アシストのブログ

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2015.10.16

データベース最新事情~クラウド案件が増えてきた~

クロストーク データベース最新事情


谷川 耕一様

DBOnline チーフキュレーター
谷川 耕一 氏

翔泳社「EnterpriseZine/DBOnline」チーフキュレーター兼ブレインハーツ取締役。開発エンジニア、雑誌編集者、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング等を経て現在はソフトハウスの経営とライターの二足の草鞋をはく。



株式会社アシスト 
岸和田 隆

アシスト入社後、Oracle Databaseの研修講師、フィールド・サポート、新バージョンの検証を経て、2007年自社ブランド「DODAI」の準アプライアンス製品の企画/開発、2009年PostgreSQL、2011年EDB Postgres、MySQL/MariaDBの支援サービス事業立ち上げを担当。

岸和田 隆


翔泳社「EnterpriseZine/DBOnline」のチーフキュレーターとしても活躍中のブレインハーツ 谷川耕一様と「データベースのアシスト」を牽引する株式会社アシスト 岸和田隆が、データベース分野における最新トピックなどを語り合いました。

枯れているかのようなRDB市場だがネタはつきない


谷川様(以下敬称略): リレーショナル・データベース(RDB)は枯れたテクノロジーのように言われていますが、時代とともに変化しています。だから2011年に立ち上げた「DBOnline」が現在も話題に尽きることなく継続できているのです。当時は、「ビッグデータ」、「Hadoop」というキーワードは出始めたばかりで、「NoSQL」もここまで注目されていなかったし、「データサイエンティスト」なんて誰も言っていませんでした。

先日開催された「DBOnline」のイベントで、あるメーカーの方とSQL標準で代表的な「SQL99」の話から標準化談義となりました。当時(1990年代後半頃)、何十社もあったRDBメーカーは10社に減少し、プレーヤーも変わりました。実は今RDBをかなり作り込んでいる企業としては、外販はしないFacebookやGoogleがいたりします。彼らは自分たちで使うことが目的ですから、標準化に興味はないのかもしれませんが、勢いのある彼らこそが標準化活動に参加した方がいいのではないか、という話が非常に興味深かったです。

また、各メーカーにおけるRDBの立ち位置も変化しつつあります。最近Oracle社はOracle Databaseの新バージョン12cを提供しIn-Memoryオプションを出しました。Oracle Exadata Database Machine(Exadata)などエンジニアドシステムもあります。MicrosoftはAzure、IBMはDB2 BLUアクセラレーションの話をよくしますが、SQL ServerやDB2単独でのメッセージアウトがほとんど見られなくなりました。逆にビジネスボリュームは小さいもののNoSQL型データベース(DB)の情報発信が非常に多く、世の中がNoSQL一色であるかのようです。しかし一方で、NoSQL型DBのほとんどがSQLインターフェースを持つようになり、SQLかNoSQLかの議論自体意味がなくなってきたのではと感じています。

Oracle Database In-Memoryの反響は上々


岸和田: 昨年7月にOracle Database In-Memoryオプションがリリースされ、弊社では11月にイベントを開催してアーキテクチャや性能の検証結果を発表しました。今年は毎月20名規模でハンズオンセミナーを開催していますが、実際に触ってみてどんなものかを知りたいというお客様で満員御礼となり、久々に反響の高い機能が出たように感じます。

谷川: 12cの大きな特徴であるマルチテナント機能だけだと企業がいち早くバージョンアップしたいという動機にはつながりにくい印象だったのですが、Oracle Databaseを利用している人にはIn-Memoryオプションの仕組みや効果がわかりやすい。これはバージョンアップの大きな動機になるのではないでしょうか。インメモリという名前から全部メモリに載せるので分析が高速になるイメージがありましたが、既存のDBのOLTP系の処理を高速化することで大きな効果を上げられるということではないかと。このあたりは先日のExadataの新バージョンX5-2の説明を聞いて、やっと見えてきた感じがします。

