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2022.09.22

「自律型DB」は本当に使える?
本音で語るAutonomous Databaseの現在地(後編)

「自律型DB」は本当に使える? 本音で語るAutonomous Databaseの現在地


本記事では、Autonomous Databaseの検討段階でお客様がぶつかる「二つの壁」を乗り越えるためのヒント、そして、先行して採用を決断したお客様がどのように検討を進められたかをご紹介します。

後編となる今回は、二つ目の壁である「ブラックボックス感がある」への回答、採用を決断されたお客様事例、Autonomous Databaseのまとめについてご紹介します。



二つ目の壁「ブラックボックス感があってなんだか不安…」


検討段階でぶつかる二つ目の壁「ブラックボックス感があってなんだか不安」について見ていきましょう。

Autonomous Databaseには「見える部分」と「見えない部分」がそれぞれ存在します。しかし、中身を見てみると、従来のOracle Databaseの技術や仕組みが踏襲されていることを確認でき、意外に「完全なブラックボックスではない」ということがお分かりいただけるかと思います。見えない部分については、見えないからといって不安に思う必要はなく、「わざわざ知らなくてもいい部分」と考えることもできます。

先に結論をお伝えしてしまうと、一番いいのは「試しに利用してみること」です。リリース以降の機能追加により、さらに便利になっている面もあります。どんな使い勝手になるのか、トライアルやPoCを通して実際に試していただくことをお勧めします。


見える部分

まずは、見える部分として、従来のOracleの技術や仕組みが踏襲されている例を四つご紹介します。

従来のOracle技術や仕組みが踏襲されている例

例1:Oracle Databaseの高速化技術

Autonomous Databaseでは自動索引、自動パーティション機能が提供されていますが、必要に応じてデータベース管理者の方が索引、パーティション、MVIEW、ヒント句などを作成・追加できます。

例2:Exadata固有の高速化技術

Autonomous Databaseの基盤はExadataです。 Exadata特有のSmart Scan、Flash Cacheをはじめとした固有の機能が利用できるため、特別な設定を行わずに高速化が期待できます。

例3:SPM(SQL Plan Management)

SPMがデフォルトで有効化され、自動で動作します。パフォーマンスが優れた実行計画は自動的に「ベースライン」に追加されますが、状況に応じて「ベースライン」の実行計画から利用する実行計画を選択することもできます。

例4:Resouce Manager

リソースの割り当てに関しては、以前から存在するResouce Managerという機能がベースになっています。実行する処理の性質によって事前に定義された接続サービスを選択し、パラレル実行や同時実行セッション数、リソース割り当てなどの制御を行うこともできます。


このように、Autonomous Databaseではデータベース管理者の方がよく利用されていたり、聞き覚えのある機能で構成されていることがお分かりいただけたかと思います。これまでベースとなっていたOracle Databaseの機能が、Autonomous Databaseになっても安定したパフォーマンスを支えています。

Autonomous Databaseでは、自動チューニング機能によりかなりの高速化を期待できるのですが、さらにパフォーマンスを向上させたい場合は、OCPU数を増やすことを検討します。個々のオブジェクトやSQLの対応についても、Oracle Databaseの機能をベースにしているため、AWRから原因を分析・特定したり、CREATE文で索引などのオブジェクトを作成するといった対応は、これまでのチューニングスキルやナレッジを活用いただけます。


見えない部分

「見える部分」でご紹介した機能は、現状Oracle Databaseを利用されている方にはイメージしやすかったのではないかと思います。Autonomous Databaseの見えない部分の代表には、AI(機械学習)によるインフラ層の監視があります。

見えない部分ではありますが、8,000以上の膨大なメトリックや1,500以上のアラートを常に監視し、インフラ部分に何か障害があった時にはすぐに裏側で対応が行われます。これは、AI(機械学習)の仕組みと長年オラクル社に蓄積されたナレッジがあってこそできる強力な運用支援機能です。


「ブラックボックス感があってなんだか不安…」のまとめ

「ブラックボックス感があってなんだか不安」という心配への答えとして、「見えない部分は見えないままでいい」、つまり、Autonomous Databaseのブラックボックスは気にせずに、お任せで大丈夫とお考えください。

これまでと同様に手作業でやっていこうとすると、どんなメトリックを確認して、どう分析するのか・監視するのかは全て経験と勘に頼ることになります。また、人の育成も大変です。Autonomous Databaseを利用することで、最適化の恩恵を享受できるため、データベース管理に多大な労力をかけるのではなく、アプリケーション部分に注力できるようになります。

繰り返しになりますが、Autonomous Databaseのベースとなる部分は、データベース管理者の方がよくご存じのOracle Databaseです。従来のスキルナレッジも生かせるため、あまり身構えすぎず、まずは試していただければと思います。


採用ユーザーの事例紹介


先行ユーザーは「シフト」状態からの移行が多い


「リフト&シフト」というキーワードは、クラウド移行の手法を表します。「リフト」はオンプレミスのサーバをIaaSサーバに置き換える単純なクラウド移行を表しますが、その次の段階であるクラウドネイティブな仕組みにするのが「シフト」です。

リフト&シフト

Autonomous Databaseへの移行は、このうち「シフト」に相当します。Autonomous Databaseのコンセプトは「従来データベースにかけてきた管理コストを極限まで減らし、その分、価値のある業務に充てること」であり、昨今叫ばれているDXや、IT人材の不足といった課題への切り札となります。ある意味、シフトの範疇を超えたPaaSサービスであると言うこともできます。

