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テストデータマスキングとは?開発スピード×品質×セキュリティを叶えるテストデータ運用のあり方

  • #テストデータ管理

2025.08.18

テストデータマスキングとは?開発スピード×品質×セキュリティを叶えるテストデータ運用のあり方

テストデータマスキングとは何か?

テストデータマスキングとは、実際の業務データに含まれる個人情報や機密情報を、特定できないように加工(マスキング)する技術です。

NIST(米国国立標準技術研究所)が発行したガイドライン「NIST SP 800-188: De-Identifying Government Datasets」では、マスキング(masking)について以下のように定義されています。

The process of systematically removing a field or replacing it with a value in a way that does not preserve the analytic utility of the value, such as replacing a phone number with asterisks or a randomly generated pseudonym.

-フィールドを体系的に削除する、あるいはその値をアナリティクス(分析的)な有用性を保持しない方法で別の値に置き換えるプロセス。たとえば、電話番号をアスタリスクやランダムに生成された仮名に置き換えるといった例が挙げられる。
(出典:NIST Glossary - Masking ※)

しかし、このような単純マスキングでは、アプリケーションの動作確認や不具合の再現といった“実際のテスト”には不十分です。
たとえば、電話番号をすべて「****」にしてしまうと、形式上は正しく見えても、実際の値がないため、バリデーションの動作や番号に応じた処理ロジックの確認ができません。

そのため、実際のテスト環境においては、分析的な有用性を保持したまま、個人情報だけを安全にマスキングする技術が必要とされているのです。


なぜ今「テストデータマスキング」なのか?

GDPR・個人情報保護法で変わった“データの扱い方”に求められる慎重さ

GDPRや個人情報保護法の改正により、“本番ではないから大丈夫”という認識はもはや通用しません。開発・テスト環境であっても、本番データを扱えば個人情報漏えいのリスクは変わらず、セキュリティやアクセス管理が甘ければ、その危険性はむしろ高まります。

誰がどのデータに触れられるのか──その曖昧さが、思わぬ事故の引き金になります。今や、法令順守はもちろんのこと、企業がどれだけデータを丁寧に扱っているかが、信頼を左右する時代です。


高頻度リリースを支える“即使えるテストデータ”の重要性

もうひとつ見落とされがちなのが、「テストデータの準備にかかる手間と時間」です。従来、開発現場では以下のような非効率なやりかた、課題が日常的に発生してきました。


  • テストごとに本番データのコピー申請が必要になり、着手が大幅に遅れる
  • セキュリティ部門との調整が都度発生し、スケジュール通りに進められない
  • マスキング作業が属人化しており、ミスや漏れによる情報漏洩リスクが残る
  • 複数チームでのデータ共有により、整合性が崩れ、テスト結果が信用できない
  • テストデータの状態が毎回バラバラで、バグの再現性や回帰テストが不安定

なぜ従来の手法では限界があるのか?Excel・手動マスキングの弊害

テストデータの取り扱いレベルについては、大きく3段階に大別できます。

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ステージ1:実データをそのまま使っている(リスク最大)

「マスキングの時間が取れない」「データ構造が壊れるから加工できない」などの理由から、本番データベースをそのまま開発環境にコピーして使っているケースもあります。しかしこの方法では、個人情報や機密情報がそのまま露出するため、万が一アクセス権の管理が甘かったり、開発環境が外部とつながっていた場合に、情報漏洩のリスクが極めて高くなります。


ステージ2:CSV出力+手動マスキング

Excel等に出力したデータを目視でチェックし、一部の列のみ削除・加工して使う方法です。この場合、ステージ1に比べると多少の配慮はありますが、機微情報の取り残し、人為的ミス、属人化といった課題は避けられません。また、整合性エラーでテストが失敗するリスクもあります。

実際にお客様とお話しする中でも、「本番データは使えないから、毎回“テスト用のダミーデータ”を手作業で作っている」というケースも見受けられます。

この場合、機密情報の保護という観点では優れているものの、工数が膨大で、現場の負荷が非常に高いのが実態です。ルールや精度が人に依存しているため、拡張性や再現性の面でも課題を残す点で、ステージ2の延長線上にある運用形態といえます。


