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2023.06.19

システム更改におけるOracle Databaseライセンスの考慮点

システム更改におけるOracle Databaseライセンスの考慮点

昨年「Oracle Databaseライセンスの定義とルールを正しく理解する 」と題し、全5回の連載形式でブログをお届けしました。おかげさまで現在も多くの方から継続的にアクセスいただいており、皆様の関心の高さを実感しています。昨今はコンプライアンス遵守への高まりなどから、ライセンスに関する相談も実際に数多くいただいており、そういった動向もブログのアクセス数に現れているのかと捉えています。

こういった背景を踏まえ、今回は第2弾「実践編」として「Oracle Databaseライセンスの適正化」をテーマに、実際起こりえるケースをもとに、考え方のポイントや注意事項をお届けします。

第1回は「システム更改」を取り上げます。ハードウェアやEOSLなどをきっかけに発生することの多いシステム更改において、Oracle Databaseライセンスの観点では、どういった点に気をつけていけば良いでしょうか。



一時的なライセンスが発生

ライセンスは永久使用権ですが・・・


貴社がお持ちのOracle Databaseライセンスは「永久使用権」であるため、 システム構成がどのように変化しても、ライセンスそのものは継続的に利用可能です。 (もちろん、システムの拡大や利用者増加などでライセンス個数が不足する場合には都度追加が必要です)永久使用権という名前のとおり、購入したライセンスは永続的に利用できる権利があります。

その上で、システム更改で最も注意すべき点は、現在利用中のOracle Databaseライセンスとは別に 新たなOracle Databaseライセンスが一時的に必要となる可能性が極めて高い ことです。「えー、そうなの・・・」という声も聞こえてきます(笑)、これから順を追って説明していきます。

ライセンスの原則とシステム更改の流れを俯瞰してみる


先のブログでは「Oracle Databaseライセンスの原則 」として、ライセンスはサーバに対して許諾されること。加えてライセンスが必要なサーバとはOracle Databaseソフトウェアがインストールされるサーバ、またはOracle Databaseが稼働する/稼働しうるサーバであることを説明しました。

この原則を念頭に置くと、理解がしやすいかもしれません。

Oracleライセンスの原理原則

システム更改の流れを簡単にイメージしてみましょう。

現行システムから新システムへの変更は“瞬時に”できるものではありません。またこういった機会にOracle Databaseソフトウェアをはじめ、OSや各種ミドルウェアを新しいバージョンにするなど、システムの構成要素の変更も、あわせて実施されるケースが多いと思います。

こういった様々な要素の変更後も、新システムで滞りなく運用ができるよう、現状システムの運用と並行して、新システム側ではOracleデータベースを構築し、データを移行し、アプリケーションやシステム運用の稼働確認を行い、問題がないことを事前に確認します。

こうした流れを見ていきますと、システム更改時には 現行システムと並行して、新システム側にもOracle Databaseがインストールされ、稼働しうる状態が発生 します。つまり、 新システム側にも一時的にOracle Databaseライセンスが必要 ということになります。

システム更改時に必要となるOracle DBライセンス

新旧システムが並行稼働する時のライセンスをどうする?

では、現行システムと新システムで並行してOracle Databaseが稼働する状態では、どのようなライセンスが適切でしょうか?

基本的には、 期間指定ライセンス(以下、Termライセンス)の活用を推奨 しています。

システム更改は永久に続くものではなく、必ず完了までのスケジュールが立てられています。現行システムと新システムが並行稼働する期間は「システム切替まで」であり、Oracle Databaseを利用する期間の見通しは立ちます。必要になる期間はこのように「一時的」であるため、永久使用権ではなく「期間指定」という形態のライセンス選択が可能になるわけです。

Termライセンスを活用する最大のメリットは 安価で利用できる ことです。永久使用権ライセンスと比べるとその定価単価は20%です。これを利用しない手はありません。Termライセンスは1年単位です。ご利用のスケジュールにあわせて利用年数をご検討ください。なお、 Termライセンスは保守費用も必要です。その費用は永久使用権と同額 となりますので、この点は注意が必要です。


永久ラ使用権とTermライセンスの定価単価


Termライセンスの種別はどうする?


こういった相談もよくいただくので、基本的な考え方を説明します。
Termライセンスでも、ライセンスカウントの考え方は永久使用権と同じです。

システム更改時は、業務環境の移行という観点から、新システムでの利用者(利用形態)は、現行業務と同等と推測されます。ということから 現行ライセンスとあわせることを推奨 します。例えば外部向けサイトのシステムは、ユーザー数のカウントが難しいことからProcessorライセンスを選択される方が多いと思います。システムの切替前に「業務と同等処理のアクセステスト」を想定されている場合には、Termライセンスも「Processor」にあわせるのが適切でしょう。一方、新システムの利用期間内において、利用者数が特定(制限)できる場合には「Named User Plus」の選択も可能です。


もう1つの方法


ここまで説明したように、限られた期間だけOracle Databaseが並行稼働する場合には、Termライセンスの活用を推奨しています。さらにもう1つ検討できるのは、 既存でお持ちの未使用のライセンスがあれば、それを活用する ことです。