岸和田: すでにIn-Memoryオプションを複数のお客様が採用しており、近いうちに活用事例をご紹介できると思います。日経BP社主催の「データサイエンティストジャパン2015」で講演する機会があり、「全員分析経営をするためには」をテーマに、弊社で展開している施策や取扱BIツールを使っての情報活用事例を紹介しました。アシストでは自社の強みの一つを「スピード」だと考えています。お客様への対応スピードを高めるためには、営業、技術、業務の素早い連携と速やかな意思決定が求められるため、お客様に関連する情報は最新データを含め全社員で共有できる仕組みになっています。例えば、お取引に関する情報は数百万件、営業も約250名なので、情報系のデータウェアハウス(DWH)を作らなくても、販売業務システムに直接SQLを発行して最新データに基づく様々な意思決定のためのレポート出力や分析が可能です。

しかし、これが数千万~数十億のデータを保持する企業では、最新の業務データを利用したリアルタイム分析は難しくなります。基幹システムに大量データを分析するSQLを発行すると基幹システムの性能に影響を与えたり、期待する速度で検索結果が返ってこなかったり。アシスト流のリアルタイムな情報活用を提案できませんでした。これが、ExadataとIn-Memoryオプションをうまく利用することで実現可能です。そこで、昨年12月よりExadataとIn-Memoryオプション、弊社が取り扱うBIツール(WebFOCUSQlikView)を組み合わせた「HAYATE」というソリューションを提供開始しました。

また、同じイベントで発表された製造系のお客様が、製造、販売など様々な部門を経由するデータを一元的かつ一気通貫で参照できるビッグデータの情報系システムを構築中で、基幹の業務系システムとは別のシステムとしてトライしているというお話が印象的でした。

谷川: 企業に体力があれば業務系、情報系をミックスしたほうがコスト効果が出そうですね。また、例えば、Oracle DatabaseとPostgreSQLを並行して使うのならば、技術的な面でエンジニアの負荷は少ないかもしれませんが、Hadoopで分散処理をと考えた場合、それを使うための技術者をどうするか、実績のないものを会社の中にいれるのか、NoSQLの採用を考えた場合、従来Oracle Databaseでは暗号化まできちんと実装していたのにそれはどうなるのか、といったように、仕組み作りにも様々な課題がありそうです。

ビッグデータが流行っていますが、活用のための仕組みを作っても、それにあわせ日次、週次でのオペレーションは実際回るのでしょうか。例えば、顧客をセグメント化して営業案内のメールを10種類配信するとして、1回は配信できそうですが、これが毎週、毎月続くとなると10種類のメールの文章を考えるだけでもかなり大変です。現実にできることと企業側で考えていることにギャップがあり、仕組みも含め会社のやり方に合わせると、結局はRDBでやっていたほうが良いという結論になるのでは? Oracle Databaseの場合、価格は高いかもしれませんが、予測できる範囲内で様々な技術を使えるメリットは大きいと思います。

谷川 耕一氏


クラウド案件が増えてきた!


岸和田: 昨年ぐらいから急激に「クラウドを含めご提案ください」という案件が増えてきました。弊社の営業担当の間でも「Amazonって何?」「どうすればクラウドで商売ができるのか」と関心が高くなり、この4月のAmazon Web Services(AWS)などクラウドサービスに関する社内向け勉強会には100名近くが参加しました。Amazonは有名どころの企業事例を上手にセミナーなどで前面に押し出していますね。日本の場合、同業他社の事例を重視されるので、あれを見ると「うちでもできるんじゃないか」と思うのではないでしょうか。

谷川: オープンソース・ソフトウェアのエンジニアは3年位前からAWSを使い始めています。彼らはビジネス目線でなく、使いたいサーバの入手に時間と手間がかかるためAWSを利用しようというところから始まっています。エンジニアに利用経験があるからといって、AWS関連のビジネスを提案できるかは別でしょう。クラウドになってサーバラックとかラックマウントのサーバマシンを見たことがないエンジニアが増えているらしく、トラブルがあった場合、マシンが壊れているのか回線が落ちているのか、それが想定内のトラブルかどうかの判断ができないと聞いています。エンジニアにとって逆に厳しい時代になったのかもしれません。