ステージ3:専用ツールによるマスキング(理想)

構造や参照整合性を保ちながら、個人情報・機密データをルールベースで自動マスキングできる専用ツールを導入した状態です。氏名や住所などの高リスクデータを統一された基準で加工できるため、手作業による属人化やミスを排除しつつ、整合性を保ったまま複数環境に安全に展開できます。

さらに、仮想データベース機能を併用すれば、マスキング済みのテストデータを必要なときにすぐ複製・再利用できるため、セキュリティはもちろん、マスキングルールの一貫性や操作ログの可視化といったガバナンス強化、そして開発スピードとの両立が可能です。

この状態が整っていれば、法令対応、運用効率、品質再現性まで含めて最適なテストデータ運用が可能なので、現代の開発環境における“理想的な基盤”といえます。


Delphixが変える、マスキングとテストデータ運用の新しい標準

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実データを高速に一貫性を担保してマスキング、安全に使える状態へ

Delphixは、氏名・住所・クレジットカード番号などの高リスクな個人情報・機密情報を、ルールベースで自動的にマスキングします。マスキング対象や手法を一貫して定義できるため、手作業による加工ミスや属人化のリスクを排除できます。

さらに、単なる置換処理ではなく、データの整合性や参照関係を維持したまま複数DB・複数環境へ安全に展開できるのが特徴です。

これにより、本番データのコピー運用から脱却し、法令対応・監査対応を見据えたセキュアな開発基盤を構築できます。


バグの再現性を高め、リリース前にシステム品質を担保

テストの品質を左右するのは、どれだけ本番に近い状態を安定して再現できるかです。Delphixはマスキング後のデータでも、形式・整合性を維持しながら常に同じ条件でのテスト環境構築が可能です。

たとえば、不具合が発生した際にはスナップショット機能で当時のデータ状態を保持できるため、バグの再現性が格段に高まります。また、回帰テストも同一データ条件で複数回行えるため、テストの信頼性を損なうことがありません。

属人的なデータ準備に依存せず、誰がやっても同じ結果が得られること。これが、Delphixがもたらす“品質の土台”です。


テストデータを “待たずに使える” スピード感

Delphixでは、マスキング済みの仮想DBを数分で複製・展開可能。テラバイト級の大容量データでも、従来のような“コピー待ち”は不要です。

さらにブックマーク機能を活用すれば、任意の時点のデータ状態を保存・復元できます。そのため、テスト中に不具合が発生しても、その時点のデータを保存しておけば、不具合修正後のテストの際に同じデータを使って再びテストを実施できます。また、テスト途中のミスがあっても、ブックマークを利用してテスト前の状態に戻すことで迅速に再テストが可能です。

また、ある時点のデータで検証した後、別の時点のデータに切り替えての再検証(環境切り替え)も簡単に行えます。
これにより、テストの再実行や開発環境の切り替えが、従来よりも圧倒的にスムーズに行えます。

非本番環境のストレージ消費も大幅に削減しつつ、並行テストに必要なデータベースを柔軟に準備可能できるので、テスト環境の“使用時間の調整”や“作業制限”といった課題を解消します。


導入企業の声
“テストデータ準備がボトルネック”だった現場のビフォー・アフター

ここでは、Delphixを採用して大きな効果を上げられているお客様の事例をご紹介します。

SBI生命保険株式会社|効率化と共に進む開発とインフラの「働き方革命」

課題/背景

  • DXを推進しつつ、新商品開発や既存ビジネス拡充を含めたシステム開発、運用、保守を実施した結果、インフラ、開発両チーム間での連携が上手く取れずに現場のフラストレーションがたまっていた
  • 職務権限の考えに基づき全てのDB環境をインフラチームが管理しているため、開発チームが自由にデータを扱えず、開発工程が複雑になっていた
  • 1つのテスト環境で複数の開発プロジェクトに対応しなければならず、データの移行や処理に時間がかかっていた

