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2024.05.16

Bダッシュ委員会 DAO分科会発信
「DAOをビジネスに適用できるか」社内で実証実験

アシストの視点 Bダッシュ委員会 DAO分科会発信「DAOをビジネスに適用できるか」社内で実証実験


アシストには、お客様にお役立ちできる未来の取扱製品・サービスの発掘・育成に取り組む「Bダッシュ委員会」という活動があります。

Bダッシュ委員会には研究テーマに応じた分科会活動があり、今回は、分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization:DAO)のビジネス適用の可能性を探り、アシストのビジネスにどう活かせるかを検討する「DAO分科会」についてご紹介します。

※アシストにおける商材発掘・調査の専門チームである「新事業共創推進室」+「Bダッシュ委員会」についてはこちらもご参照ください。
https://www.ashisuto.co.jp/pr_blog/article/202207bdash.html



1. DAOとは何か?


── まずDAOが何かを教えてください。


アシスト木村 貴史

木村 DAOは「Web3」の文脈で出てくるキーワードです。「Web3」は、閲覧するだけのインターネット「Web1.0」、双方向でやりとりできる「Web2.0」に続く、自律・分散型インターネットです。Web2.0ではSNSや動画配信サービスなどを使って誰でも簡単に情報を発信できる反面、そのサービスを提供する企業やGAFAと呼ばれるプラットフォーマーが中央集権的に情報を管理・保持する仕組みになっています。


アシスト板木 栄樹

板木 「Web3」では、インターネットの利用者が情報を分散管理し活用できるのですが、これを支える技術が「ブロックチェーン」です。「Web2.0」のように中央集権的に管理されると、管理者に力も集中してしまいます。そこで、データの改ざん自体が非常に難しく、データを自分たちで分散的に管理・運用可能なブロックチェーン技術を活用することで安全に、また透明性を持って公正に管理できるようになります。

また、ブロックチェーン技術により、組織的かつ自律的に、事業やプロジェクトを運営することができるようになります。それがDAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)です。


アシスト松山 晋ノ助

松山 理想的なDAOの姿として以下の点が挙げられます。

(1)組織への参加者はフラットな立場にあり、中央集権的な管理者はいない
(2)参加者がNFTを持つことで、発言権や投票権といった権利を得られる
(3)参加者によって決められたルールによって組織運営される
(4)ルールはブロックチェーン上で「スマートコントラクト」と呼ばれるプログラムにより
   一定条件を満たすと自動的に実行される
(5)ルールに従っているので透明性が保たれ、公正な評価を得られる

ブロックチェーンやNFT、スマートコントラクトといった技術を採用することで自律分散型の組織を実現します。

文章だけだとイメージが掴みにくいと思いますので、後ほど、アシストで実証実験を行っている「社内バイトDAO」で具体的なイメージを掴んでいただきたいと思います。


2. DAOに注目した背景


── そもそもDAOに着目したきっかけは何ですか?


アシスト小山 雄貴

小山 Bダッシュ委員会はアシストの将来のビジネスにつながる分野・プロダクトを発掘する組織です。2020年に「Web3」についての研究を始めましたが、活動を進める中で、もう少しテーマを絞らないとビジネスにどう直結するのかのイメージが掴みづらいという課題に直面しました。

Web3の世界にはDAOが不可欠であることを知り、それがアシストの中でどう活用できるのか、また、アシストのお客様、メーカー、パートナーにどのような価値を提供できるのかを探るために、1年後の2021年にDAOに特化した「DAO分科会」を立ち上げました。


── 現状、お客様はDAOについてご興味ありそうですか?


アシスト松山 晋ノ助

松山 実際、2~3年ぐらい前からアシストのお客様の中でも経営企画を担当する方々とWeb3の話をする機会が増えており、その話の延長で「DAOが絶対くるという想いでチャレンジしたい」とおっしゃるお客様がいらっしゃいます。その感触があるので、アシストがツールまたはノウハウでご支援できたら、新しいビジネス領域になるのではないかという期待感を持っています。


アシスト板木 栄樹

板木 お客様がリアルのビジネスとデジタルとの融合を検討される中で、NFTを持つことで、企業の会員になっていただいた方に報酬のような何かしら付加価値を提供できるものや、寄付や投資したものが公正に扱われているかをDAOの中で透明性をもって見ることができ、さらに会員を増大したいといったイメージをお持ちのようですね。


── 「DAO分科会」での研究成果はいかがでしょうか?


