
株式会社アシスト 代表取締役会長
ビル・トッテン
家庭菜園を始めて10年以上になります。自分で野菜や果物を作るようになると、環境や食料問題を考えて肉食を控えていた時期もありましたが、鶏を飼い始めてからはベジタリアンはあきらめました。生みたての卵や鶏肉がとても美味しかったからです。
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次に思いついたのがウサギ肉でした。私は南カリフォルニアで生まれ育ち、近くに祖父母と叔父夫婦が住んでいて、叔父は食用ウサギを飼育していました。祖父母の家にいくと叔父がウサギ料理を食べさせてくれたのです。ウサギは、私が雑草扱いしている庭のオオバコやクローバーがエサになりますし、糞は堆肥になるのでいいことづくめです。友人からは、ウサギを1羽、2羽と数えるのも、獣ではなく鳥として、日本では古くから食べる習慣があったからだとききました。
ペットではないウサギはなかなか見つかりませんでしたが、ある時、秋田県大仙市で食用ウサギ「秋田ジャンボウサギ」のサイズや毛並みを競う品評会があることを知り、それにあわせて秋田を訪問してジャンボウサギを手に入れ、飼い始めました。ウサギは繁殖力が強く、一度に数匹、多いときには10匹以上出産すると聞いていましたが、実際に飼ってみると繁殖は容易でないし、足に炎症をおこすウサギがでてきました。
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試行錯誤している時、秋田ジャンボウサギを維持・普及させようと、「全国ウサギネットワーク」を香川大学農学部の川崎淨教先生が中心となって設立されたことを知りました。川崎先生は動物栄養学が専門です。最近日本ではアレルギーが増えていて牛や豚でアレルギーになる人も多く、そうなると鶏肉位しか日本では入手できません。しかし、鶏肉ばかり食べていると今度は鶏肉のアレルギーにもなりやすいらしく、肉の種類を色々変えて対策する必要があり、そんな中でアレルギーを引き起こしにくいのがウサギの肉なのだそうです。またウサギは基本、抗生物質等の薬剤を必要としないので、自然と薬剤フリーの食肉生産が可能になるため、食の安全性や多様性という点からもウサギの研究をされています。私はウサギ肉の高たんぱく、低脂肪という利点に惹かれていましたが、ぜひ先生にお話をききたいと思い、3月に、香川大学農学部の附属農場へ川崎先生をお尋ねしました。
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桃やブドウ畑を越えた丘の上の兎小屋にたくさんのウサギが飼われていました。足の炎症について相談すると、先生も研究をされているところで、体重があるのでケージの床面がたわみ、脚に何かしらの負荷がかかりやすくなっているのではとのこと。たしかに炎症のあるウサギをケージからだして床の上に置いたら足がよくなったウサギもいました。先生やウサギに詳しい職員の方のアドバイスに従い、これからはエサを減らして減量させることにしました。そしてせっかく農場へきたのですから、ウサギをオスとメス2匹ずつ買って帰りました。
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わたしがウサギ肉を食べるというと、 「可愛いくて賢いウサギを食べるなんて」と言われます。でもそういう人も誰かがさばいた牛や豚は食べています。食べ物ではなく「生き物」としてみるとどの動物も愛しく、何を食べて何を食べないかは自分で決めるしかないのです。ウサギを自分で育て、さばき、食べることは、大量生産、大量消費、大量廃棄社会への私の小さな抵抗かもしれませんが、草を食べてゆったり育ったウサギ肉は美味しくて健康に良いに違いありません。