先行して採用を決められたユーザーの方々がどのようにAutonomous Databaseの検討を進めたのかをロードマップとして表したのが次の図です。

Autonomous Databaseの検討を進めるロードマップ

第1ステップ:オンプレミス環境からIaaSへのリフト

Autonomous Databaseを採用されるケースでは、「リフトまで進んだ状態」から始められることが多いと感じています。
 (1)まずはクラウドに慣れる
 (2)ハードウェアの管理から解放されインフラコストを削減する
といったクラウドの基本的なメリットの享受を主な目的として、何らかのシステムのリフトまでは経験値を積んだ状態です。

第2ステップ

本記事で紹介したポイントです。まずは机上で確認できる情報を整理し、何がどう変わるのか、どういったことを期待できるのかを確認します。

第3ステップ

多くのお客様が、実際に試してみることでその価値を確認しています。


具体的な事例紹介


ここから第3ステップを実施したお客様の事例をご紹介します。


事例1:パフォーマンス改善とコスト削減に期待してPoCを実施

パフォーマンス改善とコスト削減に期待してPoCを実施

このお客様は、「パフォーマンスの改善」と「コスト削減」を期待してAutonomous DatabaseのPoCを実施されました。

【現行環境】
既存システムではRAC構成(12コア、総メモリ1.5TB以上)を利用されていました。このようなハイスペックな環境をもってしても、巨大なバッチ処理の実行には一晩かかり、また一部の SQLでは数千秒、数万秒という時間を要していました。

【PoCの結果】
特にチューニングなど行わずにAutonomous DatabaseのPoCを行ったところ、
 ・巨大な月次バッチ処理は7時間から1時間40分まで短縮(約1/4に短縮)
 ・複数の高負荷なSQL処理時間は4,000~20,000秒が240~250秒まで短縮
と大幅な時間短縮が確認できました。

高速化の一番大きな理由は、Autonomous DatabaseがExadataを基盤としていることです。この事例では、Smart ScanのようなExadata固有の機能が有効に働いていることを確認できました。

メモリのサイズだけを比較すると、既存のオンプレミス環境では1.5TB以上、Autonomous Database環境では90GBとかなりのハンデがあり、本当に性能が出るのか不安をお持ちでしたが、PoCでは期待以上の高速化が得られました。

コスト面では、現行環境と同等のものを新しくオンプレミスで使う場合と比較して、Autonomous Databaseの方が明らかに低コストであるという試算結果も得ることができました。


事例2:オンプレミスのExadataの移行先としてAutonomous Databaseを採用

オンプレミスのExadataの移行先としてAutonomous Databaseを採用

既にオンプレミス環境でExadataを利用され、Exadata固有機能による性能面のメリットを理解されていたお客様の事例です。新しい移行先としてAutonomous Database、Exadata Database Service、オンプレミスのExadataを比較検討し、最終的にはAutonomous Databaseを採用されました。

その理由は以下の2点です。
 ・Autonomous Databaseは、リソース追加(OCPU、ストレージ)に柔軟性があり、
  フルマネージドサービスであることから運用コストの削減を期待できたため。
 ・PoCにより、データベース設計や運用についての変更点を確認できたため。


Autonomous Databaseは業務のあり方まで変える


オンプレミス環境でOracle Databaseを運用していると、限られたリソースの中でいくつものトラブルを乗り越えながらOSやOracle Databaseのパラメータを細かく調整してきた経験があるかと思います。そんな経験があると、「お世話をしないと、性能が引き出せないのではないか」といった不安を抱くのも無理はありません。また、「トラブル防止」「現行踏襲」「実績重視」といった現状が目の前にあると、誰でも変化に対して後ろ向きな気持ちになりがちです。

熟練のエンジニアの方が手間を惜しまなければ100%以上の性能が出せるかもしれませんが、Autonomous Databaseはこれとは真逆のコンセプトであり、特に手を掛けなくても一定の品質が手に入るサービスです。新技術とはいえ、Autonomous Databaseの中身はこれまでと同じOracle Databaseです。オンプレミス環境で培ってきたスキルは決して無駄になりません。

逆に、Autonomous Databaseという新しい技術を取り入れることで、エンジニアの方の時間や労力を、より生産的な分野であるデータ活用などへ振り分けたり、今まで以上のパフォーマンスや、安心・安全を得るといった大きなメリット(変化)が得られます。

Autonomous Databaseは、これまでの「データ管理の当たり前」を塗り替える、そんな可能性を秘めているサービスです。

Autonomous Databaseを活用したクラウド化のために何から始めればいいか迷っている皆さんは、サブシステムや検証環境といった比較的試しやすいシステムで、まずは一度Autonomous Databaseを試していただくことをお勧めします。

アシストは、Autonomous Databaseの検討をご支援します。
▼お問い合わせはこちら
 https://www.ashisuto.co.jp/cloud/oracle-cloud/contact-us/


執筆者のご紹介

アシスト 臼井 聡美

臼井 聡美
2017年入社。西日本支社において、データベースとクラウドを中心にOracle製品の技術担当として活動中。昔からの「ものづくり」が好きな性格を活かし、エンジニアとしての業務に日々取り組んでいる。趣味はステイホーム時間を充実させること。...show more

アシスト 荻野 晃一

荻野 晃一
Oracle 8iがリリースされた年に社会人となりOracleをベースとしたパッケージソフト開発を経験。2005年にアシストへ入社しOracleパフォーマンス監視ツールやDB監査ツールをメインで担当。数年前からはクラウド案件にも取り組む。尊敬する人物はマサ斎藤。...show more

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