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2025.10.21

Exadataユーザー必見!他クラウドサービスでのExascale活用のポイントを徹底解説

以前の記事で、Oracle Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(エクサスケール。以下、ExaDB-XSと表記)の特徴とメリットについて紹介しました。
その最も大きなポイントは、小規模利用やスモールスタート、柔軟なスケーリングが可能だという点です。

ExaDB-XSのメリットは分かったので使ってみたいけれど、様々な制約により「Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)以外のクラウドサービスで使えないだろうか?」と考える方もいらっしゃるかと思います。
このExaDB-XSは、他のクラウドサービスプロバイダー(以下、CSPと表記)でも利用することができます。

※2025年9月29日現在でExaDB-XSをプロビジョニングできるCSPはMicrosoft Azureのみ(オラクル社のサイトに移動します)
https://apexadb.oracle.com/ords/r/dbexpert/multicloud-capabilities/multicloud-regions

本記事では他CSPでのExaDB-XS構築に焦点を当て、他CSPでのプロビジョニングまでの流れ、およびOCIでExaDB-XSを利用した場合との違いを、検証結果をとおしてご紹介します。

Oracle Database@Hyperscalerの概要

他CSPでのExaDB-XSプロビジョニングの流れを紹介する前に、まずはOracle Database@Hyperscalerのサービス概要を解説します。あわせて、オラクル社が注力するマルチクラウド接続サービス、 Oracle Interconnect for 〇〇 の概要もご紹介します。

Oracle Interconnect for 〇〇

OCIと他CSPをネットワークレベルで接続する専用接続サービス。

Oracle Database@Hyperscaler

他CSPのクラウドサービスが提供されるインフラストラクチャ上で、Oracle DatabaseのPaaSサービスをマネージド提供するサービス。提供されているPaaSサービスは以下。※1
・Oracle Base Database Service(以下、BaseDB)
・ExaDB-XS
・Exadata Database Service on Dedicated Infrastructure(以下、ExaDB-D)
・Oracle Autonomous Database - Dedicated(以下、ADB-D)

※1 各CSPで提供されているサービス、リージョンは異なります。詳細はこちらの「Oracle Multicloud Capabilities」を参照ください。(オラクル社のサイトに移動します)
https://apexadb.oracle.com/ords/r/dbexpert/multicloud-capabilities/multicloud-regions

各サービスの違いは以下のとおりです。

サービス名 Oracle Database@Hyperscaler Oracle Inter Interconnect for 〇〇
サービス概要 各CSPでOracle DatabaseのPaaSが利用できるサービス OCIと各CSPを低遅延の専用線で接続するサービス
サービス提供場所 各CSP OCIと各CSP

上記の各サービスの比較を踏まえた、Oracle Database@Hyperscalerを利用するメリットは以下です。

① ライセンス体系とコスト面での優位性
Oracle Database@Hyperscalerは、各CSP内で OCIと同様のPaaSサービスとして提供されます。サービス提供時にはOCIと同じライセンス体系および課金メトリックが適用されるため、各CSPで独自にOracle Databaseを利用する場合に比べて、ライセンスやコストの面での優位性があります。

クラウド上でのOracle Databaseライセンスについては、別の記事で詳しく紹介していますので、詳しく知りたい方はこちらも参照してください。
https://www.ashisuto.co.jp/db_blog/article/oracle-database-license-rule04.html

② 各CSPで提供されているサービス/アプリケーションとの親和性
Oracle Database@Hyperscalerの利用により、CSP上に構築されたアプリケーションとの接続が容易になります。また、各CSPが提供するネイティブサービスと連携できるため、既存環境との統合性を高めつつ効率的に活用できる点が特長です。

③ RAC構成や Exadataの高性能インフラを利用可能
Oracle Database@Hyperscalerの利用により、OCI以外のクラウド環境でも、Oracle DatabaseのRAC構成や高性能なExadata基盤のメリットを享受できます。

④ レイテンシーの極小化
Oracle Database@Hyperscalerは、各CSPのクラウドサービスが提供されるインフラストラクチャ上でOracle Databaseを提供するため、データベース接続時のレイテンシーを極限まで抑えることが可能です。

今回は、BaseDBとExaDB-Dの中間に位置するサービスであるExaDB-XSを、Microsoft Azure上でプロビジョニングし、検証を行いました。

ExaDB-XSプロビジョニングの検証結果

検証のゴール

今回の検証では、OCIコンソールとサービスが提供されるCSPのポータルで実施できる管理操作の内容の違いについて整理します。

Oracledatabase@AzureにおけるExaDB-XSのプロビジョニングの流れ

ExaDB-XSのプロビジョニングは以下の流れで実施しました。

① サブスクリプション
  今回は検証目的のため、パブリック・オファー(Pay As You Go)購入オプションでサブスクリプションを作成しました。※2

※2 Oracle Cloud Infrastructureドキュメント(オラクル社のサイトに移動します)
https://docs.oracle.com/ja-jp/iaas/Content/database-at-azure/getting-started-public-offer.htm

