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【続・Blockchain Table入門】Oracle AI DB 26aiのV2が解く「運用のジレンマ」という鎖
Oracle AI Database 26aiでBlockchain TableのV2が実装されました。これは堅牢なガバナンスと開発・運用の柔軟性という相反する課題を両立させるものでありデータガバナンスやセキュリティを向上させます。V2はどのようにアップデートされたのかを動作検証しました。
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今年もオラクル社の年次イベント「Oracle AI World 2025」 が開催されました。アシストからは、11名の社員がラスベガス現地で参加し、以下のふたつのブログ記事で「Oracle AI World 2025」をご報告します。
・【速報】AIがすべてを変える!Oracle AI World 2025 from Las Vegas現地レポート」
・「Oracle AI World 2025 視察記」(本記事)
本記事では、 11月6日に当社で開催したライブウェビナー「超速報!アシストが読み解く『Oracle AI World 2025』」の内容をベースに、「Oracle AI World 2025 のハイライト」と「アシストの注目ポイント」をOracle AI World 2025全体の雰囲気とともにお伝えします。
Index
今年はイベント期間中、会場裏にある球体型の革新的なエンターテイメント施設「Sphere」にもキーメッセージが映し出されていました。
このメッセージこそが、創業者であり、会長兼CTOのラリー・エリソン(Larry Ellison)氏が発した、イベント全体を象徴するこの一言です。
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Oracle AI World 2025のキーメッセージ「AI changes everything(AIがすべてを変える)」 |
これは、AIがインターネットと同じように、今後の社会、ビジネス、そして私たちの生活そのものに、とてつもない変革が来ることを予感させる、力強い言葉です。
この壮大なビジョンを理解するため、以下の4つのパートに分けて、「Oracle AI World 2025 のハイライト」を振り返っていきます。
まず最初のパートは、「AIインフラ」です。
このテーマについて講演したのは、イベント開催直前に共同CEOに就任した、クレイ・マグワイク(Clay Magouyrk)氏です。
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Oracle Cloud Infrastructureの特長 |
いかに優れたAIが存在しても、それを支えるインフラが盤石でなければその真価を発揮することは困難です。これまでのクラウドでは、「パフォーマンス」「コスト」「セキュリティ」の3つの要素がしばしばトレードオフの関係にありました。
従来のクラウド環境では、パフォーマンスを追求すればコストが増大し、コストを抑制しようとすればセキュリティが犠牲になる、という、いわば「あちらを立てればこちらが立たず」だったわけです。しかし、オラクルはOracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)により、この常識をひっくり返しました。
OCIの設計思想は、「パフォーマンス」「コスト」「セキュリティ」の3つすべてを、何一つ妥協することなく同時に実現することです。
OCIは、後から様々なサービスを「寄せ集め」たものではなく、「最初から1つのまとまった全体として設計」されています。バラバラのピースを集めるのではなく、初めから1枚の美しい絵としてデザインされているため、全体がスムーズに連携し、高い効率性を発揮するのです。
OCI最大のユーザーである、OpenAI社、TikTok(ByteDance社)の事例を以下にご紹介します。
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OpenAI社の事例講演 |
OpenAI社は、OCIのAIインフラストラクチャの最も象徴的な顧客事例です。
OpenAI社のインフラストラクチャ担当バイスプレジデントであるピーター・ヘシュリー(Peter Hoeschele)氏は、AIの進化に伴い、計算能力の需要(コンピュート制約)が業界全体の喫緊の課題であると指摘します。
OCIがOpenAI社のニーズに応えられた要因は、圧倒的なスピードと共同設計という形で柔軟に対応したことにあります。
OpenAI社との「スターゲイト(Stargate)」プロジェクトでは、テキサス州アビリーン(Abilene)の施設において1.2メガワットものキャパシティを供給し、最終的には45万台以上のNVIDIA GB200 GPUを搭載する、世界最大級のAIクラスターの一つとなる計画です。
