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2022.11.24

Oracle 21c以降のバージョンアップで押さえておくべき仕様情報を現場経験者が語る!

初版公開日:2021.06.04
  更新日:2023.09.12

こんにちは。Oracle Database 21c の登場以降、こんな相談が増えてきました。
「バージョンアップをするならどちらがおすすめですか?21c?それとも19c?」
今回は21cの仕様変更や廃止機能等、主要なものをピックアップしてご紹介します。


Oracle Database 21c のリリース情報

Oracle Database 21c は 2021年1月に発表されました。「コンバージド・データベース」をコンセプトに、200以上もの新機能が加わっています。ブログ執筆時点(2021年5月)では、Oracle Cloud でのみ 21cが利用可能です。早く新機能を試したい場合、Oracle Cloudを利用する方が手早く入手できるでしょう。

オンプレでの検証をご希望の場合、「現在のデータベース・リリースのリリース・スケジュール (Doc ID 2413744.1) 」で公開スケジュールをご確認ください。 順次オンプレでのリリースも計画されています。Linux x86-64 とMicrosoft Windows x64 向けのモジュールが先行計画されています(*)。

(*)本記事は 2022年11月に一部情報を更新しました。 2022年11月現在、21cに関してはオンプレ版も一部のOSでリリースされています。

(参考)Oracle Database 21c新機能から読み解く!コンバージドデータベースの世界と機能強化の傾向とは
https://www.ashisuto.co.jp/db_blog/article/oracledatabase-21c-new-features.html


リリースタイプとバージョンアップの検討ポイント

Oracle Database 21c は「Innovation Release」としてリリースされています。Extended Support の提供予定はなく、リリース後からの Premier Support期間も短く設定されています。21cのような Innovation Release は、どちらかというと開発時期での新機能検証や、新バージョンに順次アップグレードをしたい環境に適しています。

このように、後続バージョンがリリースされたときにもポイントになってくるのが「リリースの種類」です。長期サポートを希望する環境では、21cのような「Innlvation Release(革新リリース)」よりも「Long Term Release(長期リリース)」の方が向いています。

サポート期間の差を図示すると下記のようなイメージです。22c、23c とリリースする都度、Innovation Release なのか、 Long Term Release なのかを意識してチェックすることをお勧めします。最新の情報は「Doc ID 2413744.1 」も併せてご参考ください。

21cリリース時点での長期サポートは「19c」
次のLong Term Release は 「23c」で計画されています(変更の可能性はあります)


21c 以降へのバージョンアップ考慮事項

21c以降にバージョンアップをする際、21cでの非推奨または廃止になった機能を押さえておく必要があります。ここからは、主要なものをピックアップしてご紹介します。


非推奨と廃止の違い

非推奨と廃止の違いは、簡単に表現すると下記のとおりです。

非推奨だからといって、該当機能が使えなくなるわけではありません。サポートが受けられないわけでもありません。ただし、今後廃止される可能性があるため、バージョンアップ時には該当機能を使うかどうかの検討は必要です。

非推奨 提供はされているが、今後提供されなくなる可能性がある機能
廃止(または非サポート) 提供されなくなった機能

21cで廃止された機能リスト

詳細は「データベースアップグレードガイド 」で確認できます。主なものはこちらです。


非マルチテナント構成の廃止

19c以前のバージョンではサポートされていた従来の非マルチテナント構成(CDB/PDBで構成されていない構成)は廃止されました。GUI画面でも廃止された構成は選択できないように仕様変更されています。

21c以降にバージョンアップする場合、CDB/PDB のマルチテナント構成でのDB構成や各種設定値、バックアップ運用などの検討が必要です。

(参考)20cから従来構成は非サポート!Oracle Multitenantを攻めのITとして使おう!
https://www.ashisuto.co.jp/tech-note/article/20200526_oracle.html


自動ストレージ管理クラスターファイルシステム(Oracle ACFS)のサポート廃止(Microsoft Windows)

Microsoft Windows環境でのACFSは21c以降はサポート対象外になりました。代替案としてOracle Real Application Clustersファイルの場合、Oracle ASMの利用が推奨されています。それ以外のファイルの場合、Oracle Database File System(DBFS)、もしくは Microsoft Windows共有ファイルの利用が提案されています。

