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2024.12.09

Oracle CloudWorld 2024視察記

Oracle CloudWorld 2024

2024年9月8日から12日にわたり、オラクル社の年次イベントである「Oracle CloudWorld」がラスベガスにて開催されました。

アシストからもOracle Database、Oracle Cloudの技術者など10名が参加し、様々な最新情報をキャッチアップしてきました。

本記事では、「Oracle CloudWorld 2024 のハイライト」と「アシストの注目ポイント」をOracle CloudWorld全体の雰囲気とともにお伝えします。

Oracle CloudWorldとは?

昨年に引き続き、ラスベガスのベネチアンホテルに併設されたコンベンションセンターで開催されました。

開催規模も昨年同様、全体で16,000名以上の来場数となり、日本からはユーザー企業から250名、パートナー企業から150名、計400名と、昨年の250名から大幅な参加増となりました。
この数字からも注目度が増していることがおわかりいただけるかと思います。

会期中4日間は、6つの基調講演ならびに22のソリューション基調講演をはじめとして、1,000以上のセッションが行われました。

世界中から多くの関係者が集まっている様子を「CloudWorldは、技術者にとって、ディズニーワールドのようなものだ」と表現しているインタビュー動画もありました。

オラクル製品開発チームとの「Database Premier Customer Appreciation Event」やAutonomous Database責任者との「JAPAC Autonomous Database Roundtable」といった交流会への参加や、日本からの参加者向けセッション「Japan Session」などで、参加者同士の情報交換も行うことができました。

また、展示コーナーにも数多くのブースが出展しており、オラクル製品に関わる最新情報を存分に入手できる機会となりました。

それでは早速、Oracle CloudWorld 2024を振り返っていきたいと思います。

Oracle CloudWorld 2024 のハイライト             

サフラ・キャッツ氏の基調講演トピック

まずはじめに、オラクル社CEOであるサフラ・キャッツ(Safra Catz)氏の基調講演です。

サフラ・キャッツ氏は、「もはや私たちは単にテクノロジーを提供するだけでなく、そのテクノロジーを実現するパートナーです。」とパートナーシップを歓迎しました。

MGM Resorts社、米国中央情報局(以下、CIA)、BNP Paribas社、Cloudflare社、Entel社の5つの企業や組織のゲストを迎え、彼らがどのようにクラウドとAIを活用し、その結果、彼らの顧客がどのように成功を収めているかについて共有しました。

その中でも、オラクルのファーストユーザーであるCIAの事例をご紹介します。

CIA事例


CIA
・CIO La'Naia Jones氏 登壇
・オラクル社のファーストユーザー(ORACLE:プロジェクトコード名に由来)
・データのセキュリティ維持が重要
・生成AIなども任務の強化に積極的に活用

CIOのラナイア・ジョーンズ(La'Naia Jones)氏は、

「CIAは国家的情報管理のコミュニティで重要な役割を果たしており、常に最新のテクノロジーの導入を図っている」

と語り、データベース管理者としてのキャリアを振り返りました。

「特に国家的情報管理で重要なのはデータのセキュリティであり、それをどうやって維持するのかが重要になる。データのセキュリティを維持しつつ、生成AIの翻訳や要約機能を活用して、係官が効率よく、情報を収集・分析できるようにしたい。物流からサプライ チェーン、財務、サイバー、人材に至るまで、私たちが行うすべてのことを強化するため 、生成AIを利用できるようにしたい」

と述べ、特に生成AIの発展に注目し業務に取り込むことが重要だ、と説明していました。

そして、ラナイア・ジョーンズ氏は、

「オラクルとは1977年から協力関係にある。CIAの使命は世界を安全に保つことであり、オラクルとのパートナーシップを通じて、最高のテクノロジーとソリューションを提供し続けることが重要だ」

と述べ、サフラ・キャッツ氏も

「CIAは最も厳しい顧客で、私たちの設計基準であり、たくさんのことを学んでいる」

と感謝の意を述べて、締めくくりました。


ラリー・エリソン氏の基調講演トピック                    

次にご紹介するのは、創業者であり、会長兼CTOのラリー・エリソン(Lawrence J. Ellison)氏の基調講演です。会場は人が入りきれないほどの満員で、その雰囲気からも注目度の高さ、ラリー・エリソン氏いまだ健在!ということが伝わってきました。今年で80歳だそうです。