AIモデルの開発サイクルは非常に速いため、OpenAIは大規模な事前トレーニング(Pre-training)から、Soraのような新製品ローンチ後の迅速な推論(Inference)への切り替えに対応できる「ファンジブルなフリート(fungeable fleet)」(代替・互換性のあるインフラ)を必要としています。OCIのマルチプレーンネットワークやセキュリティ設計は、トレーニングと推論のワークロード間の要件の違いに対応し、迅速なインフラ提供を可能にしています。
ヘシュリー氏は、OCIとのパートナーシップによりAMDやBroadcomとの協業が実現し、シリコンレベルから電力供給に至るまであらゆる要素を最大限に活用することで、今後2年間で10倍の成長を目指すことが可能になると述べています。
また、OCIの技術がOpen AIの内部セキュリティ標準や輸出規制を含む各国政府の要件を満たす「ワンストップショップ」として機能している点も強調されています。
もうひとつ、極めて大規模なコンシューマーサービスであるTikTok(ByteDance社)の事例をご紹介します。
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TikTok(ByteDance社)の事例講演 |
OCIはOpenAI社のようなトレーニングワークロードだけでなく、TikTok(ByteDance社)のようなグローバルなインフラストラクチャも支えています。
TikTokは全世界で10億人以上のユーザーを抱え、米国だけでも1億7000万人以上のユーザーが毎日約2000万本の動画を生成しています。これは「ゼタバイト級のストレージ」と「数百テラビット/秒のネットワークインフラ」を必要とします。
TikTokのインフラストラクチャ責任者であるファンフェイ・チェン(Fangfei Chen)氏は、OCIとの統合が深くネットワーク層で行われているため、数百テラビット/秒の相互接続トラフィックが必要であり、OCIが業界初の100G、そして400GのFastConnectをリリースするきっかけとなったと述べています。
TikTokのようなサービスでは、(ブラックフライデーなど)予測可能なイベントへの事前のキャパシティ計画と、予期せぬ負荷スパイクへのスマートなロードバランシングシステムが不可欠です。OCIとTikTokのチームは、SLA(サービス品質保証)の最低限の要件を超え、両社のシニアリーダーシップの支援のもと、共同で「安定性目標」を設定し、完全な透明性をもって運用手順を共有しています。
強固なインフラが築かれたところで、2つ目のパートは、「AI Databse」です。
このテーマについては、データベース技術担当エグゼクティブ・バイスプレジデントであるホアン・ロアイザ(Juan Loaiza)氏が、AIの燃料となる膨大なデータをどのように知性へと変えていくのかを語っています。
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新しいAIデータタイプ:AI Vector |
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AI Databaseが言葉や画像に含まれる意味、文脈を理解できるようになる |
これは、データベースが単なるキーワードの一致ではなく、言葉や画像に含まれる意味、そして文脈そのものを理解可能にする技術です。
ドキュメント、画像、動画などの複雑なオブジェクトの意味内容(semantic content)を数値の配列として表現することで、従来の厳密な検索ではなく、類似性検索(similarity search)をミリ秒単位で実行できます。
このように、AIが人間のように言葉やモノの意味の近さを感覚的に理解できるようになったことは非常に重要です。これまでは、私たち人間がコンピューターの言葉(SQLなどの専門的なプログラミング言語)を勉強する必要がありました。まさに人間が機械に歩み寄っていた時代です。
AIがデータベースに組み込まれたことで、この関係が完全に逆転します。
「データベースの方が僕たちの言葉、自然な人間の言葉を学んでくれる」ようになった。これによって、専門家でなくても誰でも、「友人に話しかけるようにデータに質問し、必要な答えを引き出せる」時代が到来したのです。
その結果、以下の大きなメリットがもたらされます。
・問い合わせにかかる時間が短縮される。
・返ってくる回答の的確性と正確性が向上する。
・専門家でなくても、簡単に使えるようになる。
これにより、企業が持つデータは、初めて本当に価値のある資産へと変貌を遂げるのです。
3つ目のパートは、「AIの組み込み」です。
インフラとデータベースが統合されたとき、現実世界には一体どのような影響がもたらされるのか、もう一人の共同CEOマイク・シシリア(Mike Sicillia)氏が語る具体的な事例を見ていきましょう。
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インフラとデータベースが統合された世界について語るマイク・シシリア氏 |
