレポート後編となる本記事では、「Agentic AI」の具現化にフォーカスします。

構造化データを扱うCortex Analystと、非構造化データを扱うCortex Search。これらをいかに組み合わせ、精度の高いアウトプットを引き出すのか。検証結果をもとに、エンジニアが知っておくべき実装の勘所と「エージェント化」のリアルをお届けします。


【あわせて読みたい:セッションレポート前編】
AIエージェントが求められる「戦略的背景」についてはこちら からご確認いただけます。

【あわせて読みたい:イベント開催報告】 [Agentic AIと実現するデータドリブン セミナー開催レポート]
座談会や懇親会の熱気はこちら から



Snowflake Cortexによる検証

Snowflake CortexでビジネスをAIに理解させるための検証結果をご紹介します。

Snowflake Intelligence、Cortex Agents、Cortex Analyst、Cortex Searchのアーキテクチャはこちらの記事でご紹介しておりますので、こちらもあわせてご確認ください。

Snowflake Intelligence PARTⅠ

Snowflake Intelligence PARTⅡ


検証は、次の2つです。

検証1:Snowflake Cortexによるビジネスモデルの理解
ドローン製造メーカーを想定しています。Snowflake Intelligenceに対して質問をして、どのような示唆が得られるのかを検証しています。

検証2:Snowflake Intelligence と Sigma(BI)によるデータドリブンの有用性
Snowflake社ハンズオンのデモデータを使用し、営業、マーケティング、財務、人事の各部門に横断的な分析を実施します

検証1:Snowflake Cortexによるビジネスモデルの理解

検証項目

検証項目は次の通りです。


・ビジネスの構造理解
「完成品ー部材ーサプライヤー」という複雑な連鎖を正しく捉え、サプライチェーン全体を考慮した回答ができるか。

・リスクへの示唆(インパクト分析)
「特定部材の供給停止」という不測の事態に対し、製造計画への影響を即座にシミュレーションし、具体的な対策を提示できるか。

・構造データと非構造データの融合
構造データだけでなく、基本契約書(非構造化データ)の内容も加味できるか。Cortex Analystの分析結果とCortex Searchによる契約検索を、一つの回答として統合できるかを確認。

・自律的なアクションへの接続
代替サプライヤーの自動選定から、担当者へのメール下書き作成といった「次のアクション」までをシミュレートし、自律型基盤としての可能性を確認。



非構造化データ

PDF形式のサンプルの契約書をSnowflake Cortex Searchを用いてRAG化し、納期が遅延した場合に契約書に記載されている内容に基づいた回答を実施できるかを検証します。

契約書の第12条に納期に遅延した場合の違約金に関する文言を含めています。


画像12:サンプル契約書

構造化データ

完成品(PRODUCTS)、部材(MATERIALS)、サプライヤー(SUPPLIERS)は次の通りです。



画像13:構造化データ

完成品(PRODUCTS)、部材(MATERIALS)、サプライヤー(SUPPLIERS)における業務を説明したデータモデルです。

画像5:(再掲)完成品と部材とサプライヤーの一例

完成品(PRODUCTS)、部材(MATERIALS)、サプライヤー(SUPPLIERS)のそれぞれの関係性を表現したテーブルです。

BOM_TABLEテーブルは、どの完成品にどの部材が必要なのかが確認でき、SUPPLIER_MATERIAL_MAPテーブルは、そのサプライヤーからどの部材を仕入れているのか、を確認できます。



画像14:構造化データ

これらの5つのテーブルから次のように表現できます。

画像15:ナレッジグラフ

SnowflakeにおけるAIエージェント実装手順(Cortex Analyst / Search)


セマンティックモデル実装(Cortex Analyst)

構造化データについて、SnowflakeのSnowsight上からセマンティックビューとして実装しています。それぞれ画像13,画像14にあるテーブルの各列項目をディメンション、ファクトの項目として実装します。

ポイントは、画像5の各テーブルの関係性をリレーションシップで実装しています。

画像16の①が完成品(PRODUCTS)と部材(MATERIALS)の関係の定義、②が部材(MATERIALS)とサプライヤー(SUPPLIERS)の関係を定義しています。



       

画像16:セマンティックビューにおけるリレーションシップ定義

RAG実装(Cortex Search)