主なトピックは以下の2つです。

新型コロナ禍以前のイベント名が「OpenWorld」だったことを引き合いに出して、

「以前は、Oracle DatabaseがIBMのメインフレームやHewlett-Packardのコンピュータ、PCなど様々なコンピュータ上で動作していた」

と、OSを問わず動作するオープン性に特徴があったと述べ、

「閉鎖的なクラウド時代の初期に比べて、現在では異なるクラウドサービスがシームレスに連携できるマルチクラウド環境に移行している」 

とオープン性に回帰する動きを強調していました。


Open MultiCloud Era(オープンなマルチクラウド時代)

Oracle CloudWorld 2024の最大の瞬間は、アマゾン クラウド サービス(以下、AWS)との戦略的協業の発表でした。

サフラ・キャッツ氏が「長年のライバルの多くがパートナーになった」とアピールしていましたが、Oracle CloudWorld 2024の開催前日に、AWSとの戦略的協業の発表があり、本イベントでの発表に大きな期待が集まっていました。

本基調講演では、AWSのCEOであるマット・ガーマン(Matt Garman)氏を迎えて、AWSでの新しいOracle Databaseの詳細を共有し、この画期的なマルチクラウドパートナーシップの発表をどのメディアも一斉に取り上げていました。

長年のライバル、AWSとの戦略的協業
・AWS CEO Matt Garman氏 登壇
・Oracle Database@AWSの発表
・2024年12月から限定プレビュー開始

ラリー・エリソン氏は、

「Amazonとわれわれには共通の顧客がたくさんいます。これまで何度も、いつ、AWS内でOracle Databaseを利用できるようになるのか、と聞かれてきた」

と述べ、それに対し、マット・ガーマン氏も

「AWSの顧客は、ミッションクリティカルなワークロードをすべてAWS内で実行したいと本気で考えている。顧客に選択肢を提供することは、常に我々のビジネスにとって良いことだ、非常に興奮している。」

と語っていました。

その他、JP MorganやVodafone、Exxon Mobilといった顧客の社名も挙げながら、「Oracle Database@AWS」に対する期待の声は、すでに高いことをアピールしていましたし、実際に、State Street社 CTO も登壇し、この両社のパートナーシップを歓迎していました。

オラクル社のイベントに、他のハイパースケーラーが登壇する日が来る、とは、誰も思っていなかったのではないでしょうか。

なぜ、オラクルは、ハイパースケーラー3社(AWS、Azure、GCP)と連携できたのでしょうか。
優れた戦略であれば、他のハイパースケーラーも真似をすればよいと思いますが、@Azure、@GCP、@AWSのようなマルチクラウド連携の発表は、今時点ではオラクル以外からは発表されていません。

その背景には、以下の3つのポイントが挙げられるのではと考えます。

このような背景から、ハイパースケーラーのクラウド上であっても「Oracle DatabaseであればOracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)上で動かし続けたい」という顧客の声がオラクルのマルチクラウド連携を後押しし、今回の戦略的発表につながったのではないかと考えます。


AI + クラウドセキュリティ                                    

また、ラリー・エリソン氏は、「AIを活用して、クラウドのセキュリティを劇的に向上させることができる」とオラクルの自律セキュリティへの取り組みに言及しました。

サイバーセキュリティの脅威に対抗するため、オラクルがAIをどのように活用しているかを4つのセキュリティで紹介しました。

オラクルの自律セキュリティ

①データセキュリティ:Automonous Systems
 →人的介入とエラーを最小限
②アプリケーションセキュリティ:コード生成
 →生成ツールで脆弱性を減らし、信頼性を向上
③ユーザーID/パスワード:生体認証
 →極力パスワードを廃止し、生体認証へ移行
④ネットワークセキュリティ:ZPR
 →アーキテクチャをネットワークセキュリティから分離し、データへの特定のアクセスパスを定義

「こうした最新のセキュリティの組み合わせがあればサイバー戦争にも勝ち抜ける」と述べ、新世代のセキュリティへ移行し、データの保護に取り組むべきだ、とアピールしていました。


クレイ・マグワイク氏の基調講演トピック

次は、OCIの開発責任者であるクレイ・マグワイク(Clay Magouyrk)氏の基調講演です。AI、スピード、柔軟性、セキュリティに焦点を当て、クラウドインフラストラクチャの変革について語りました。