サブスクリプションの作成後、しばらくするとOCIテナントの作成のメールが送られてきますので、そのメールに従ってOCIのテナントを新規に作成します。

② ExaDB-XS構築に必要なリソースの作成および検討
  ExaDB-XSを構築するために必要なリソースは以下の3つです。
  事前にそれぞれの設定値の検討と作成を実施します。
  (1) サブスクリプション(①で作成済み)
  (2) リソース・グループ
  (3) 仮想ネットワーク
    → 仮想ネットワーク作成時には、サブネットを作成する際にサブネットの委任のパラメータは「Oracle.Database/networkAttachments」を設定することに注意してください。

③ ExaDB-XSのプロビジョニング
  事前に検討したパラメータでExaDB-XSのプロビジョニングを実施します。このプロビジョニングは1時間~2時間程度で完了します。

④ サブスクリプションの手順で作成したOCIテナントからも作成済みのExaDB-XSが確認できます。

各コンソールやポータルで可能な管理作業

次に、各コンソールやポータルで実施できる作業とできない作業を確認しました。その結果を以下の表に示します。 ※3
※3 検証時点(2025年7月29日時点)の情報です。

項目 OCIコンソール Azureポータル
VMクラスタの設定値確認
VMクラスタの設定値確認(有効ECPU)
VMクラスタスケーリング(有効ECPU)
VMクラスタスケーリング(合計ECPU、予約済ECPU)
VMクラスタスケーリング(ファイルストレージ)
VMクラスタスケーリング(DBストレージ)
VMクラスタスケーリング(仮想マシン)
仮想マシンの起動停止
仮想マシンの情報確認
モニタリング(監視)
バックアップ周りの設定確認
バックアップの取得
接続サービス名などのDBレイヤーの情報取得
サービスリミットの引き上げ申請

まとめ

この結果により、OCIコンソールでは仮想マシンのスケーリングを除いたすべての操作が実行できることがわかります。また、ExaDB-XSへの仮想FWルールの制御はOCIレイヤー(セキュリティ・リストやネットワーク・セキュリティ・グループ)で実装します。
そのため、Oracle Database@Hyperscalerのサービスを利用する場合でも、OCIコンソールの操作やサービスに対する知識などのOCIスキルが必要になることがわかりました。

OCIでExaDB-XSを利用する場合との違い

次に、以下の場合の違いについて見ていきます。

①アプリケーションは他CSPで構築、データベース(ExaDB-XS)はOCIを利用した場合
②アプリケーションは他CSPで構築、データベース(ExaDB-XS)はOracle Database@Hyperscalerのサービスを利用した場合

前述の検証結果のとおり、Oracle Database@Hyperscalerのサービスを利用した場合、OCIコンソールでは仮想マシンのスケーリング操作が実行できません。
仮想マシンのスケーリングは、RAC構成のノード追加など恒常的なリソース不足を解消する時の、頻度の低い大規模なメンテナンスといえます。また、仮想マシンのスケーリングにはOSレベルでの再起動が発生します。
その他の有効ECPU数やストレージのスケーリングは、日々の負荷変動などに応じてスケーリングする要素であり、頻度の高い日常的な管理作業といえます。

※各種スケーリングの挙動については別の記事で詳しく紹介していますので、こちらを参照してください。
https://www.ashisuto.co.jp/db_blog/article/oci-exascale-onlinescaling.html

このことから、ExaDB-XSの日常的なマネジメント面の影響は少ないことがわかります。
その反面、サブスクリプションの契約や周辺のリソースのプロビジョニング、仮想マシンのスケーリング操作をするために、他CSPのコンソール操作やスキルが必要になります。

それぞれのメリット/デメリットを以下の表に示します。

①データベースは(ExaDB-XS)はOCIを利用した場合 ②データベース(ExaDB-XS)はOracle Database@Hyperscalerのサービスを利用した場合
メリット OCIネイティブな移行サービス、DRサービスとの親和性が高い点。 他CSP上で構成されたアプリケーションとDB の通信が同一クラウド内になり、低レイテンシーかつシンプルなシステム設計。
デメリット OCIと他SCPの両方のスキル習得やマネジメントをする必要がある点。

さいごに

今回はOracle Database@Hyperscalerの概要とExaDB-XSプロビジョニングまでの流れ、ExaDB-XSをOCIで利用した場合との違いをご紹介しました。

OCI以外のクラウドでも高性能なExadata基盤が利用できることが分かりました。しかし、Oracle Database@Hyperscalerを最大限活用するには、OCIの知識も不可欠です。

今後は他CSPでもExaDB-XSやBaseDBのPaaSサービスが提供されることを期待したいです。

本記事が、ExaDB-XSを活用したいけれど、諸事情でOCI以外のCSPを使う必要がある、といった方の解決策の一つになれば幸いです。

次回以降もOCIの新機能をご紹介する予定です!









執筆者情報

ふかや けんじ プロフィール画像

2024年に中途入社。前職では主にOracleのオンプレミス環境の設計構築から運用保守と幅広い業務を経験。
現在はOCIのポストセールス業務を中心に担当。
趣味はパフェ巡り。



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