画像12のサンプル契約書(PDF)をCortex SearchでRAGの実装を行います。


  

画像17:SnowsightからCortex検索を確認した画面

AIエージェント実装(Cortex Agents)

Cortex AnalystとCortex Searchが実装できましたので、それをCortex Agentsに登録します。今回は、サプライヤーにメール送信させるために、事前に作成しているメール送信のプロシージャをカスタムツールに登録しています。

画像18:Cortex Agentsのツール設定画面

また、Cortex Agentsのオーケストレーションで、データモデル関係性とサプライヤーにメール送信する場合の指示を指定しています。

画像19:Cortex Agentsのオーケストレーション手順設定画面

最後に作成したCortex AgentsをSnowflake Intelligenceに登録して完了です。

検証結果

次の4つのプロンプトをSnowflake Intelligenceから実行しました。

※本内容は2026年1月時点の検証結果に基づいています。

生成AIモデルの進化やアップデートにより、現在とは結果が異なる可能性がある点をご了承ください。


プロンプト①:関東からの供給がストップした場合に影響を受ける製品は?


関東のサプライヤー(グローバルパーツ東京)を特定し、供給している部材(カーボンフレーム)から影響する製品(次世代ドローン)を特定しているため、業務を理解して回答できています。

画像20:プロンプト①に対する回答

プロンプト②:カーボンフレームの供給が停止した場合の影響と、その対策は?


カーボンフレームのサプライヤーと影響する完成品を特定しています。供給が停止した場合の影響として、別サプライヤーから供給するように示唆してきています。


画像21:プロンプト②に対する回答

プロンプト③:九州で大規模な停電が発生した。これによる影響、および納期遅延による損害への対応は?


九州のサプライヤーを特定し、そのサプライヤーから供給している部材、その部材を使用している完成品を特定しています。

また、納期遅延した場合の影響をサンプル契約書にある情報を提示しており、Cortex Agentsがツールを使い分けていることが確認できます。



画像22:プロンプト③に対する回答

プロンプト④:(MATERIALSテーブルのカーボンフレームの在庫数をゼロにしてから)在庫状況を確認して

Cortex Agentsのオーケストレーション手順で在庫がなくなった場合、サプライヤーに連絡することを指示しているため、現在の在庫状況を分析し、指示したアクションを実施できるかを確認しました。

結果としては、在庫数から連絡する必要性があると判断し、カスタムツールで設定しているメール送信プロシージャを実行し、メール送信を実施しています。


画像23:プロンプト④に対する回答

考察

プロンプト①から④の結果を受けて、データモデルを理解して必要な示唆を提示していると判断しました。また、Cortex Agentsに登録したCortex Analyst、Cortex Search、カスタムツールを必要に応じて呼び出して実行しています。

しかし、今回利用したデータモデルは簡単な構造であったため、より複雑な構成の場合の挙動確認が必要です。また、Cortex Agentsで指定したオーケストレーション手順もより適切な表現が必要になったり、プロンプトの量が増加するとその分、コストにも影響するため、よりスマートな実装方法が必要になるケースも出てくるだろうと考えています。


検証2:Snowflake Intelligence と Sigma(BI)によるデータドリブンの有用性

検証1ではAIエージェントの自律的なアクションを確認しました。続く検証2では、人間(BIツール)とAIがどのように協調して意思決定を行うのかを検証します。


検証項目

検証2では、Snowflake社ハンズオンのデモデータで、各部門の横断的な分析をSnowflake IntelligenceとBIツールを用いてデータドリブンを実施していきます。

BIツールはSigmaを利用しています。SigmaはSnowflakeで作成したセマンティックビューを利用することができるため、同じデータに対して分析を行うことが可能です。


環境情報

テーブル構成は次の通りです。ディメンションテーブルは数が多いため割愛させて頂きます。


  • ディメンションテーブル(13)
  • 省略
  • ファクトテーブル(4)
  • sales_fact:金額と単位を含む販売取引(12,000件のレコード)
  • finance_transactions:部門間の財務取引
  • marketing_campaign_fact:商品ターゲティングによるキャンペーンパフォーマンス指標
  • hr_employee_fact:給与と離職率を含む従業員データ(5,640件)
  • Salesforce CRMテーブル(3)
  • sf_accounts:customer_dim にリンクされた顧客アカウント(1,000 レコード)
  • sf_opportunities:販売パイプラインと収益データ(25,000件のレコード)
  • sf_contacts:キャンペーン属性を持つ連絡先レコード(37,563件)

