- アシストの視点
Bダッシュ委員会 DAO分科会発信
「DAOをビジネスに適用できるか」社内で実証実験
新商材・サービスの発掘・育成に取り組むBダッシュ委員会活動の中で、分散型自律組織(DAO)のビジネス適用の可能性を探り、アシストのビジネスにどう活かせるかを研究する「DAO分科会」についてご紹介します。
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近年、「データ・ディスカバリ」ベンダーの登場により活性化しているビジネス・インテリジェンス市場。企業における「データ・ディスカバリ」ツールの導入も急激に増えつつあり、BIベンダー間のパワー・バランスにも変化が生じているようです。そもそも「データ・ディスカバリ」とは何なのか? 従来のビジネス・インテリジェンスとは何が違うのか? そしてIT部門はどう関わるべきなのか?「データ・ディスカバリ」を紐解くことで、皆様の情報活用の一助になれば幸いです。
皆様は「Data Discovery」(以下、「データ・ディスカバリ」)という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。
「データ・ディスカバリ」は、2010年頃からビジネス・インテリジェンス(BI)分野に新風を吹き込んだ概念です。昨今の目まぐるしく変わる市場環境や、予測困難な外部環境の変化に対応するためには、従来のBIシステムよりも迅速で手軽にデータを分析でき、かつ、ビジネス上の課題を発見できる仕組みが求められてきました。
2013年2月に発表された米ガートナー社によるリサーチ “Magic Quadrant for Business Intelligence and Analytics Platforms”(※)のマジック・クアドラントでは、BI市場におけるベンダー各社が相対的に位置付けられており、最高位である「リーダー」に選出された10社中、3社がデータ・ディスカバリ・ベンダーという結果が出ています。
独自の技術を搭載した「データ・ディスカバリ」ツールを開発しているBIベンダーとしては、Qliktech社、Tableau社、 Tibco Software社などが挙げられますが、既存のBIベンダー各社も買収戦略や新機能開発により「データ・ディスカバリ」機能を実装する動きが活発化してきました。
日本国内においても「データ・ディスカバリ」への関心/評価は年々高まっており、ビジネス・インテリジェンスの潮目は大きく変わり始めています。
“あらゆる角度から『何を見るべきかを「問える」仕組み』”
「データ・ディスカバリ」ツールの特徴を端的に表現するならば、このような言葉がふさわしいと筆者は考えます。
技術的な視点では、ツールによって機能差異は見られるものの、大きく3つの特徴があると言えます。
1. 独自のテクノロジーによる発見のサポート
2. ビジュアライゼーションの進化
3. 大量データに対する高速性の確保
では、既存の従来のBIツールと、「データ・ディスカバリ」ツールを複数の視点から比較してみましょう。(図1参照)
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着目すべきポイントの1つは、IT部門やITベンダーの関与の仕方が大きく異なる、という点です。
昨今、定常業務の遂行に必要なレポートは、導入済みのBIツールや、基幹システムから出力される各種帳票、Excel等のスプレッド・シート等も含めれば、形はどうあれ入手可能なケースがほとんどと言っても過言ではありません。
しかしながら、ユーザ部門は刻々と変わる市場のニーズや外部環境の急激な変化に直面する中で、社内に蓄積された情報を探索することでビジネス上の課題を発見し、アクションに繋げたい、という想いがあります。
IT部門はユーザ部門の想いに応えるべくニーズをヒアリングしますが、このようなケースでは“ユーザ自身、何が見たいかがはっきりしていない”という事態が往々にして発生します。
IT部門としては、“何が見たいかがわからなければ、開発のしようがない”わけですし、ユーザ部門からすれば“何が見たいかがわかっていれば、すでにそうしている”というのが本音ではないでしょうか。
ユーザ部門は「見たいものが見られる仕組み」だけでなく、『何を見るべきかを「問える」仕組み』を求めているのです。そして、このニーズをサポートするのが「データ・ディスカバリ」ツールです。
では「データ・ディスカバリ」ツールは、従来のBIツールに置き換わるのでしょうか?
現時点では、筆者は“NO“だと考えています。理由は、定型/半定型のレポート・ニーズには従来のBIツールがフィットすること、また、 全社レベルの情報共有基盤として、従来のBIツールが引き続き重要な役割を果たしていくと思われるからです。
「データ・ディスカバリ」ツールは、次のような課題に対して適用することをお薦めします。
“ユーザ部門がExcelやAccessを駆使して、膨大な時間をかけてデータ分析をしている”
“ユーザ部門のニーズがはっきりしないが、○○システムのデータを様々な軸で分析したいらしい”
“ユーザ部門が求める納期と既存のBIツールによる実装工数の乖離が大きい”
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図2はITR社による「2013年度に重視するIT戦略上の課題テーマ」です。ITR社が毎年実施している「IT投資動向調査」から、2013年度に重視するIT戦略上の課題テーマとして1位から3位までの選択率および順位から重みづけした重要度の合計ポイントが示されています。
ユーザ部門は、コスト削減や売上の増大を目指して分析を行っています。
その分析ニーズを「データ・ディスカバリ」ツールで支援することは、重みづけ合計ポイント1位の「業務コストの削減」や同3位の「売上増大への直接的な貢献」といった「IT戦略上の課題テーマ」を実現する近道ではないかと筆者は考えます。
さて、「データ・ディスカバリ」ツールを導入する場合、IT部門はどのようにプロジェクトに関わるのが良いのでしょうか。
少々概念的な例えになりますが、IT部門の方々には「BIシステムのプロバイダー」ではなく、「BIシステムのイネーブラー」として関わっていただくのがベターであると筆者は考えます。「BIシステムのイネーブラー」とは、セキュリティ、可監査性、プロビジョニング、データ品質の確保など、専門知識を有するIT部門でなければ担うことのできないミッションをメインとしてBIシステムに関わる、という考え方です。
特にデータ品質の確保については、IT部門による定期的なモニタリングが望ましいと考えます。なぜなら、分析や意思決定は「正しいデータ」に基づいて行われるべきだからです。ある調査によると、ビジネス・パーソンがExcel等のスプレッドシートで作成するレポートや資料には20%~40%の確率で何らかの誤りが含まれているそうです。重要な意思決定を行う際の拠り所となるレポートや資料に誤りがあれば、企業にとって大きな損失になりかねません。
一方で、企業のIT戦略上「データ・ディスカバリ」ツールの導入を外部に委託するケースも想定できます。このような場合は、構築されたBIシステムを自社運用することを想定し、それが「可能」かどうかを導入前に評価していただきたいと思います。自社運用が「可能」なツールなら、初期リリースは知見のあるITベンダーに開発/運用を委託しつつ社内にノウハウを蓄積し、次のフェーズからは自社運用に移行するといったシナリオも検討可能です。
最後になりますが、P.F.ドラッカーは著書『現代の経営』 で次のように記しています。
「戦略的な意思決定では、範囲、複雑さ、重要さがどうであっても、初めから答えを得ようとしてはならない。重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを見つけることである」
「データ・ディスカバリ」ツールを使えば、見つけた「問い」から生じた疑問を新たな「問い」として投げかけ、すぐ結果を得ることにより次の「問い」が生まれるという、いわば『「問い」の連鎖』が発生し、ビジネス上の課題を発見することが可能になります。ユーザの「問い」をドラッカーの言う「正しい問い」に近づけるためには、IT部門が「BIシステムのイネーブラー」として適切に関与することが必要だと言えるのではないでしょうか。
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花井 正樹
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