岸和田: 情報システムにおいてDBには重力があると思うんです。例えば、これまでオンプレミスでデータ保有していたものをAWSが提供するRedshiftやAuroraへ移行する場合、AWSを中心にデザインし直さないといけませんね。

谷川: IaaSの場合、他のIaaSに動かすことはできますが、AWSが提供しているRedShiftやAuroraを使い始めたらその上にアプリケーションを作ることになるので動かせなくなります。誰も表立っては言いませんが、これって「Amazonに囲い込まれている」ということでしょうか。そのIaaSですが、簡単に他事業者へ動かせるので価格競争が大変だそうです。大規模で利用するならリスク分散の意味合いもありますが、移行の容易性が最初から価格交渉に使われるケースもあるようです。でもIaaSと契約しているSaaSベンダーからすると、IaaSの価格が下がるとコストも下がり利益率が上がります。そのため国内のIaaSベンダーはいくら付加価値をつけても利益が上がりにくいモデルとなっているようです。そういう意味では、PaaSの方が囲い込みがしやすいのではないでしょうか。

岸和田: 例えば携帯電話からスマホへの推移でビジネス形態が急激に変化することがあります。携帯電話向けのサービスはオンプレミスで、スマホ向けのシステムはクラウドで構築されているお客様の場合、スマホ向けの新しいサービスを次々提供していくためにDevOpsの体制に切り替えていく予定のようです。これまでは開発、システム、DB、運用という縦割りでの体制だったものを、より短期間でアプリケーションをデリバリするために、横串でのチーム体制にし、クラウドを利用してセルフサービス型で環境を構築しているそうです。

また、クラウドへ開発環境を移すということは、DBも一緒に移行しなければならない。例えば、これまでオンプレミスではOracle Database Real Application Clusters(RAC)を使ってShared Everything方式で可用性を高めていた部分を、クラウド業者が提供するShared Nothing方式のデータベースで組むことになったりします。
※2015年4月にNFSストレージサービス「Amazon Elastic File System(EFS)」発表。

谷川: 確かに、そういう場合にはRAC部分の実装し直しや、バックアップや可用性などは新たに検討しなければなりませんね。

岸和田: Shared Nothing方式のクラウドのインフラで、DBの可用性を考慮しながら、処理のスケールにも対応しなければなりません。レプリケーションなどでデータを複数ノードにコピーして、参照処理に対応させたり、データを複数ノードに分割するなど、Oracle DatabaseであればRACを採用することで実現してきた部分をどう実装するか考えなければなりません。また、サービスレベルを再定義して、システムの一部の数分程度のダウンタイムなら許容するといったことも検討しないと。もちろん、DB層の構成が変われば、それに対応してアプリケーション層のデザインも変えなければなりません。

谷川: あるイベントで、元々クラウドで動かしていたサービスをあえてローカル環境で使えるようにしたという発表がありました。扱うデータによってはクラウドに置かずにローカルに設置したいというニーズへの対応だそうです。こういうことをきちんとやることが「クラウドとオンプレミスをハイブリッドで使う」ことなんだなと思いました。AmazonやGoogleの場合、ローカル版を出すとは思えませんが、そのあたりをやるのが、MicrosoftやOracle、IBMでしょうか。

岸和田: そうですね。既存ユーザを抱えるベンダーのクラウドはその方向性だと思います。Oracle CloudもオンプレミスのExadataと同じアーキテクチャで実装されているので、クラウド上でRACが使えます。既存ユーザがShared Everything方式のRACに合わせてデザインしてあるアプリケーション資産を守りながらクラウドへ移行できるのが一番のメリットになると思っています。ちなみに、多くのクラウドの場合、クラウドに入ってくるデータは0円課金だけど、クラウドから出ていくデータには課金がかかりますよね。オンプレミスに戻るにも、クラウド間で引っ越す場合にもお金がかかるという話も聞きます。

谷川: 機能的にクラウド利用は問題がなくてもデータのやりとりが多すぎて課金が上がるケースもあるようです。例えば発生するデータがすべてAWS上にあるのならRedShiftでいいと思うんです。でもオンプレミスにある売上データ等と突き合わせる時に、売上データをクラウドに上げること自体、企業的には嫌かもしれないし、全国何百店舗から都度データをやりとりしていたら課金に影響します。かといって夜間にバッチで大量にデータをあげようとすると太い線が必要に。データをどう分割し、どうやりとりするかをうまく設計しておかなければなりません。それこそ全体のシステムデザインに関わってきます。