ACFS監査やACFS暗号化の機能もサポート廃止対象になっています。既存環境でご利用の方は各種情報の確認をお勧めします。

※Windows以外のLinux/UNIXプラットフォームでは廃止情報はありません


暗号化ツールキット(DBMS_CRYPTO_TOOLKIT)の廃止

PL/SQLパッケージで提供されていた「DBMS_CRYPTO_TOOLKIT」およびデータ型「DBMS_CRYPTO_TOOLKIT_TYPES」は廃止されました。9iからすでに非推奨になっており、21cではパッケージオブジェクト自体も削除されました。データの暗号化を検討する場合、Enterprise Edition の Advanced Security(ASO) で提供されているTDE(透過的データ暗号化)を利用します。

※ネットワーク通信部分の暗号化は、Standard Edition2 でも利用が可能です。
※Oracle Cloud の場合、有償オプションの契約有無に限らず全てのエディションでデータ自体の暗号化は有効になっています。

(参考)Oracle Database on Cloud 虎の巻 ~Oracle Cloud 採用ポイント編~
https://www.ashisuto.co.jp/db_blog/article/oraclecloud-adopted-points.html


非サポートの初期化パラメータ一覧

サポートが終了した初期化パラメータは下記です。

・UNIFIED_AUDIT_SGA_QUEUE_SIZE
・DISABLE_DIRECTORY_LINK_CHECK
・REMOTE_OS_AUTHENT
・SEC_CASE_SENSITIVE_LOGON

また、パスワードファイル(orapwdファイル)の下記パラメータもサポートが終了しています。新しく作成されたパスワードファイルはすべて大文字と小文字が区別されます。

・IGNORECASE


Microsoft Windows での Oracle ACFS は21cからサポートが終了されました(前述)。それ以外のOSでは引き続きサポートは継続されます。ただし、Oracle ACFS の関連機能のうち、下記もサポート対象外となりました。既存環境でACFSをご利用中の方は、該当機能がないかどうか下記もあわせてご参考ください。

21cでサポートされなくなった機能一覧
・Oracle ACFSレプリケーションプロトコルバージョン1
・SolarisおよびWindowsでのOracle ACFS暗号化
・Oracle ACFS Security(Vault)およびACFS監査
・Microsoft WindowsでのOracle ACFS
・Oracle ACFS Remote
・Oracle ClusterDomainアーキテクチャの一部であるメンバークラスタ


(参考)自動ストレージ管理クラスターファイルシステム管理者ガイド(21c)
https://docs.oracle.com/en/database/oracle/oracle-database/21/acfsg/intro-acfs-advm.html#GUID-3BDC9169-9411-43A7-9711-4999BFE4847E


Oracle Fail Safe(OFS)の廃止

Microsoft Windows で利用可能だった Oracle Fail Safe(OFS)は、21cからサポートが終了されました。21cリリース直後のマニュアルには未記載でしたが、その後廃止情報が明記されています。実質 Oracle Fail Safe は19c が最後の提供バージョンとなりました。

21c以降のバージョンで採用可能なActive-Standby構成は、サードパーティ製品のクラスタソフトウェアを利用するか、Oracle Clusterware を利用した Standard Edition High Availability(SEHA)、Enterprise Edition の RAC One Node などがあります。既存環境でOFSをご利用中で21c以降にバージョンアップをする場合、OFS以外の可用性構成の検討が必要です。


(参考)データベース・アップグレード・ガイド 21c
https://docs.oracle.com/en/database/oracle/oracle-database/21/upgrd/behavior-changes-deprecated-desupport-oracle-database.html#GUID-E4B798A7-49F2-4286-934F-099E2AF21254


21cで非推奨になった機能リスト

非推奨情報も「データベースアップグレードガイド」で確認できます。主なものはこちらです。


Adobe FlashベースのOracle Enterprise Manager Expressのサポート終了

Oracle Enterprise Manager Express(EM Express)は、21cで非推奨になりました。今後のバージョンでは提供終了の可能性もあります。今後もGUI画面を使ったデータベースの運用や監視を行いたい場合、Enterprise Manager Cloud Control(EMCC)や SQL Developer 等で代替が必要です。

なお、Adobe Flashは、2021年1月以降、すべての主要なブラウザでサポートが終了しています。この影響はOracle社製品以外にも該当します。

(参考)Adobe Flash Player サポート終了に関するアシスト取扱製品への影響について
https://www.ashisuto.co.jp/support/information/adobe-flashplayer/adobe-flashplayer.html