AIによりすべてのビジネスの進め方は根本的に変革され、まさに今が、人類の最も困難な課題を解決する「一世代に一度の瞬間」である。それは古い技術に「後付け(bolted on)」されたものではなく、データ、インフラ、信頼性を統合したプラットフォーム全体に「組み込まれた(built in)」AIによって、実現されるべきである、とシシリア氏は主張します。
AI導入の目的は、単なる効率化を超え、従業員の能力を「拡張(Augmenting Individuals)」し、最終的には「人命を救う」具体的な成果を生み出すこと、つまり世界をより良くすることにあります。
Biofy社、Avis Budget Group社、Marriott社、Exelon社の4企業のゲストを迎え、各社がどのようにAIを活用し、その結果として顧客の成功にどのように貢献しているかを共有しました。
その中から、Biofy社、Marriott社の2社の事例をご紹介します。
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biofy社の事例講演 |
Biofy Technologies社は、OCIとOracle AI Databaseを活用し、人類にとって最も重要な課題の一つである抗生物質耐性菌との闘いに取り組んでいます。
従来5日間を要していた耐性菌テストでは、ベクター検索の活用により、バクテリアとその耐性を特定する時間がわずか4時間に短縮されました。この迅速な診断により、ブラジルの病院におけるバクテリア感染症による死亡率は70%から50%にまで劇的に減少し、2025年だけで2,000人の命が救われる見込みです。
さらに、このデータベースは、スーパーバクテリアに対抗するための新しい抗生物質の発見にも応用されており、開発期間を10年からわずか2年に短縮できる可能性があります。これは、分子発見やエピジェネティクス研究への応用へと広がり、5年以内に細菌感染症で命を落とす人をなくすという究極の目標達成に貢献しています。
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Marriott社の事例講演 |
Marriott International社は、80万人以上の従業員と世界9,000以上のホテルを展開する巨大企業です。
AIを導入にあたっては、「人々を第一に考える」というコアバリューに基づいて進められました。
AIの導入は、ゲスト体験の向上と従業員の能力強化の両方を目的としています。
従来のチェックイン業務は「回転椅子(swivel chair)」を使い、数十ものシステムをまたいで手作業で操作する必要があり、従業員に多くの軋轢(フリクション)を生んでいます。
Marriottは、これらのシステムを「単一のガラス窓(single pane of glass)」に統合するデジタル変革を進めています。AIがプロセスを自動化することで、従業員は定型的な事務作業から解放され、ゲストとの会話や「本物のホスピタリティ」の提供に集中できるようになります。
Marriottは、本社主導の目標だけでなく、従業員に「仕事の中で最も苦痛な部分」を尋ね、AI導入はその苦痛や軋轢を解決することから始めました。これにより、従業員のAI活用への意欲が高まりました。
最後は、「壮大なビジョン」です。
この技術革新の先に、オラクルは何を見ているのでしょうか。
ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏が登場し、この巨大な変化の根底にある「なぜ」、その壮大なビジョンについて語ります。
※実際、ラリー・エリソン氏のKeynoteセッション開始は1時間遅れとなり、急遽ライブ中継に変更されました。
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創業者、会長兼CTOラリー・エリソン(Larry Ellison)氏 |
ラリー・エリソン氏が語ったのは、単なる技術論にとどまらず、AIが持つ哲学的かつ歴史的に重要な意義についてです。
エリソン氏は、現在のAIブームを単なるバブルではないと断言し、かつての鉄道産業の勃興をも超える、社会の根幹を変える変革であると強調しました。
また、AI戦略を進めるにあたり、エリソン氏はあえて「やらないこと」を2点、明確に定めたと述べています 。
これらの戦略的な中立性により、OCIはOpenAI、Grok(xAI)、Gemini(Google)、Llama(Meta)、Cohereといった主要なAIモデルをクラウド上で提供できるプラットフォームとなり、多くのAI企業に採用されています。
一方で、人間の脳はたった20Wで動く超省エネなコンピューターであるのに対し、現在開発されているAIは1.2GWという途方もない電力を使う巨大な電子の脳(electric brain)です。
このような極めてパワフルなAIを、企業はどのように使えばいいのでしょうか。