Dedicated Region25


・自社専用のリージョンが最小3ラックから
・データセンター要件が簡素化
・数週間で導入可能
・150以上のAI&クラウドサービスを提供
・2025年提供開始予定
・価格未定

このセッションでの大きな注目ポイントのひとつは、「Dedicated Region25」でした。

お客様のデータセンター内OCIのパブリッククラウドのフル機能を利用できるフルマネージド型サービスであるDedicated Region/専用リージョンの最新版です。

従来版の1/4、わずか「3ラック」から自社専用リージョンが持てるようになっており、今後新たなクラウド環境の選択肢となるかもしれません。


業界初ゼタスケールのクラウドコンピューティング・クラスタ

また、もうひとつの注目ポイントは、業界初となるゼタスケールのクラウド・コンピューティング・クラスタ(2025年提供予定)の発表でした。最大で131,072基のNVIDIA Blackwell GPUを搭載できる、とのことで、世界No.1のFrontierスーパーコンピューターと比較しても約3倍以上、他のハイパースケーラーの6倍以上のGPU数を搭載できるため、かつてない規模のAIコンピューティング機能の提供が可能になります。

最後に、クレイ・マグワイク氏は、

「OCIは、最小の専用リージョンから最大のスーパークラスターに至るまで世界中のお客様に提供している 。ここにいる皆さんには、クラウドには多くのメリットがあることを理解して帰っていただきたい」

と締めくくりました。


ホアン・ロアイザ氏の基調講演トピック                   

最後は、ミッションクリティカル・データベース・テクノロジー責任者のホアン・ロアイザ(Juan Loaiza)氏による基調講演です。AIを活用したエンタープライズアプリケーションの開発に焦点を当て、生成データ開発とアプリケーション開発の未来について、語りました。


Generative Development for Enterprise(GenDev)


・開発者が自然言語を使用してアプリケーションやデータベースと対話できるフレームワークを提供
・エンタープライズ アプリケーションの構築、クエリ、管理のプロセスを簡素化

現在のAIでは完全なアプリケーションを生成するには限界があり、AIの利点を最大限に引き出すためには、アプリケーション開発インフラストラクチャを変更する必要がある、とのことで、AIを活用したアプリケーションおよびデータ開発への革新的なアプローチである「Generative Development for Enterprise(GenDev:エンタープライズ向けの生成開発)」の概念を紹介していました。

また、データがエンタープライズアプリケーションの核心であることを強調し、「JSON Relational Duality」という新技術を紹介していました。

「この 『JSON Relational Duality』は非常に重要だ。これは、ここ数年でのデータ管理における最大の進歩の一つで、私は 何十年もこのことに取り組んできた。23aiで導入する新しいテクノロジーによって、 これらのアプリケーション開発が劇的に簡単になる」

とアピールしていました。


オラクルはクラウド化の波に出遅れましたが、生成AIの登場で多くの名だたるAI企業がOCIを採用し始め、今や圧倒的な存在感を持ち始めています。そして、AIクラウドに加えて、業績に寄与しているのがマルチクラウド戦略です。

多くのお客様は、既に他のハイパースケーラーと契約しているかと思いますが、OCI環境はもちろん、パートナーシップを結んだ他のハイパースケーラーでもOCI環境と同様に、Oracle Databaseのワークロードを動かすことができるようになります。

このマルチクラウド戦略が、海外のお客様同様、日本の多くのお客様にも歓迎されることだと思いますし、今後、オンプレミスのミッションクリティカルなワークロードがクラウドリフトに動く大きなきっかけになるのではないか、と感じました。


アシストの注目ポイント                       

アシストは、以下の視点や期待をもって、Oracle CloudWorld 2024に参加してきました。
・オラクル社の最新戦略がどのように変化してきているのか
・グローバルでの成功事例、先進事例はどのような内容なのか
・オラクル社や市場の動向を踏まえて、アシストはどこに注力していく予定か

ここでは、マルチクラウド時代の実現に向けて、非常に重要な鍵を握っている、二つのPaaS DBサービスをご紹介します。

Autonomous Database(ADB)

新時代のデータベースサービス(フルマネージドな自律運用型データベース)と謳われています。アシストとしても実績が非常に増えてきています。

AIを活用して開発生産性を向上させていくという、「Generative Development for Enterprise(GenDev)」のコンセプトに沿った機能拡充が多く発表されていました。その中から、注目の新機能をいくつかご紹介します。