上記のテーブルに対して次のセマンティックビューを作成しています。


  • 財務データ (Finance)
  • 取引データ:承認状況、調達方法、契約参照情報
  • 勘定科目:収益・費用分類
  • 顧客・部署・製品・仕入先情報
  • 予算分析、部門別収支、ROI分析が可能
  • 人事データ (HR)
  • 従業員情報:性別、入社日、給与、退職フラグ
  • 部署・職種・勤務地情報
  • 給与動向、離職率、在職期間分析が可能
  • マーケティングデータ (Market)
  • キャンペーン実績:支出、インプレッション、リード獲得数
  • 連絡先・商談・顧客アカウント情報
  • チャネル・製品・地域別分析
  • ROI分析、コンバージョン追跡が可能
  • 営業データ (Sales)
  • 売上取引:金額、数量、取引日
  • 顧客・製品・地域・営業担当者情報
  • 売上分析、業界別・カテゴリ別パフォーマンス追跡が可能

検証結果


Sigmaで2024年と2025年の売上と案件件数をみると2025年の売り上げが好調であることがわかりますが、その原因がまだ不明です。

画像24:Sigmaによる年別、月別売上と案件数比較

Snowflake Intelligenceに次のプロンプトを投げた結果、データよりマーケティング効果を示唆する結果を得ることができました。


プロンプト①「2024年と比較して2025年の売上が増加している原因は?」

画像25:プロンプト①に対するSnowflake Intelligenceの回答

Snowflake Intelligenceでは、推論している内容を画面上から確認できますが、投入されたプロンプトに対して、回答するために必要なデータに対してアクセスし、その結果をさらに分析し、データに対してアクセスする、とまさにデータドリブンを実施していることがわかります。


画像26:データドリブンを繰り返し答えを探し出す

ここで、本当にマーケティングの支出が影響しているのか、Sigmaで確からしさを確認したところ、画像27の上のグラフから確かに支出と獲得リードの相関は見受けられました。


画像27:2024年と2025年のマーケティング支出と獲得リードの関係

さらにSigmaでグラフをドリルダウンしたところ、画像27の下のグラフのように6月、7月、8月、12月が明らかにマーケ支出が高くなっていることがわかりました。


この理由について、Snowflake Intelligenceで確認したところ、次のような分析した結果を得ることができました。


プロンプト②「6月,7月,8月,12月にマーケティングの支出が高い理由は?」


画像28:プロンプト②に対するSnowflake Intelligenceの回答

考察

自然文で問い合わせる際にその用語の正しさなどの確認にもSigmaの利用は役に立ちます。

Snowflake IntelligenceとSigmaを往復して分析することで、全体を俯瞰して傾向に気づくことや、グラフ化していない項目や期間も考慮して分析が可能となり、有益な分析を実施することが可能です。AIによるデータドリブンと、人がBIでデータドリブンを交互に繰り返して実施していくことが大切であることがわかりました。

また、Sigmaでグラフを作成する際にもSnowflake Intelligenceの結果を利用することで、レポート作成時間の短縮につながりました。

Snowflakeによってデータドリブン基盤を構築する

今回の検証を通じ、生成AIがデータドリブンを真に「進化」させる姿をお届けしました。

ポイントは、データモデルによって業務をAIに深く理解させることと考えます。自社に特化した文脈でAIが思考し、独自の示唆を得られる環境が、他社には真似できない競争優位性を生み出します。

Snowflake Intelligenceは、自律的にデータを探索し、私たちに新たな視点を与えてくれるAgentic AIの先駆けです。


「AIによる示唆」と「人間によるBIでの深掘り」を往復し、双方の強みを融合させること。

上記が複雑なビジネス環境において正しい意思決定と実行を導き出す、次世代のデータドリブンの姿であると考えています。


画像24:人とAIによるデータドリブンの実現

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#SnowflakeIntelligence #AgenticAI #Snowflake








執筆者情報

1998年入社。Oracle Databaseエンジニアを経て、Hadoopビジネス検討立ち上げや、パートナーとVMware、Nutanixなど仮想基盤の提案、提供を実施。その後カスタマーサクセスを...show more


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