アシスト肘井 寿治

肘井 最初の3ヵ月ぐらいは「インキュベーションDAO」を立ち上げて、まだ日本に上陸してない良い製品の検証とお客様へのご紹介、さらにそこにはメーカーも参加するフラットな組織をDAOとして運営することで一つの製品を盛り上げることはできないか、といったことを検討していました。しかし「インキュベーションDAO」構想も壮大すぎてDAOの具体的なイメージを持てない状態でした。


アシスト小山 雄貴

小山 DAOについて研究していく中で、
(1)DAOは既存の組織や業務を置き換えるものなのか
(2)DAOに向く組織・向かない組織があるのか
といった議論を重ねました。

ブロックチェーン技術の活用で、情報が改ざんされないといった利点から、例えば、金融系にはDAOが向いているのではないか?といった業種業態別の向き・不向きも議論しました。しかし、銀行やITに限らず、ほとんどの企業は、経営層から従業員まで中央集権的なピラミッド構造になっています。それぞれの組織には目標や予算があり、それを達成するためにビジネスが組み立てられてリソースがアサインされ、各人が業務に当たるという縦割りの構造になっています。それは普遍的なものであり、否定する要素ではありません。アシストの中で考えてみても、組織構造で同じ目標に向かってみんなが動くものは、プロジェクトを含め、必ずしもDAOに移行すべきとは言えないと理解しました。

DAOイメージ

一般的な企業組織とDAOの違い

出典:「ブロックチェーンとWeb3/メタバース 更新:2023年5月」ネットコマース株式会社
https://libra.netcommerce.co.jp/39820(2024/03/25ダウンロード)


アシスト肘井 寿治

肘井 一方で、各人の仕事内容には組織目標に直接的には合致しないものがあり、実際に行う活動内容に応じて報酬を分配する方が理にかなっているケースがあります。例えば、我々Bダッシュ委員会のような、組織を横断するような活動です。我々の場合は、最初からやることが決まっているわけではなく、周りの部門に協力を仰ぐ必要もありますが、一緒に汗を流してくれた人と、そうではない人の濃淡があり、一律の評価は難しくなります。内容に応じた報酬は公正な評価につながりますし、DAOではやったことに対する報酬がきちんと見える「透明性」も一つの特徴。こういったケースにはDAOが向きます。


アシスト木村 貴史

木村 議論を重ねる中で、DAOは既存の組織や業務を置き換えるものではなく、また組織のビジョンによって向き・不向きがあることが分かってきました。そこで、いったん「インキュベーションDAO」を中断し、まずは実験的にDAOを組成し社内でパイロット運用をしてみようということになったんです。


3. 「社内バイトDAO」のパイロット運用を決める


── 「社内バイトDAO」はどうやって生まれたのですか?


アシスト小山 雄貴

小山 分科会内で様々なアイデアがあがりましたが、現実的で分かりやすかったのが「社内バイトDAO」でした。例えば友人の結婚式動画を頼まれるほど動画編集が上手くても、チーム内でその特技を生かす機会はほとんどないという人がいます。一方、製品プロモーション用の動画を作りたいというチームでは、チーム内にできる人がいなければ、外注しようという話になります。動画だけでなく、通訳、司会などなど、生かせる特技やニーズはたくさんあると思います。


アシスト肘井 寿治

肘井 「社内バイトDAO」は、既存の組織を超えて自分の得意技で会社に貢献し報酬を得ようというコンセプトです。「社内バイトDAO」に参加すると、社内バイトの募集、自分の所属する組織に関係なく自分の特技を生かしたバイトの受注が可能になります。


── DAOはテクノロジーがベースになるということですが、どういう仕組みで実装されるんでしょうか。


アシスト松山 晋ノ助

松山 元々Web3はブロックチェーン技術がベースとなり、仮想通貨やNFTからスタートしました。ブロックチェーン上でのタスク管理や投票など必要な機能が揃い、連携することで進化してきました。今世の中にあるDAO関連ツールは以下のような個別機能を組み合わせて構築されています。

・NFT(参加者として投票権・発言権を獲得)
・スマートコントラクト
・タスク管理
・報酬支払

企業の場合、個別機能を統合するだけで工数が相当かかりますが、DAOに必要な機能が統合されたアプリケーションも出始めています。今回はそれを利用します。


アシスト小山 雄貴

小山 「社内バイトDAO」ではそのアプリを使って、社内バイトDAOへの参加からバイトの受発注、報酬支払までを行います。

(1)社内バイトDAOへの参加資格を得るためにNFTを購入
  参加資格を持つと、バイトを受発注できるようになります。

(2)バイトの発注者が募集要項を登録
  バイトの目的や背景、期限、達成した場合のポイントなどを明記します。

(3)「自分にできそうだ」と思った参加者が応募し受注

(4)受注者は仕事が終わったら発注者に確認を依頼

(5)発注者がOKであれば報酬ポイントを受け取り


── 社内でサンクスポイントを与えあうような感じなんですね。


アシスト肘井 寿治

肘井 サンクスポイントは感謝を伝え合うもので、個人のモチベーションにはもちろんつながります。一方で仕事をしてその対価として報酬まで受け取る「社内バイトDAO」は、皆さんのやる気が更に変わってきますよね(笑)


── DAOはフラットな組織ということでしたが、最初の運営はどうやって決めるのですか?


