- 特集
~アシスト創立50周年、オラクルビジネス35周年記念~
よりお客様目線でこれまでのいい関係をさらに発展させていく
アシスト創立50周年を記念して、35年間ともにあり続けていただいた日本オラクル株式会社の取締役 執行役 社長 三澤 智光様と対談を行いました。
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株式会社リックテレコム |
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株式会社アシスト |
月刊『コンピューターテレフォニー』(2016年から『コールセンタージャパン』に名称変更)の創刊メンバーとして立ち上げに参画し、2008年から編集長を務める矢島 竜児様と、アシストのサポートセンターを統括する星 博が、コールセンターの実態やあるべき姿などについて対談しました。
星:
本日は私の愛読書であるコールセンター専門誌『コールセンタージャパン』の編集長 矢島様と対談できるということで、非常に楽しみにしておりました。まずは創刊の背景からお聞かせいただけますか。
矢島様:
1990年代中盤頃から、日本でも電話とコンピュータをシステム的に統合するCTI(Computer Telephony Integration)が活用され始めました。もともと通信系の雑誌を発刊していた当社でも、CTIに焦点を当てた雑誌『コンピューターテレフォニー』を創刊することになり、私はその創刊メンバーとして1998年にリックテレコムに入社しました。米国で発売していた情報誌『コンピューターテレフォニー』の独占翻訳契約を締結し、日本語版として創刊したのがその年の10月です。約4分の1は翻訳記事、残りは日本独自にコールセンターのシステムを販売しているベンダー情報やアーキテクチャを紹介するなど、内容は完全にIT情報誌でした。
星:
1998年といえば、弊社では主力取扱製品であるOracle Databaseの24時間365日サポートを開始した頃です。ところで今年から誌名を『コールセンタージャパン』に変更されていますが、その理由をお聞かせください。
矢島様:
創刊当時はIT情報誌だったのですが、コールセンターの現場の方に購読いただくケースが増え、自然と現場マネジメントや人材育成、経営貢献といった話に踏み込んでいき、次第にマネジメント情報誌にシフトしていきました。その頃から『コンピューターテレフォニー』という名が体を表していないという指摘が社内外から出始め、さらに「コールセンタージャパンドットコム」(http://callcenter-japan.com/
)というWebサイトを長く運営していたこともあり、「わかりやすくまっすぐにいこう」ということで、今年から『コールセンタージャパン』になったのです。
星:
取材先としてBtoBとBtoCのどちらが多いでしょうか。また各社の規模感や運営方法などについてもお聞かせください。
矢島様:
取材先はだいたい7対3の割合でBtoCが多く、読者は金融系がかなりのウェイトを占めていることもあり取材先としても多いです。規模や運営方法は企業によって様々です。例えば、金融や通信販売といった大規模センターは自社運営(インハウス)とアウトソーシングを併用していたり、拠点も複数に分けていることが多いですね。お客様相談室に限定しても、食品などは比較的小規模ですが、住宅設備機器関連メーカーならばスタッフが数百人ということもあります。
星:
先ほどからお客様相談室、コールセンターといった呼び方が出てきますが、コンタクトセンター、カスタマーセンターといった呼び方もあります。明確な定義はあるのでしょうか。弊社もコールセンターという名称だった時期もありましたが、提供している製品に対して操作や活用を支援するという意味合いも込めてサポートセンターという名称にしました。
矢島様:
コールセンター業界に大きな影響を与えたのはインターネットの登場と普及です。BtoC、BtoBを問わず、顧客接点の1つとして「電話窓口」という受け皿が必要になり、それまでお客様相談室や問い合わせ窓口と言われていた部署がITで武装化、コールセンターになっていったのが1998年から2000年辺りです。以降、電話で受けるのはコールセンター、メールやWeb経由のコンタクトも受けるのはコンタクトセンターだと呼ばれていた時期もあります。今でもその傾向はありますが、個人的にはコール=電話など、チャネルで区分けするのではなく、「実際に何をやっているか」で呼び方を考えれば良いと思っています。私のイメージでは、コールセンターという大きな括りの中にサポートセンター、受注センター、お客様相談室等があり、定義について聞かれたら「それぞれがコールセンターの1つの形態に過ぎないという見方をしないと、『ウチはよそとは違う』という意識が強くなりすぎて、他業種・他社に学ぶという精神が薄れ進化が停滞するのではないか」とお伝えしています。
星:
一時期はコールセンター機能をアウトソースする傾向があったように感じます。弊社のサポートセンターも半数近くが協力会社の方で構成されていた時期がありましたが、災害時や緊急時の対応、育成などを考え、近年は内製化を重視しています。サポート業務に特化した「アシスト北海道」というグループ会社もその一環で立ち上げました。
矢島様:
確かに一時期、内製化に進んだのは事実ですが、今はハイブリッド型が多いです。1つの会社の中に業務委託とインハウスのセンターがあるだけでなく、インハウスの中でも社員・契約社員だけ、あるいはほとんどが派遣社員といったように構成も様々で、多様化しています。ここ1、2年は完全に人手不足で、特に専門知識が求められたり、特定のスキルが必要な場合は人員確保が厳しいようです。規模にもよりますが、採用難が続くうえにコールセンターは業務量の変動が大きく、通年、一定した雇用数での運営が難しい。100%内製化することは困難でしょうね。北海道といえば、首都圏を除くコールセンターの拠点数ではこれまでは沖縄が1位でしたが、当社で統計を取り始めてから今年初めて、北海道が沖縄を抜きました。2、3年前から沖縄での人員確保が難しくなってきていることが要因だと思います。現在、コールセンター拠点が増加傾向にあるのは、九州では福岡、熊本、宮崎、東北や北陸では山形、富山。自治体が積極的に誘致しているためか青森も増加傾向ですね。地方拠点はこれから先も増えると思います。
星:
『コールセンタージャパン』でよく「戦略的カスタマーサービス」というキーワードが出てきますが、戦略的という部分の実践がなかなか難しいと考えています。以前はコールセンター=コストセンターと言われた時期もありました。
矢島様:
コールセンターというと、「コストセンター」や「キャリアの終着点」というイメージからいまだに脱却が難しい面もあります。しかし今では「顧客接点」という考え方が経営層から重きを置かれるようになり、コールセンターはその戦略拠点となりつつあります。この変化が、働く人にとっても大きな意味があるという方向に転換していくべきです。
星:
弊社ではサポートセンターはキャリアの出発点だと捉えています。新入社員がまずは製品について覚え、お客様とのやりとりで社会人としての言葉遣いやメールの書き方を学んでいく、またサポートセンターで経験を積むことにより様々なスキルを着実に身に着けていくことができます。キャリアの基盤構築の場としてはもってこいです。
矢島様:
私もそう思います。2005年ぐらいにコールセンターの研究をしている某大学の研究機関に協力したことがありますが、担当されていた教授は、「こんなにエントリージョブに向いている部署は他にない」とおっしゃってました。教授いわく、「会社の製品やサービスに関する情報はすべてコールセンターに集まってくるし、そこで働けば会社のことはおおよそ理解できる。またお客様の声もリアルに聞ける」と。「コールセンターには新卒や経験の浅い若い有望な人を配属してそこからキャリアをアップしていくべきだ」と提唱されており、私もまさしくその通りだと思ったのですが、なかなか思った方向にはいかないのが現状のようです。また、御社のようなテクニカルサポートの場合は、若手だけでなくエース級の技術者がいないと運営が厳しいと思います。
星:
テクニカルサポートですので、コミュニケーションが苦手でも製品にすごく詳しい人がスーパーバイザーのバックで支援するケースもあります。また、シフト制なので子育て中のお母さんも働きやすいのではないかと思います。
矢島様:
コールセンターでは在宅勤務など多様な働き方を選択できますし、ダイバーシティを一番体現できる場所だと思います。最近講演でよくお話しさせていただくのは、「コールセンターにとってお客様の声や蓄積したノウハウなども価値あるものですが、一番大事な資産は人材」ということです。働く人たちを、全社的にもっとうまく活用していけるキャリア支援の枠組みが必要です。ストレスが多い仕事に見合うような成果が可視化され、個人のキャリアも積み重ねでき、報酬を得られる場所だという風潮を作らないといけ
ません。
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星:
御社が「コンタクトセンターアワード」を設立された目的についてお聞かせください。
矢島様:
当社が主催する「コンタクトセンターアワード」は、共催のイー・パートナーズ株式会社 谷口修様の発案で、今年で12年目を迎えます。先ほどお話ししましたが、戦略拠点になりうるコールセンターが「コストセンター」や「収益に直接貢献できない場所」と見られがちだったため、陽の当たる機会を作りたかったことが目的の1つです。また、どんな業界でも同業者のネットワークがありますが、コールセンター、特にインハウス運営の場合は「業種」では括ることができないため、横の繋がりが少ない。コールセンターを進化させるには異業種に学ぶことが近道です。もちろん雑誌を読んでいただくことで学びを得る機会はありますが、紙ではスペースや表現に限界があります。そこで、リアルな場所で相互研鑽していただきたい。これがアワードの最大の目的です。その意味では賞は“おまけ”のようなものですが、受賞できれば社内外で注目されモチベーションアップにつながっているようです。しかし、相互研鑽の意識抜きで、単純に賞だけを狙うとなぜかなかなか取れない傾向があります。当アワードやHDI-Japan(https://www.hdi-japan.com/