企業にとって最大の懸念は、「保有する極めて重要なプライベートデータを、いかに安全にAIに活用させるのか」という点です。
この懸念に対しエリソン氏は、「世界中の価値あるプライベートデータの多くは、すでに『Oracle Database』に格納されており、オラクルがここで重要な役割を果たす」と強調しています。
データを守りながらAIのメリットだけを享受する。その課題に対するオラクルの答えが、「AI Data Platform」です。
「AI Data Platform」は、企業のプライベートデータと強力なAIモデルを連携させ、企業のプライベートデータを安全に保ったまま、AIモデルの推論に利用することを可能にします。
企業データは「頑丈な金庫の中に置かれたまま」で、AIという優秀なコンサルタントが「金庫を開けることなく中身を分析」し、必要な答えだけを提供します。つまり、データそのものを外部に出すことはないため、安全が確保されるのです。
他の大手クラウド企業がAIインフラストラクチャやモデル開発に注力するのに対し、オラクルはAI技術を活用し、ヘルスケア、公共事業などの産業全体、すなわちエコシステム全体の自動化を目指しています。
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AIによる推論を活用した課題解決 |
例えば、ヘルスケア分野では、病院、保険会社、規制当局、患者に至るまで全体を自動化することで、真に効率的なシステムが構築されます。さらに、このAI技術は、早期がん診断の精度向上、病原体の同定(メタゲノム解析)によるパンデミックの早期警戒システム構築、さらには遺伝子工学による食糧増産とCO2削減といった、人類が長年解決できなかった最も困難な問題の解決に貢献しています。
これが、オラクルが描くAIのビジョンです。
ラリー・エリソン氏のビジョンから始まったこの物語は、AIが人命を救う、という最も重要なインパクトに帰結しました。
Oracle AI World 2025は、AIを基盤技術として深く組み込むことで、AIモデルのトレーニング終了後の「推論と問題解決」のフェーズに焦点を当て、企業のプライベートデータを活用しながら、ミッションクリティカルなシステムと社会的な課題の両方を解決していくという、オラクルの明確な方向性を提示しました。
次に、Oracle AI World 2025のハイライトの中から、アシストが注目しているポイントを大きく3つに絞って、お伝えします。
※「【速報】AIがすべてを変える!Oracle AI World 2025 from Las Vegas現地レポート
」の詳細版です。
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Oracle AI World 2025のキーメッセージ「AI changes everything(AIがすべてを変える)」 |
本イベントでは、オラクル社の「AIを中核にした戦略的なアプローチ」を強く感じました。
具体的には、以下の点からその傾向が確認できます。
・AIを中心としたセッション構成
・製品やサービスの名称変更
・AI関連のサービス開発加速
Oracle AI World 2025のハイライト内容からも明らかなように、イベント全体のセッション構成がAIを中心としたものになっていました。また、本イベントにあわせて製品やサービスの名称変更も発表されています。さらに、今後リリースされる各種サービスも、AIを核としたサービス開発に進められており、これはオラクル社の企業戦略の中心にAIを据えるという強いメッセージの現れなのだと思いました。
昨年まではクラウドに関するメッセージが非常に強力でしたが、今後は「クラウドとAI」、この2点がオラクル社の戦略的なメッセージに変わると感じています。
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主要な製品/サービス名称の変更(出典:日本オラクル社「JapanSession-FINAL-ShareV3.pdf」) |
中でも最も印象的だったのは、「Oracle Autonomous AI Lakehouse」の登場です。これは、Autonomous Databaseに特化したデータウェアハウスであった「Oracle Autonomous Data Warehouse」が、データウェアハウスとデータレイク両方の機能を兼ね備えたデータ基盤を提供していく、というメッセージを感じ取ることができました。
アシストの注目ポイント1つ目は、「Oracle AI Data Platform」です。
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Oracle AI Data Platform |
この「Oracle AI Data Platform」は、AIデータベースを基盤とし、企業全体のデータをAI対応させる統合プラットフォームです。データプラットフォームの核となるのは、オープン標準(Apache Icebergなど)に基づいたオープンレイクハウスです。