アシスト板木 栄樹

板木 理想的なDAOには管理者がいないのですが、最初はルール作りが必要なので、ほぼ100%のDAOは当初は中心となる運営チームがいる状態で始まります。一般的には、NFTを持っている参加者が投票という形をとることにより、中央集権から合議制に移行していきます。最後は合議制で培われたノウハウがプログラム化(スマートコントラクト化)され、誰かがいちいち意思決定しなくてもプログラムで承認されるようになります。このように段階的に進化していきます。

Web3分科会やDAO分科会の最初のころは、どうやったらいきなり合議制とか自動化ができるんだろうと疑問に思っていましたが、記事などを通じて、最初は中央集権で始まるんだということが分かってきました。当初はルール作りも手探りでしたが、今はそれが正攻法だということを実感できます。


アシスト肘井 寿治

肘井 今回の「社内バイトDAO」の場合、参加者の属性は、
(1)運営者
(2)参加者
(3)バイトを発注する人
(4)バイトを受注する人
に大きく分かれますが、(1)はDAO分科会が担っています。

まず、バイトの募集要項が適正かどうかを運営側がチェックします。運営側が承認したら、募集が始まります。複数の人から募集があった場合は、運営側で選考・承認します。これは特定の人が仕事を請け負い、報酬ポイントを獲得し続けることがないように排除することが目的です。受注者の成果を発注者が確認した後に、運営側は最終確認をして報酬ポイントを受注者へ渡すという流れになっています。


アシスト小山 雄貴

小山 「社内バイトDAO」でもバイトの発注・受注を承認したり報酬に関する決めごとを作ったりと運営の負担が大きいのですが、将来的にはすべて自動で行われるようにスマートコントラクト化する構想です。


── 苦労した点はどこでしょうか。


アシスト木村 貴史

木村 具体的な内容を取り決める中、全員の意見が一致しない部分があり、やはり「ミッション・ビジョン・バリュー」をきちんと決めるところに立ち戻りました。目的は「アシストのビジネスにどうつなげるか」なので、今回の社内バイトDAOを通じてやることを整理した結果、やっとバイトDAOのルールを細分化するところまで進めることができました。


4. 今後の展望


── 「社内バイトDAO」は今度どのような展開を予定していますか?


アシスト小山 雄貴

小山 社内バイトDAOの仕組みの中で、きちんと発注・受注・報酬の支払いが成り立つことが確認できたら、対象をBダッシュ委員会の外にも広げ、最終的には全社展開したいと考えています。全社展開に向けては、例えば、NFTの場合はベースのトランザクション代がかかるのでそこをどう扱うかの解決などが必要です。

また、展開していく中で新たな気付きが出てくると思います。DAO自体、まだまだ新しいものですが、取り組みたいというお客様の声がある中、「社内バイトDAO」を通じて得られた課題の克服方法、それでも残る課題、気付きなどを、事例としてお伝えすることで、お客様に貢献していきたいですね。


アシスト松山 晋ノ助

松山 活動を通じてDAOの向き、不向きも徐々に見えてきました。社内バイトDAOは身近なところで企業におけるDAOの在り方を試す良い機会ととらえており、チャレンジすることで経験を積んで、その先にお客様の課題解決に繋がるアウトプットに繋げられれば、という思いで活動しています。


アシスト木村 貴史

木村 従来から、新規プロダクトの発掘や、売れているプロダクトを検証しアシストの取扱商材とするまでは実施してきました。今回のように、トレンドになりそうなものを分科会で研究し、プロダクトを発掘するという活動、また、お客様も交えてテストしたり、お客様とこんなビジネスができる、それにあてはまるプロダクトを探しに行くといった、これまでとは別のアプローチもできたらよいなと思っています。


── 「社内バイトDAO」の社内展開が楽しみですね。私も特技を登録して会社に貢献してみたいと思いました。本日はDAO分科会の成果や社内の実際の取り組みなど楽しいお話をありがとうございました。


※本記事は2024年4月にインタビューした内容に基づくものです。
 本記事に記載された、当社意見、予測などは本稿作成時点における当社の判断であり
 今後予告なく変更されることがあります。
※記載されている会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。


Bダッシュ委員会 「DAO分科会」メンバー

アシスト木村 貴史

木村 貴史
CX本部(新事業共創推進室)
新事業共創推進室 室長 兼 Bダッシュ委員会 委員長
Bダッシュ委員会「DAO分科会」メンバー
詳細および執筆記事はこちら

アシスト板木 栄樹

板木 栄樹
CX本部(新事業共創推進室)
Bダッシュ委員会「DAO分科会」メンバー
詳細および対談・執筆記事などはこちら

アシスト松山 晋ノ助

松山 晋ノ助
CX本部(新事業共創推進室)
アシストマイスター、Bダッシュ委員会「DAO分科会」メンバー
詳細および対談・執筆記事などはこちら

アシスト小山 雄貴

小山 雄貴
ビジネスインフラ技術本部(データベース技術統括部)
Bダッシュ委員会「DAO分科会」リーダー

アシスト肘井 寿治

肘井 寿治
西日本支社(営業統括部)
Bダッシュ委員会「DAO分科会」メンバー

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