対策

  • 簡単な操作で既存のDBから迅速に仮想DBを作成できる「Delphix」を導入し、インフラ、運用者の作業負荷を削減しつつ開発者が自由にデータを扱える環境を用意
  • 仮想DB環境の払出しを行う組織を立ち上げ、利用に対する管理体制も整備
  • CI/CDを採用し、開発チームが開発業務に集中できる品質の高いデプロイ環境を構築。またDelphixと連携させることにより、デプロイだけでなくテストまでを自動化

効果

  • 従来8時間以上もかかっていたテスト環境の準備の工数が20分までに短縮され、インフラチームがさらに戦略的なタスクを実施できるようになった
  • Delphixにより40もの独立したDB環境が作成可能になり、開発の柔軟性と速度が向上
  • Delphixの仮想化技術により、DB環境の数は20倍にもなったが、必要なストレージ容量は97%も削減
  • 職務権限とテスト環境における課題を解決したことにより、開発と運用チーム間の不満が解消。両チームの協力関係も強化され、DevOpsを意識したシステム開発が行えるようになった

マツダ株式会社|テストデータ準備の無駄を排除してシステム開発を飛躍的にスピードアップ

課題/背景

  • ITプロジェクトにおいて、開発工程での効率化は一定の効果を上げていたが、テスト工程はまだ改善できていなかった
  • 様々なテストシナリオに合わせたデータの「断面」の作成に工数がかかり、開発者の待ち時間も発生していた
  • バグや障害発生時のデータの保持が困難で、再現による調査に長時間を要していた

対策

  • システム品質に影響せずテスト工程を効率化できるテストデータ準備作業に着目し、Delphixを導入
  • 任意のタイミングの断面に自由に戻れるDelphixのブックマーク機能を活用
  • 必要なデータ断面をDelphixで保持し、修正担当者に簡単かつ迅速に共有

効果

  • 各開発者が自由に使える専用仮想DBの提供でデータ準備時間を削減し、テスト工程を効率化
  • データ断面ごとの物理的なDB作成は不要になり、開発者は待ち時間なく必要な断面を利用可能に
  • 修正担当者がバグや障害をすぐに再現でき、調査や修正対応が大幅にスピードアップ

関西電力株式会社|電力事業を支えるシステム開発の効率化と品質向上を同時に実現

課題

  • クラウド化、モバイル活用などの開発案件が急増していた
  • 高品質なサービス提供のため、開発コストの半分をテスト工数が占めていた
  • テストで必要なデータの申請~提供に時間がかかっていた

対策

  • PoC実施によりテスト工程を最大46%効率化できることを確認し、Delphixを導入
  • テスト工程で繰り返し発生するデータ断面取得や巻き戻しの工数を削減できるDelphixを導入
  • 全社横断のテストデータ共通基盤をDelphixを活用して構築

効果

  • テスト工程効率化により、より多くの開発案件に対応できるようになった
  • 高品質なサービス提供を維持しながらテスト工数の大幅削減を実現できた
  • 最大3ヵ月かかっていたデータ申請~提供のリードタイムを数日に短縮できた

マスキングから始まる、テストデータ運用の見直し

マスキングは、セキュリティのためだけの対策ではありません。
テストデータの在り方そのものを見直す出発点であり、安全性と効率性を両立するための“環境づくり”の第一歩です。

これまで、テストデータ準備は「時間がかかるのは仕方ない」「セキュリティのために多少の手間は必要」と考えられてきました。けれど今は、それを変えられる手段があり、変えるべき理由も十分にある時代です。

テストデータからの情報漏洩防止が強く求められる時代に、防ぐだけでなく、品質とスピードを生むテストデータ運用へ。
その意識転換こそが、開発のスピードやシステムの品質を飛躍させる鍵といえるでしょう。


Delphixの詳細説明やデモンストレーションお申し込み

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Delphixで実際にデータベースのコピーを作成する流れをご覧いただくこともできます。お客様のシステム環境に合わせたデモンストレーションも可能ですので、是非お気軽にお問い合わせください。

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