Oracle Autonomous AI Lakehouseは、Iceberg形式のデータを読み書きできるため、データのベンダー非依存性とOracle Databaseの強力な分析機能を両立させることが可能です。
このプラットフォームは、Oracle Databaseだけでなく、OCI Object Storage、他のデータベース、SaaSアプリケーション(Fusion, NetSuiteなど)からのデータも統合し、AI対応データとして一元的に管理します。これは、より幅広いデータを1つのプラットフォームに統合するというオラクルの強いメッセージの現れだと言えるでしょう。
また、AIエージェントが機密データ漏洩リスクへの対応として、データアクセス権限とプライバシーのルールを、アプリケーション側ではなくデータベース自体に実装し、厳密に適用しています。これにより、テーブル、行、列、セルレベルでのきめ細かなアクセス制御(Real Application Security) が可能になります。
「AI for Business」という観点からも、多くの新機能アナウンスがされています。
現時点においても、様々な機能が今後追加されることが発表されており、「Oracle AI Data Platform」は、非常に注目度の高いサービスになると感じました。
アシストとしても、今後の機能追加の内容や発表されるお客様事例等も踏まえ、しっかりとした取り組みを検討していきたいサービスです。既に国内でも利用可能となっており、データの取り込みなど非常に直感的に操作できるような仕組みは、ユーザーにとって使いやすいサービスであると捉えています。
2つ目は、「Oracle AI Database 26ai」です。
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Oracle AI Database 26aiの発表 |
Oracle Databaseは、「AI for Data(データにAIを)」というビジョンのもと、AIアルゴリズムをカーネル深部に組み込んだAIネイティブな「Oracle AI Database 26ai」 へと進化しました。この26aiでは、AIベクトル検索に加え、データベース管理、データ開発、アプリケーション開発、分析といった領域でのAI活用を実現しています。
特に「Oracle AI Database」では、AI活用で不可欠なデータの一元管理を実現するための機能開発が非常に進んでいます。複数のワークロード、複数のデータタイプ、また複数の操作を単一データベースで実現可能な設計思想に基づき、新機能の実装が速いスピードで進んでいます。今後も「Oracle AI Database」に搭載される機能に関しては、多いに注目していきたいと考えています。
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Oracle Databaseリリーススケジュールとサポート期限 |
「Oracle AI Database 26ai」は長期サポート版として位置付けられており、Premier Support期間は2031年までとなっています。26aiの利用に際しては、2025年10月のリリースアップデートを「Oracle Database 23ai」に適用するだけ(アップグレード等は不要、パッチ適用のみ)で「Oracle AI Database 26ai」の新機能に切り替えが可能です。また、「Oracle AI Database」で使えるAIベクトル検索などのAI機能は、追加費用なしで提供されることが発表されています。
| Oracle AI Database 26aiの主な機能 |
| No. | 機能名 |
|---|---|
| 1. | Oracle Autonomous AI Lakehouse |
| 2. | Unified Hybrid Vector Search |
| 3. | MCP Server Support |
| 4. | Oracle Exadata for AI |
| 5. | Private AI Services Container |
| 6. | AI Database Acceleration with NVIDIA |
| 7. | Data Annotations |
| 8. | Select AI Agent |
| 9. | AI Private Agent Factory |
| 10. | Oracle Database Zero Data Loss Cloud Protect |
| 11. | SQL Firewall |
「Oracle AI Database 26ai」の主な機能の中から、最近特に注目度の高いセキュリティ関連のサービスと新機能をご紹介します。
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セキュリティ攻撃とその対策のためのサービスと新機能(出典:日本オラクル社「JapanSession-FINAL-ShareV3.pdf」) |