岸和田 隆


PostgreSQLの今後の機能拡張が興味深い


谷川: PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)の立ち上げからまる3年経過しましたが、ビジネスの伸び感はいかがですか?
※「PostgreSQL」の普及推進を目的にアシスト他9社の発起人企業を含む正会員16社、一般会員32社で構成。

岸和田: Oracleのビジネス規模と比較するとまだまだ小さいですが着実に伸びています。イニシャルでのライセンス費と保守費をいただく商用ソフトウェアのビジネスモデルとは違い、サポート付き期間利用権であるサブスクリプション・ライセンスのビジネスは時間はかかりますが堅実だと思います。また、エンタープライズ向け機能が充実したPostgres Plus(開発元:EnterpriseDB社)、MySQLから派生したMariaDB(開発元:MariaDB社)はShared Nothing方式のクラウド環境で可用性を実現するクラスタの仕組みが実装されており、今後、仮想環境やクラウドで利用が進むと考えています。DBだけの置き換えの場合、スイッチングコストが障壁になるケースが多いですが、アプリケーションを含めた改修が入る場合、DBのスイッチングコストは全体コストと比べると小さくなるので、クラウドに移行する場合も同様だと思います。

谷川: PostgreSQLも機能拡張が施され完成度が高くなってきたと感じています。コミュニティベースなので、ある機能に特化して突き進むようには思えないですが、これまでは先行するOracle Databaseのような機能を充実させる方向性で進んでいたものが、今後は独自にどう進化していくか非常に興味があるところです。

HP Verticaをラインナップに!


岸和田: この5月から弊社のDBラインナップにHP Vertica(Vertica)が加わります。列指向データベースでいくつかの製品を比較して体制的にもしっかりしているところをポイントに選定しました。HP社ではビッグデータ向けのソリューションの一部としてVerticaを位置づけているようですが、アシストは、まだその領域のビジネスが少ないので、そのきっかけとなればと思っています。もちろんアシストが得意とする企業内の情報活用の提案として、DWH専用DBMS製品の「Vertica」、BIツールの「WebFOCUS」と組み合わせた高速分析ソリューション「WebFOCUS TurboV」を提供します。

谷川: Verticaはシンプルでわかりやすく、BIツールとの組み合わせ提案はお客様にも理解しやすいと思います。

岸和田: VerticaはMPPアーキテクチャのDBMSで、DWHで求められる性能を、処理ノードを増やして解決することができます。しかも、ライセンス形態がデータ容量課金なので処理ノードの増減とライセンスが連動しません。つまり、Shared Nothing方式のクラウドと相性が良い。あるVertica事例では、オンラインゲーム企業でユーザ動向を分析するために大量のログデータをHadoopで処理していたのを、VerticaとHadoopとの適用領域を分けたことで、使い慣れたSQLで高速な分析が可能となり、アドホック分析工数が大幅に削減され、分析の頻度が上がり、ビジネスにも良い結果をもたらしているそうです。

谷川: Hadoopはむしろ、ビッグデータ分析系ではなく、整合性をとる必要のない細かいトランザクションをパラレルで動かすために使ったほうが良いのではと思っています。HadoopもSQLインターフェースを強化する方向にありますが、Hadoopだけでデータ抽出から複雑な突き合わせ/データ加工処理を行うことはできない。つまり、SQLベースのBIツールだとHadoopにつなげて特定のデータの抽出はできますが、複雑な分析はやりにくい。だからビッグデータ分析系をやるなら最初からSQLベースのものにした方が色々なことができる場合も多いと思うんです。つながることと使いまわすことは違います。冒頭でも言いましたが、結局はRDBでやった方が良いという結論になるものも多いのではないでしょうか。

岸和田: そうですね。どのシステムも最終的にはどう使うか、どうデザインするか、にかかっていると思います。

(取材日:2015年4月)

  • Postgres Plus は、EDB Postgres の旧製品名です。

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