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2023.12.13

Oracle CloudWorld 2023視察記 クラウド編

Oracle CloudWorld 2023

今年もオラクル社の年次イベント「Oracle CloudWorld 2023」が開催されました。アシストからは、9名の社員がラスベガス現地で参加し、その視察記として「基調講演と注目のトピック」「クラウド編」「データベース編」のブログ記事を公開しています。

当記事では「クラウド編」として、Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)関連セッションの中から、サポートエンジニアの視点で見逃せない「Network Monitoring and Troubleshooting」の内容をご紹介します。


関連するブログ記事もぜひ併せてお読みください。

アシスト現場ブログ

「Oracle CloudWorld 2023の視察記」として次の3記事を公開しています。

基調講演と注目のトピック
データベース編
・クラウド編(本記事)


セッション内容のご紹介

まず、このセッションの内容を簡単にご紹介します。オラクル社のネットワークエンジニアが講師として登壇し、OCIのネットワーク監視とトラブルシューティングに関するベストプラクティスや便利な機能について、デモンストレーションを交えて解説しました。

また、OCIのネットワーク関連のサポートチケットの30%以上がユーザーの設定の不備、あるいは設定誤りに起因している問題であることが紹介されました。これは、OCIのネットワークはユーザーの様々なニーズに応じられるよう、柔軟かつ詳細なカスタマイズが可能な反面、設定が複雑になりやすいことを示しています。

Oracle CloudWorld 2023のセッションスライド

その上で、セッションのゴールとして次の三点が提示されました。

1)OCI仮想クラウド・ネットワーク(以下、VCN)に関する知識習得
2)ネットワーク構成の視覚化とトラブルシューティングのシナリオの知識習得
3)セキュリティとコンプライアンス要件を満たすための知識習得

Oracle CloudWorld 2023のセッションスライド

これらのゴールを達成するために、セッションでは以下の内容が紹介されました。

ネットワーク構成の収集、分析を行い、問題を特定する方法
・トラフィックのパスを確認し、通信の正常性を確認する方法


セッションの最後には、OCIのネットワーク問題のトラブルシューティング方法を理解し、ユーザー自身で解決する知識を習得することが大事であると締められていました。


トラブルシューティング手法のご紹介

当記事では、セッションの三つのゴールのうち、二つ目の「ネットワーク構成の視覚化とトラブルシューティングのシナリオの知識習得」について、具体的なツールの使い方や操作例を交えてご紹介します。


トラブルシューティングで使用するツール

記事内で紹介するトラブルシューティングでは、以下のツールを使用します。

ネットワーク・パス・アナライザ

OCIのネットワーク構成を収集・分析し、送信元と宛先の間のパスに問題が無いか判別するツールです。構成の誤りによって生じる通信の問題をトラブルシューティングできます。

ネットワーク・ビジュアライザ

OCIのネットワーク構成を図で表示できるツールです。VCNやサブネット、ゲートウェイ、ルーティングなどのネットワーク・リソースの接続や関係が一目で分かるため、構成の問題を視覚的にトラブルシューティングできます。


想定シナリオ

パブリック・サブネット内のComputeから、プライベート・サブネット内のDatabaseにSSH接続できません。次のステップでトラブルシューティングを行い、接続可能な状態にするためネットワーク設定を修正します。


本記事の環境構成図

  • 今回ご紹介するトラブルシューティングは、ネットワーク構成の設定当初から接続できない問題の解消を目的としたものです。既に接続実績があり、特に設定を変更していないにも関わらず、今までできていた接続が突然できなくなったなどの問題解消には適さない可能性があります。