)の格付けなどにより、コールセンターという顧客接点が可視化・評価され、それがロイヤリティに大きな影響を与える時代になりつつあると感じます。結果的に、経営層から見えるコールセンターは大きく変わっていくはずです。
星:
弊社も内部評価ではなく、他社と比べてどうなのかを、社内メンバーが今一番知りたがっています。その意識づけとしても、今回アワードに応募することは良い機会だと捉えています。これまでのアワードや取材の中で印象に残っている企業の取り組みはありますか。
矢島様:
御社のようなBtoBのサポートで多くの企業も取り組んでいるのが「司令塔機能」です。例えば、修理受付やトラブルシューティングで、プロセスをすべて把握しているコールセンターの担当者が仕入れ部門を動かしたり、資材を手配したりと司令塔として動くのです。これをきちんと実施できている企業は、コールセンター自体がリファレンスサイトとして機能し、訴求できる“売り物”になっています。また、先進的でも大規模でもないのですが、成果が売上げとして出ている事例もあります。あるメーカーでは10名ほどのパート社員の方が顧客リストをもとに「試供品を送らせてください」と電話し、少し時間をおいてから「いかがでしたか?」と電話をして商談を刈り取っていく。プロセス自体は難しくないのに、それが数千万円という利益を生み出しています。似たような例はフランチャイズビジネスでもあり、その企業では定期サービスの案内をDMで送っているのですが、営業は店舗での接客が忙しくてフォローの電話をかける時間もない。そこで7~8名の電話専任担当を設置したところ、やはり売上げが数千万円になったそうです。
矢島様:
人があまりにも流動的だとコールセンターそのものが成り立たなくなりますが、「顧客接点」である以上、停まるわけにはいかない。人材不足はテクノロジーでどれだけ補えるかです。テクニカルサポートの場合、リモートサポートのような技術をうまく使って顧客の利便性を高めると同時に、生産性を最大化していけますね。
星:
BtoCでは家庭用PC等の操作をリモートでサポートするサービスがありますが、BtoBの場合はポリシーやセキュリティ面で踏み込めない部分もあり悩ましいところです。技術といえば、弊社では今年コンサルタントに現状分析を依頼し、仕組みとして当たり前になってきている音声記録の導入を勧められました。
矢島様:
音声記録はVOC(Voice of the Customer:顧客の声)の傾向分析等に有効な上に、オペレーターの教育やリスク対策、コンプライアンス面でも幅広い用途があるので、是非導入すべきです。また、次号の記事で今話題の人工知能(AI)についてもまとめました。現状、コールセンター業務でAIが一番使われているのはFAQ検索です。ここ数年以内にAIによってコミュニケーションが全自動化するなどということはありえないのですが、AIを活用すれば対応がスムーズになり顧客満足度が高くなる場面はあると思います。ポイントは「顧客対応の現状把握」をしっかり行うことです。顧客からの問い合わせが電話なのかメールなのか、またどういう解決プロセスを辿ったのかといった分析が事前のアプローチとして必要で、それを把握した上でAIを含むコミュニケーション手段を検討します。AIが何でもやってくれるわけではない、ということだけは確かです。
星:
サポートセンターの指標として売上げは成果としてわかりやすいのですが、弊社のサポートセンターを実際にご覧になっている矢島様に何を指標にしたら良いかアドバイスをいただきたいのですが。
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矢島様:
御社と同じように業務用ソフトウェアを販売している企業では、サポートの無償/有償の線引きを明確にし、サポートセンター自身がサポートをアップグレードするかどうか顧客に尋ね、かなりの収益を上げている例があります。しかし、御社の場合はまずはVOC活用ではないでしょうか。お客様の声の活用と、それに基づいた改善でお客様にとってリファレンスサイトになれるかどうか。そのサービス品質を高める過程で「サービスの継続」、「他の製品の購入」等へつなげる取り組みが必要だと思います。御社の扱っている製品はサポートの難易度が高いですが、きちんと電話で解決し、ダウンタイムを限りなく少なくすることでロイヤリティに結びつけられますよね。
星:
サポートもインシデント制など、やり方はいろいろありますが、弊社の場合、サポートのインシデント回数は無制限ですし、扱っていない製品であっても多少サポートするケースもあります。どこまで対応するかの線引きが難しく、弊社の方針が果たして良いのか悩みどころです。
矢島様:
サポートの有償/無償の範囲の切り分けはきちんとすべきだと思いますが、それは売上げにつなげるためなのか、それともロイヤリティを上げるためなのかは各社の考え方次第です。有償サポートは成果が見えやすいですが、ロイヤリティ向上に努めて「サポートがいいから継続」になったのか、対応が悪くて「バージョンアップせずにそのまま」になったのか、原因をトラッキングして可視化しないといけません。しかし、契約ベースなだけに「貢献度の可視化」は比較的わかりやすいと思います。指標としては、「サポート契約の継続率」、さらに掘り下げて「電話で問い合わせがあった顧客のサポート継続率」、またアップセルやクロスセルがどのぐらいあったかなどいろいろあります。「このサービスを人に勧めるかどうか」を顧客に回答してもらうNPS(Net Promotor Score)のような推奨度も指標として利用できると思います。CS(顧客満足度)は印象を聞くものですが、NPSは将来行動の予測なので、優れたロイヤリティ指標になると言われています。ただし、多くの場合はマイナス評価になりがちなので結果をみてマネジメントが萎えてしまい、経営者にも報告しづらい。だから日本ではなかなか広まらないようですが、実施してみる価値はあると思います。
星:
弊社のサポート満足度調査に「継続したいですか」「他人に勧めたいと思いますか」を追加項目として検討してみても良いかもしれません。また、お客様の問題解決だけで終わりではなく、次につなげていくということですね。
矢島様:
問題解決率とロイヤリティ指標をクロス分析すると弱点が見えてくると思います。また、解決するまでにどのぐらい苦労したかを顧客に聞くCES(Customer Effort Score:顧客努力指標)という指標もあります。例えばWebサイトの情報で解決でき、電話をかける必要がなかったので評価が高いとか、システムのダウンタイムが長かったら評価は低いとか。CESはロイヤリティ指標であると同時に改善施策を導き出すための指標であり、痛点──どこが悪かったのかをスコアから分析するものです。以前記事にしたことがあるのですが、特にテクニカルサポートのコールセンターに求められる役割は、「電話を受ける部署」であると同時に、「顧客の声や行動という情報をもとに、いかに電話をかけずにすむようなサービス品質を目指すのか」だと思います。
星:
そうなるとFAQの拡充も非常に重要ですね。『コールセンタージャパン』の最新号に掲載されていた「待たせる工夫」も大きなポイントだと思います。弊社ではつながる仕組みとしてコールバック方式を採用していますが、電話を待つ間にお客様に何を準備しておいて欲しいかを伝えたり、お客様にログの取り方や見方などを伝えることで、スピード感が違ってきますね。
矢島様:
カルテのようなフォームをメールやインスタント・メッセージ等で送り、電話を待っている間に記入してもらうと良いかもしれません。御社の場合は、ミッションクリティカルかつサポートの質が問われる仕事です。「つながって当たり前」で、それだけでは褒められることが少ないのではないでしょうか。顧客に良いサポートだと評価されることほど担当として嬉しいことはありません。「ありがとう率」も指標の1つとして有効かと思います。
星:
弊社ではお客様から「感動しました」と言われたらカウントする「感動率」を指標の1つにしています。またWebサイトで一部のサポートメンバーを紹介しているのですが、もっとメンバーの顔を出した方が良いのではないかという声も上がっていますね。
矢島様:
BtoBで顔の見えるサポートはありかもしれませんよ。今はBtoCでチャットサポートが流行っていて、アバターを使うことで担当者に親近感が沸くというケースもあるようです。今回のコンタクトセンターアワードで御社の発表の中にあった「社内Wiki」を活用した情報共有や育成も非常に面白い取り組みだと思います。なかなかWikiを社内で活用できているところはありません。挑戦的な取り組みだと思います。難しいサポートであればビデオチャットを利用するなど、今は手軽に試せる様々な技術が出てきているので、サポート品質を上げるために色々と試してみてはいかがでしょうか。人材教育にしろIT活用にしろ、積極的な投資判断が重要だと思います。
星:本日は様々なアドバイスをいただき大変参考になりました。ありがとうございました。
(取材日:2016年9月)
アシストはリックテレコム主催の「コンタクトセンター・アワード2016」において「最優秀テクノロジー部門賞」を受賞しました。
詳細はこちら
アシスト創立50周年を記念して、35年間ともにあり続けていただいた日本オラクル株式会社の取締役 執行役 社長 三澤 智光様と対談を行いました。
【対談×トップインタビュー:金沢工業大学】
建学綱領である「高邁な人間形成」「深遠な技術革新」「雄大な産学協同」を経営の柱に、「教育付加価値日本一」という目標を掲げて、社会に貢献する大学運営を実践する金沢工業大学の大澤 敏様にお話を伺いました。
【対談×トップインタビュー:通研電気工業株式会社】
東北電力グループとして機器の開発から設計、製造、工事、保守まで一貫した体制でICTソリューションを提供、電力の安定供給に貢献する通研電気工業株式会社の竹原 秀臣様にお話を伺いました。