システム更改ではA→Bという単純な置き換えだけではなく、より強固な基盤に統合・集約するパターンがあります。またクラウド移行に伴い、時間単位での利用に変更するためにライセンス込みサービスに切り替えることもあるでしょう。すると「今まで使っていたライセンスの利用箇所がなくなる」というケースも出てきます。あらためて見直した結果、何かしらの「余剰ライセンス」が見出されることも少なくありません。

Termライセンスは安価で利用できますが、実際に案件ベースで試算するとそれなりのコストになることもあります。システム更改は、 Oracle Databaseライセンスに限らず、貴社がお持ちの様々な資産を見直す絶好の機会 でもあります。システム更改のプロジェクトでは、ライセンス以外にも様々なコストが発生します。トータルコストを少しでも抑えられるよう、余剰ライセンスの有無を確認し、もしあればそれを割り当てるという方法を検討してみてはいかがでしょうか。

具体的な検討パターン

では、実際には、並行稼働時のOracle Databaseライセンスをどのように検討していけば良いでしょうか?Oracle Databaseのエディションが変わる場合と変わらない場合、それぞれのパターンごとに見ていきましょう。

Oracle Databaseのエディションを継続する場合

Oracle Databaseのエディションを継続する場合は、Termライセンスを活用します。
Stadard Edition 2 (DB SE2) のパターンで説明します。

まず新システム構築を始める際に、DB SE2のTermライセンスを導入します。 新システムでの事前検証を経て、システム切替終了後に現行ライセンスを新システムで継続利用します。この際の注意点として、現行システムではOracleソフトウェアモジュールの削除またはOracle Database導入サーバの廃棄を行うようにしてください。

Oracle Databaseのエディション継続①:DB SE2

Enterprise Edition (DB EE)の場合も、上記と同様です。

なお、現行システムで過去エディション、具体的にはStandard Edition (DB SE) やStandard Edition 1 (DB SE1) を利用している場合には、新システム利用時にDB SE2へマイグレーションします。これは無償で可能です。

DB SE1で利用可能なOracle Databaseのバージョンは12.1.0.1迄 という制限もあります。このため、サポートのレベル、またはアプリケーションやOSの稼働対応の観点からも、システム更改後に利用するエディションとしては現実的ではありません。Oracle Databaseのバージョン利用制限がないDB SE2にマイグレーションしておきましょう。

Oracle Databaseのエディション継続①:DB SE1 → DB SE2

Oracle Databaseのエディションを変更する場合

次にOracle Databaseのエディションを変更するケースを見ていきます。

エディションが変わる場合、つまりDB EEへアップグレードする場合には、DB EEのエディション本体の他に有償オプションもあわせて検討します。これにTermライセンスやライセンスマイグレーション費用(後述)を加味すると 新システム構築の段階で新規で購入したほうがお得 というケースが実は多かったりします。

Oracle Databaseのエディション変更:DB SE2 → DB EE(新規購入)

システム切替後のDB SE2ライセンスは、他システムでの活用をご検討ください。

ライセンスマイグレーションも可能


新規購入ではなくライセンスのマイグレーションも可能です。基本的なステップは上記で説明した内容と同様です。異なる点は、エディションが変わるためにライセンスマイグレーションの差額費用が発生することです。

Oracle Databaseのエディション変更:DB SE2 → DB EE

先に説明した新規購入のパターンとシミュレーションしながら、トータルコストがなるべく抑えられる構成をご検討ください。

まとめ

「システム更改」におけるOracle Databaseライセンスの考慮ポイントとして、新旧システムが同時に稼働する場合には双方のライセンスが必要であることと、エディションごとの検討パターンを説明しました。

今回は触れませんでしたが、 新システムにおける適切なOracle Databaseライセンス個数の検討 も重要になります。こちらについては、過去の連載記事にて基本的な考え方をまとめていますので、あわせて参考にしてください。

なお、システム更改を機にOracle Databaseのクラウド化を検討されるお客様も多いかと思います。 Oracle Cloudを利用する場合は、期間制限があるものの、今回ご紹介したTermライセンスが不要になる方法もあります。次回の記事ではこういった情報を説明したいと思います。

システム更改はOracle Databaseライセンスを再考する絶好の機会 です。構成面で様々なパターンを検討される中で、ライセンス関しても同様に目を向けていただきたいと思います。「その構成でのライセンスは適切なのか」「自分たちはどれぐらいのライセンスを保有しているか」「全部正しく利用しているのだろうか、余剰や不足はないだろうか」こういったところをシステム更改時、すなわち構成が変更となる際に、あらためて整理していくことが適正化につながっていくのではと考えます。

弊社では、ライセンスルールそのもののご説明から、貴社システムに最適なライセンスのご提案まで、様々なご相談を承っています。支援やアドバイスが必要なときは、ぜひお声がけください。


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ご興味のある方はどうぞご活用ください。


執筆者情報

おおくぼ まさお プロフィール画像

1993年入社。BI製品、サポートセンター、フィールド支援を経て、現在はプリセールスエンジニアとして製品やソリューションの紹介からインフラ提案などの業務に従事。 また「今だから見直そう!Oracle Databaseライセンスの活用方法」といったOracle Databaseライセンス関連のセミナー/ウェビナー講師も担当。
趣味は温泉めぐりと登山。百名山制覇(現在半分程度クリア)と、セブンサミッツをじかに見てみたいと思っている。 ...show more


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