1つ目は「Oracle Database Zero Data Loss Cloud Protect」です。
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Oracle Database Zero Data Loss Cloud Protect(出典:日本オラクル社「JapanSession-FINAL-ShareV3.pdf」) |
この機能は、ランサムウェア対策に特化したデータベースバックアップのマネージドサービス「Oracle Database Zero Data Loss Autonomous Recovery Service(以下、ZRCV)」の一部として提供されるもので、オンプレミス環境のOracle Databaseでも利用可能になることが発表されています。
従来、オンプレミス環境で同等レベルのバックアップ対策を実現するには、アプライアンス製品である「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」を導入する必要がありました。その場合、コストや導入期間が課題になる傾向がありましたが、「ZRCV」を活用することで、低コストかつ短期間でのランサムウェア対策が可能になります。
現在、「ZRCV」はOCIにおける標準のバックアップサービスとして位置付けられています。従来型のデータベースバックアップサービスをご利用のお客様においては、是非「ZRCV」の利活用もご検討いただきたいと思います。実際、切り替えに向けたご相談が増えています。
2つ目は「SQL Firewall」です。
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SQL Firewall(出典:日本オラクル社「JapanSession-FINAL-ShareV3.pdf」) |
このSQL Firewallは、「Oracle Database 23ai」で実装されたSQLインジェクション対策機能です。最近、特にお問い合わせが増えている機能のひとつであり、改めてご紹介したいと思います。
本機能は、許可リストに基づき、データベースへのアクセスを特定のSQL文と接続のみに制限することで、SQLインジェクション攻撃や不正アクセスからデータベースをリアルタイムに保護します。高度なセキュリティ対策が求められるシステムにおいては、データベース内部でもファイアウォールを実装することが可能です。
このようにOracle AI Databaseにおいては、AI関連機能だけでなく、セキュリティ関連の機能強化も著しく進んでいます。
昨今のトレンド、発生状況、被害状況等も踏まえ、お客様のセキュリティ対策についても一緒に検討させていただきたいと思います。
アシストの注目ポイント最後の3つ目は、現地にいた誰もが興味をもったであろう「Multicloud Universal Credits」です。
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Multicloud Universal Credits |
「Oracle AI Database」と「OCI」を、お客様が希望するクラウドサービスで「より」利用しやすくなる新たな契約体系が登場しました。これは、マイクロソフトやGoogleとのパートナーシップにより、異なるクラウド環境間でのデータ転送コスト(Egress Fee)を大幅に削減、またはゼロにするため価格体系です。
「Oracle Database@AWS」、「Oracle Database@Azure」、「Oracle Database@Google Cloud」、および「OCI」で利用可能です。
お客様が得られるメリット:
①どこでも利用できる
オラクル社が提供するクラウド(OCI)、他社クラウド(アマゾン ウェブ サービス、Microsoft Azure、Google Cloud)と、あらゆる場所で「同じデータベースサービス」が利用できます。
クラウドサービスごとに異なる制限・制約は発生せず、アーキテクチャや運用も変更不要です。
②どこでも同じ価格
クラウド、オンプレミス、他社クラウドと同じ料金でデータベースサービスが利用ができるようになります。クラウドごとで価格差が発生することなどはありません。
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お客様は、契約手続きの効率化と、クラウド間で一貫した契約の利用が可能になります。これにより、ご希望のリージョンでOracle Databaseを運用できるようになります。
この「Multicloud Universal Credits」は、お客様の要件に合わせて、オンプレミス環境のOracle AI Databaseの移行先(選択肢)を柔軟に選択可能にするものであり、「お客様のためのマルチクラウド」をさらに一歩推し進めた仕組みと言えます。
個人的には今回の発表の中でいちばんの驚きであり、昨年のOracle Cloud World2024でのメッセージ「Open MultiCloud Era(オープンなマルチクラウド時代)」の普及を一気に加速させる原動力になると確信しました。
