- アシストの視点
Bダッシュ委員会 DAO分科会発信
「DAOをビジネスに適用できるか」社内で実証実験
新商材・サービスの発掘・育成に取り組むBダッシュ委員会活動の中で、分散型自律組織(DAO)のビジネス適用の可能性を探り、アシストのビジネスにどう活かせるかを研究する「DAO分科会」についてご紹介します。
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昨今、新たなテクノロジーを活用してビジネスモデルを創出する期待感が、数年前まで予想しなかったほどの高まりをみせています。具体的なテクノロジーとしてはクラウドやモバイル、ビッグデータ、IoT、人工知能が挙げられます。「守りのIT投資先」と言われ続けた運用部門でも、変革するビジネスへの追随や事業貢献に向けた新たな取り組みが求められています。本稿では、ITSMを担う運用部門での「人工知能(AI)」の活用と、同部門が持つ「情報(運用データ)」に焦点を当てます。
ハードウェアの処理性能の飛躍的な向上と分析アルゴリズムの長年の研究はAIに大きな発展をもたらしました。AIは自己学習機能を持った「機械学習」から、大量のデータを基に自動的に特徴を掴みとる「深層学習」へと進化し続けています。
AIに対する各業界の具体的な取り組みとしては、メディアで頻繁に取り上げられている自動車産業の自動運転への積極的な投資やITベンダーの参画があります。身近な例では、運送業界においてコンシューマーからの集荷や再配達の問い合わせ対応にSNSとチャットボットと呼ばれる擬人化されたプログラムが活用されるなど、人手を介さず、かつインタラクティブな取り組みも進んでいます。
AIはITサービスの品質担保に活用できるのでしょうか。弊社とお付き合いのある運用部門のお客様でも、これまでのような「改善活動」や「自動化」の取り組みとあわせて、AI活用の検討を始められています。
お客様からお聞きした運用部門におけるAI活用のテーマは主に次の3点です。
(AI活用のテーマ)
今回、アシストでは、上記の三つのテーマのうち「トラブル解決の支援」を題材に「機械学習」を活用した実機検証を行いました。「トラブル解決の支援」を選定した理由は、アシストが提供するサポートセンターのサービスレベル向上に活用できるのではないかと考えたためです。
また、従来からある単純なキーワード検索の仕組みが、AI活用によってより使いやすいものになるのではないかという期待もありました。
検証にあたっては、コールセンターでの採用実績も増えつつあるAIサービス「IBM Watson」とコミュニケーションツール「Slack」、そして、オープンソースのノンプログラミング高速開発ツール「Node-Red」を利用しました。検証の目的は「製品マニュアルなどで公開されている“情報知”と、運用部門で蓄積したノウハウにあたる“経験知”を活用して、運用担当者のトラブル対応をいかに支援できるか」と定義しました。
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検証環境は図2に記載の仕組みです。IBM Watsonが提供するAIサービスのうち今回は二つのサービスを利用しました。一つは自然言語の分類を支援する「Natural Language Classifier」、もう一つは機械学習の機能を持ち、ランキング検索を支援する「Retrieve&Rank」です。これらのサービスを利用し自然言語での問い合わせをAIで回答させます。さらに無料の雑談会話型AIサービスを利用してチャットボットにインタラクティブさ(人らしさ)を持たせる仕組みにしました。
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この「トラブル解決支援」の仕組みの利用者には、弊社サポートセンターのJP1担当者を想定しました。そのため、IBM Watsonに取り込んだデータは、担当者がトラブル時に参照する頻度の高い「JP1」が出力する膨大なメッセージコード(製品マニュアルに記載)と、弊社がお客様に提供しているJP1に関するFAQとしました。
いよいよ完成した「トラブル解決支援」の仕組みの検証です。図3のように、まずSlack上でJP1に関する質問を自然文で入力します。すると、裏側ではIBM Watsonが文章を分解し、問い合わせ文に含まれる要素をクラス分けして検索します。こうして検索結果の中から最もランキングの高い回答をSlack上でチャットボットに応答させることができました。また、雑談会話のAIサービスを組み込んだことで、システマティックなやり取りではなく、「おつかれさま」などの気軽な挨拶に対してもチャットボットが「今日は遅かったね」と応答します。あたかも生身の人間とやり取りをしているかのようなインタラクティブさを持たせることができました。
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この「トラブル解決支援」の仕組み作りにかかった期間は、AIの勉強をいちから始めた上で構想までに約2ヵ月、仕組み作りに約1週間でした。通常業務も並行して行っていましたが、想定よりかなり短い期間で構築ができました。かかった費用はIBM Watsonの利用料の数万円です。ノウハウやテクノロジーが入手しやすい時代とはいえ、AIがこれほど簡易に活用できることには驚きました。