Step1. ネットワーク構成を分析し、問題箇所を特定する

接続に何らかの問題が見られるネットワーク構成を分析するために、トラブルシューティング機能の一つである、ネットワーク・パス・アナライザを使用します。



OCIコンソールのメニューから、[ネットワーキング][ネットワーク・パス・アナライザ]をクリックします。

OCIコンソールメニュー画面

[パス分析の作成]をクリックします。

ネットワーク・パス・アナライザ画面

分析の構成画面で各項目を入力します。

  • 名前:任意(オプション)
  • ソースIPv4アドレス:接続元(Compute)のIPアドレスを入力
  • 宛先IPv4アドレス:接続先(Database)のIPアドレスを入力
  • 宛先ポート:SSHのポート番号「22」を入力

ネットワーク・パス・アナライザの分析の構成画面1

ネットワーク・パス・アナライザの分析の構成画面2


[分析の実行]をクリックします。

ネットワーク・パス・アナライザの分析の構成画面3


1分ほどで分析が完了すると、ネットワーク接続パスの図が表示されます。分析の結果、ComputeとDatabaseの間の通信に問題があるようです。

また、[ダイアグラム情報の表示]をクリックすると、説明を確認できます。
・「開始」に送信元のComputeのインスタンス名が表示されている
・「宛先」に送信先のDatabaseのIPアドレスが表示されている

セキュリティ・ステータスが赤字で「拒否済」となっているので、この点が怪しいようです。[分析の保存]をクリックして、Step3の再分析のために結果を保存しておきます。

ネットワーク・パス・アナライザの分析結果画面


Step2. ネットワーク構成を視覚化し、設定内容を修正する

Step1でネットワーク・パス・アナライザを使用して問題箇所を確認した後は、ネットワークの設定を見直します。VCNの各設定画面をリンクからたどって確認することも可能ですが、ルーティングやセキュリティ、各ゲートウェイなどのリソースの関連性について直感的に確認できるネットワーク・ビジュアライザを使用します。


原因の特定

OCIコンソールのメニューから、[ネットワーキング][ネットワーク・ビジュアライザ]をクリックします。

OCIコンソールメニュー画面

VCNのイメージが表示されます。この画面では、VCNの構成要素や接続関係を確認できます。六角形のイメージをクリックすると、右側にサマリー情報が表示されます。

ネットワーク・ビジュアライザ画面

次に、VCNのルーティング・マップを見てみましょう。[VCNルーティング・マップの表示]をクリックすると、サブネットのルーティングが図として表示されます。

・パブリックサブネットはインターネットゲートウェイにルーティングしている
・プライベートサブネットはサービスゲートウェイにルーティングしている

このように、ネットワーク・ビジュアライザを使うと、VCNの詳細画面から各設定のリンクをたどって設定内容を個別に確認するよりも、直感的で分かりやすいと思います。

  • 本記事の環境構成のように、同じVCN内に存在するサーバー間の接続を調査する場合には、ルーティングの確認は不要です。これは、同じVCN内ではルーティングが自動的に有効になるためです。

ネットワーク・ビジュアライザのVCNルーティング・マップ画面

次に、VCNのセキュリティ・マップを確認してみます。右上のラジオボタンの[セキュリティ]にチェックを入れると、各サブネットとセキュリティ・リストの関係図に切り替わります。

ネットワーク・ビジュアライザのVCNセキュリティ・マップ画面1

次にセキュリティ・リストの設定を確認してみましょう。まずは、Computeが配置されているパブリック・サブネットをクリックし、リソース・サマリーから[リソース・セキュリティ詳細の表示]をクリックします。

ネットワーク・ビジュアライザのVCNセキュリティ・マップ画面2

パブリック・サブネットに関連付けられたセキュリティ・リストには、次の情報が表示されます。

・イングレス・セキュリティ・ルール
・エグレス・セキュリティ・ルール

パブリック・サブネットは通信元となるため、エグレス・セキュリティ・ルールを確認する必要があります。今回は「192.168.10.0/24」が宛先として登録されていることが分かります。これは、プライベート・サブネットのCIDR範囲であり、パブリック・サブネットからプライベート・サブネットへの通信ルールが設定されていることを意味します。