オラクル社製品の場合、下記の2製品が該当します。

・Oracle Enterprise Cloud Control(EMCC)
・Oracle Enterprise Manager Express(EM Express)

Oracle Enterprise Manager Cloud Controle の場合、Adobe Flash を利用していた箇所については JETに置き換えられており、21c以降も製品自体は引き続きサポートされています。JETへの置き換え方法は既存バージョンにより異なります。もし置き換え対応が未実施であったり、ブラウザ側のサポートが終了している環境で閲覧した場合には、19c以前の場合でも画面表示ができないケースもあり得ます。もしご不明な点がございましたら、弊社営業までご相談ください。


複数の暗号化アルゴリズムが提供されていましたが、21cから一部の古いアルゴリズムは非推奨、または非サポートになりました。今後新たに暗号化を検討する場合、AESベースのアルゴリズムが推奨されています。

非推奨 MD4、MD5、DES
非サポート RC4

ちなみに、暗号化機能の大半は Enterprise Edition の Advanced Security オプションで利用できるものです。Oracle Cloud の Oracle Database Cloud Service(DBCS)をご利用の場合、例外的にStandard Editionでもデフォルトですべて暗号化されています。Oracle Cloudの場合はAESベースの暗号化アルゴリズムが採用されています。


21c での仕様変更(概要一覧)


ORACLE_HOMEが読み取り専用に

従来のORACLE_HOMEが読み取り専用になり、ディレクトリ構造も変わります。この仕様変更により、ダウンタイム無しのパッチ適用や更新もできるようになりました。


新元号「令和」にも対応

2019年5月1日以降、新元号の「令和」がスタートしました。21cからはデフォルトで対応しています。21c以前のバージョンでも「令和」を表示したいという場合、一部のプラットフォームでパッチが順次提供されています。詳細は下記のオラクル社ブログも合わせてご参考ください。

参考:Oracle データベースの日本の新元号「令和」への変更方法について
https://blogs.oracle.com/supportjp/oracledb_change_jp_eraname


統合監査の定義済ポリシーが新たに3つ追加

Oracle Databaseには、よく使用されるセキュリティ関連の監査設定を対象とする、事前定義の統合監査ポリシーがあります。21cでは新しく3つの事前定義済の監査ポリシーが追加されました。いずれも技術導入のセキュリティ・ガイド(STIG)で推奨される監査要件が実装できます。

・ORA_STIG_RECOMMENDATIONS
  STIGで推奨される監査を実行。

・ORA_ALL_TOPLEVEL_ACTIONS
  権限を持つユーザーのすべてのトップ・レベル・アクションの監査を実行。

・ORA_LOGON_LOGOFF
  ログオンおよびログオフ操作を追跡。

詳細は Oracle Database 21c 「セキュリティ・ガイド 」も合わせてご参照ください。


おまけ:新たなビジネス展開を考えるときのオススメ新機能

セキュリティ強化やブロックチェーン・テーブルの実装、JSONデータへの対応強化等、21cでは新機能が沢山盛り込まれています。In-Memory オプションも一部制限付きで有償オプション無しで利用できるようになるなど、ライセンス面の変更もありました。具体的にバージョンアップをまだ未検討の段階でも、是非下記の記事も情報収集にお役立てください。

(参考)Oracle Database 21c新機能から読み解く!コンバージドデータベースの世界と機能強化の傾向とは
https://www.ashisuto.co.jp/db_blog/article/oracledatabase-21c-new-features.html


21c の Oracle Database ダウンロード方法

製品モジュールは 21c リリース以降、順次公開されています。利用したいOS環境のモジュールがあるかどうかは Doc ID 2413744.1 の最新情報をご確認ください。


参考記事

Oracle News Release Summary
https://www.oracle.com/jp/corporate/pressrelease/jp20210114-1.html

現在のデータベース・リリースのリリース・スケジュール (Doc ID 2413744.1)
https://support.oracle.com/knowledge/Oracle%20Database%20Products/2413744_1.html


この記事で知りたい情報は得られましたか?

以下の記事では、21cの新機能や、21cから必須になるテナント構成の考え方などをご紹介しています。データベースバージョンアップをご検討中でしたら、ぜひあわせてお役立てください。



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執筆者情報

あさの みさ プロフィール画像

2007年度アシストに入社後、Oracle Database のフィールドエンジニアと定期研修のセミナー講師を兼務。2度の産休・育休を経て、データベースやクラウド関連のプリセールスエンジニアとして活動中 ...show more


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