IBM Watsonでは、今回使ったAIサービスの他に、「音声からのテキスト変換」や「テキストからの音声変換」、一問一答ではなく「前後の会話の流れを解釈した応答」など様々なサービスが提供されています。また、IBM Watson以外にも国内外の各ベンダーから各種AIサービスが提供されています。
今後、これらのAIサービスを組み合わせた仕組み作りにも挑戦していきたいと考えています。例えば、お客様からサポートセンターへ電話でいただいた問い合わせを自動的にテキストに変換しチケットとして登録。そして、事前に学習した過去のノウハウに検索をかけ、サポート担当者へ回答案を自動的にメールで送付するといった機能を構想しています。今回の検証に留まらず、各社のサービスカタログからアイデアを広げ、「トラブル解決の支援」に挑戦していきます。
「トラブル解決支援」の仕組みを、運用部門の実業務へ適用する場合、注意すべきポイントが二つあります。一つは、「機械学習」はその元となるデータがあってこそ実用性が上がること、もう一つは「機械学習」が出す答えはあくまでもリコメンドであり最終的には人の判断が必要であるということです。
今回、検証で取り込んだデータ以外にも、運用部門が管理しているデータ(運用データ)としては次の例が挙げられます。
(運用データの例)
運用部門としては、これらの運用データを収集する基盤作りをしっかり行い、「機械学習」に継続的に取り込ませてチューニングしていくことが重要です。なぜなら、回答の精度が上がることはもちろん、担当者がトラブルを調査する際に、必要な情報を幅広くAIに回答させることができるようになるからです。
調査に必要な情報の例としては「トラブル時のサーバの性能はどうだったのか」、「実行されていたバッチ処理は何か」、「トラブル前後でシステム変更などの作業はなかったのか」、「過去に同じトラブルはないか」などがあります。運用データの継続的な取り込みとチューニングにより、こういった情報まで回答できる「トラブル解決支援」の仕組みに成長させていくことができます。
冒頭で挙げた「運用部門のAI活用」の二つ目のテーマである予防保全を目的とする「予兆検知」にも触れておきたいと思います。
テクノロジーの面では、「いつもと違う」を検知する外れ値検知手法などの学術的な研究や、フレームワークの開発が活発に行われています。データに必ず存在する「異常」を検知することは運用部門の普遍的な課題でもあり、「予兆検知」のテクノロジーは今後に期待したい分野です。従来は、システムの「異常」を検知するためには閾値での警告という手法しかありませんでした。しかし、段階的に閾値を調整するなどの工夫をしても誤検知や検知漏れがなくならないというお客様の声をよく聞きます。AIの活用がその解決の一手となり得るのではないかと期待しています。
過去にも「予兆検知」への取り組みやソフトウェアの提供がしばしば行われてきましたが、二つの大きなハードルがありました。一つは複雑なシステム構成のモデル化です。もう一つは企業や業務ごとに異なる時間軸での挙動の照らし合わせ(締日や臨時処理、繁忙期など)です。この二つのハードルを解消できる答えは現時点で確立できていません。しかし、今後のAIの発達によって、ネットワークを流れる情報や運用部門が蓄積した運用データを基にシステム構成をモデル化でき、各企業やビジネス部門の業務に沿った「定常状態」のモデル化が自動でできる時代も現実味を帯びてきているのではないでしょうか。
最近では、ベンダー各社でAIに関する体験型の無償セミナーが多く開催されています。「運用部門のAI活用」の三つ目のテーマである「障害検知後の自動対処」を解決するセミナーも増えつつあるようです。例えば、バックオフィス業務で検討や導入が先行しているAIを活用した自動化の仕組みであるRPA(Robotic Process Automation)のセミナーがあります。
是非、こういったセミナーにも足を運び、自部門でAIを活用する方法や未来像を模索してみてはいかがでしょう。
今回ご紹介しました検証の結果と、各社が提供するAIサービスの状況や採用事例から、運用部門でのAI活用は1~2年後には大きな転換期を迎えることが予測されます。運用部門では抱え過ぎた業務をAIへ委譲し、確保した人的リソースや時間、予算で新たなビジネス貢献の役割を担っていくことになります。
「超サポ」をスローガンに掲げるアシストもお客様と「変革(トランスフォーメーション)」への道筋を見つけるために、一緒に歩んでまいります。
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中嶋 優
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最後までご覧いただきありがとうございました。
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