ネットワーク・ビジュアライザのパブリック・サブネットのエグレス・セキュリティ・ルール画面

次は、Databaseが配置されているプライベート・サブネットのセキュリティ・リストを確認してみましょう。

ネットワーク・ビジュアライザのVCNセキュリティ・マップ画面3

プライベート・サブネットに関連付けられたセキュリティ・リストには、次の情報が表示されます。

・イングレス・セキュリティ・ルール
・エグレス・セキュリティ・ルール

プライベート・サブネットは通信先となるため、イングレス・セキュリティ・ルールを確認する必要があります。こちらにはルールが設定されていないため、パブリック・サブネットからの通信を受け付けることができません。これが通信不通の原因だと考えられます。

ネットワーク・ビジュアライザのプライベート・サブネットのイングレス・セキュリティ・ルール画面


修正作業

それではプライベート・サブネットのセキュリティ・リストを修正しましょう。OCIコンソールのメニューから、[ネットワーキング][仮想クラウド・ネットワーク]をクリックします。

OCIコンソールメニュー画面

VCNの名前をクリックします。

VCN画面

画面左の[セキュリティ・リスト]をクリックし、[プライベート・サブネット-VCN名のセキュリティ・リスト]をクリックします。

セキュリティ・リスト画面

[イングレス・ルールの追加]をクリックし、ソースCIDRにパブリック・サブネットのCIDRを入力します。その後、[イングレス・ルールの追加]をクリックします。

イングレス・ルールの追加画面


Step3. ネットワーク構成を再分析し、問題の解決を確認する

ネットワーク・パス・アナライザで、修正後のネットワーク構成を再分析します。

OCIコンソールのメニューから、[ネットワーキング][ネットワーク・パス・アナライザ]をクリックします。

OCIコンソールメニュー画面

Step1で保存したパス分析の名前をクリックします。

ネットワーク・パス・アナライザ画面

画面上の[分析]をクリックします。

ネットワーク・パス・アナライザ画面

分析結果が表示されます。フォワード・パス(パブリック・サブネットからプライベート・サブネット)では、ホップ(パケットの渡し)がカウントされていることが確認できます。[ダイアグラム情報の表示]をクリックすると、セキュリティ・ステータスが緑色の「許可」に変わっていることが分かります。

ネットワーク・パス・アナライザ分析結果(フォワード・パス)画面

画面を下にスクロールして、戻りパス(プライベート・サブネットからパブリック・サブネット)も確認してみましょう。こちらも、ホップがカウントされており、[ダイアグラム情報の表示]をクリックするとセキュリティ・ステータスが緑色の「許可」になっていることが分かります。

ネットワーク・パス・アナライザ分析結果(戻りパス)画面

最後に、SSH接続を試してみます。接続タイムアウトは発生せずに正常に接続できました。

接続確認画面


まとめ

ネットワークの設定は、OCIに限らずクラウドをご利用いただく上で重要な項目ですが、設計や実装で頭を悩ませる項目でもあります。そのため、サポートセンターに「正しい設定のはずなのに接続できない。」「ネットワークの設定が正しいか確認したい。」など、ネットワークに関する問い合わせをいただくケースが多くあります。

トラブルシューティングの方法を覚えておくことで、サポートセンターに問い合わせる必要がなくなり問題解決の時間を短縮できる場合もありますので、今回紹介した機能を積極的に活用してみてください。また、今回ご紹介した機能については、製品マニュアルもご一読いただければと存じます。

ネットワーク・パス・アナライザ
https://docs.oracle.com/ja-jp/iaas/Content/Network/Concepts/path_analyzer.htm

ネットワーク・ビジュアライザ
https://docs.oracle.com/ja-jp/iaas/Content/Network/Concepts/network_visualizer.htm


執筆者情報

いちじょう だいさく プロフィール画像

2018年アシスト入社後、Oracle Databaseフィールド業務に従事。2019年からはOracle Cloudのフィールド業務とサポート業務を兼務中 ...show more


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