「Multicloud Universal Credits」の詳細はまだ公開されていません。今後詳細が公開されるにつれて、お客様にとってよりメリットのある内容が出てくることが予想されますので、当社からも積極的にアナウンス、情報発信してまいります。
私たちは今、鉄道や産業革命をも凌駕する、人類史上最も急速に成長し、高い価値を生み出すビジネス、すなわちAIの時代――「AI時代のF1レース」の開幕に立ち会っています。この競争は、単なる技術開発競争に留まらず、インフラ、データ、アプリケーションの全てにおいて、パフォーマンス、コスト、セキュリティの限界を押し広げる、究極の統合戦です。
オラクルはこのレースにおいて、単なるパーツサプライヤーではなく、最高性能のマシンを設計し、世界中のあらゆるトラックで勝利を確実にするための、チームオーナーであり、開発拠点であり、ピットクルーとしての地位を確立しました。
Oracle AI World 2025で示された戦略は明確です。最高性能と安全性を誇るマシン(基盤)であるOCI上に、「Oracle AI Database 26ai」や「Oracle AI Data Platform」というリアルタイムの電子頭脳(Electric brain)をデータ管理の中核として搭載し、「Multicloud Universal Credits」などによりあらゆるレース条件への柔軟性を確保することです。
OpenAIは、OCIが技術の限界を押し広げ、ギガワット級の演算能力を提供可能であることを証明しました。TikTokは、極限のスケールと安定性を追求する姿勢を示し、Marriottは、AIが人間の能力を拡張し、従業員を「情報収集者」から「問題解決者」や「ホスピタリティの専門家」へと進化させる力(Augmenting Individuals)を持つことを示しました。さらにBiofyは、その力が人類の健康という最も崇高な目標に貢献していることを証明しました。
こうした大きな変化期において、当社としてお客様にどのような価値を提供できるか、お客様の声に真摯に耳を傾けてまいります。本日挙げたアシストの注目ポイント含め、新たな選択肢を提供できるよう、今後も深く掘り下げて調査・検討を継続し、ご支援してまいります。
ぜひ、ご期待ください。
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Oracle AI World 2025の様子 |
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Oracle AI World 2025の様子 |
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Oracle AI World 2025の様子 |
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1999年入社後、市ヶ谷本社・札幌営業所にて幅広い製品の営業を経験。豊富な営業経験をいかし、現在はデータベース技術統括部にて全社のデータベース事業を推進する役割を担う。
趣味は「海外旅行」、好きな言葉は「ありがとう」
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■本記事の内容について
本記事に記載されている製品およびサービス、定義及び条件は、特段の記載のない限り本記事執筆時点のものであり、予告なく変更になる可能性があります。あらかじめご了承ください。
■商標に関して
・Oracle®、Java、MySQL及びNetSuiteは、Oracle、その子会社及び関連会社の米国及びその他の国における登録商標です。
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文中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標である場合があります。
Oracle AI Database 26aiでBlockchain TableのV2が実装されました。これは堅牢なガバナンスと開発・運用の柔軟性という相反する課題を両立させるものでありデータガバナンスやセキュリティを向上させます。V2はどのようにアップデートされたのかを動作検証しました。
データベースの環境準備に時間を要していませんか?OCI BaseDBのクローン機能なら、検証環境を30分未満で作成可能です。本記事では、実際の操作手順から開発・テストでの活用法、コストやIP変更などの注意点までを画像付きで徹底解説します。
2025年8月度のOracle Cloud Infrastructureサービスアップデートにて、ExaDB-DとExaDB-XS間でData Guard構成を構築できるようになりました。本記事では実際にこのクロスサービスData Guard構成の検証と検証結果を通してわかったメリットをご紹介します。