Autonomous Database Select AI
自然言語を使用してデータの問い合わせができる機能です。
このSelect AIは、Vector Searchとも統合されており、RAG構成においても、同じような自然言語を使って、DBへの問い合わせが実行できるのは非常に魅力的な機能ではないかと思います。

Autonoumous Database周辺のサポートツール群の新機能
具体的に3つご紹介します。

①Data Load
データロード時に、PII(個人情報)を自動的に識別する機能です。誤って個人情報を連携してしまうようなリスクを軽減でき、データセキュリティの強化に役立ちます。
②Table Assistant
SQL文を知らなくても、自然言語でテーブル作成、テーブル編集を行うためのDDL文を生成できます。
③Synthetic Data Generation
生成AIが実データの特徴を備えた、データ群を自動的に生成する機能です。
数値の範囲、また、特定の列に許可される値などをAIに指定して、実際のデータ構造に沿った合成データを自動的に作成できます。

Autonoumous Databaseは、これまでの「データベースサービス」から、「モダンデータアナリティクスのプラットフォーム」へと進化していく。そのような方向性が、今回、強く打ち出されていました。Autonoumous Databaseを中核にしながら、Data Exchange領域、またData Governanceの領域などにおいても、機能拡充の方針がしっかりと打ち出されていたのが印象的でした。

①Data Marketplace(データマーケットプレイス)
 よりデータ流通を加速させるために必要な機能
Data Clean Room(データクリーンルーム)
 機密データを安全に取り扱うための機能

③Unified Data Catalog(統合データカタログ)
 他のデータカタログ機能と連携し、OCIを中心とした統合的なデータカタログ環境を提供する機能


Exadata Exascale(ExaDB-XS)

Oracle Exadataのベストプラクティスと、クラウドのベストを掛け合わせたオラクル社が提供する最新のPaaS DBサービスです。

最大の特徴は、Exadata Database Serviceを共有環境で小規模から利用可能だという点です。これにより、ExaDB-Dという専有型のPaaS DBサービスと比べて、非常に安価にExadataの機能をパブリッククラウドで利用することができるようになっています。

これまで小規模システムに対してのBase DB、大規模システムに対してのExaDB-Dの二つの選択肢しかなく、中間のPaaS DBサービスがなかったため、オンプレミスの継続を選択されたお客様も少なからずいらっしゃいました。ExaDB-XSはその空白のエリアを埋める待望のサービスです。

世界最大手の航空・宇宙機器向けセンサーメーカーであるハネウェル社は、第一印象として、以下の3つをあげていました。

①インフラを気にする必要がない
②再起動せずにコアが拡張できる
③シンクローン技術による開発/テスト効率化

アシストにとっても非常に参考になる内容でした。日本のお客様からもExaDB-XSに対する関心の声を寄せていただいていることもあり、技術検証を先行して実施しているところです。

このExaDB-XSは、11/1に東京リージョン(NRT: 東日本(東京))でも使えるようになりました。


さいごに                                

120以上ものセッションに参加し、アシストが今後どこに注力すべきかをそれぞれの視点で考える素晴らしい経験になりました。

これまでのクラウド間のシェア争いから、オープンなマルチクラウド連携の時代へと変化していく中、アシストとしても強みであるOracle Databaseの技術支援とサポート対応にさらに磨きをかけてまいります。

また、お客様の声に耳を傾け、本日ご紹介したADB、ExaDB-XS、マルチクラウド対応に関しても新たな選択肢を提供できるように、引き続き、技術支援サービス、サポート内容を拡充してまいります。

ぜひ、ご期待ください。


執筆者情報

いけだ おさむ プロフィール画像

1999年入社後、市ヶ谷本社・札幌営業所にて幅広い製品の営業を経験。豊富な営業経験をいかし、現在はデータベース技術統括部にて全社のデータベース事業を推進する役割を担う。
趣味は「海外旅行」、好きな言葉は「ありがとう」 。 ...show more




くりもとこうじ プロフィール画像

2007年アシスト入社。Oracle Database製品を複数年経験後、2015年より顧客専任技術担当として、複数製品とサービスを掛け合わせた
数多くの提案とプロジェクトの推進をリード。

現在は Oracle Database のアプライアンス製品および、Oracle Cloud を中心とした製品主管マネージャーとして活動中。...show more


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