テックノート

  • ルールベースAI/BRMS
2020.04.14

10分で理解する「ルールベースAI」。今求められるAIとは?

10分で理解する「ルールベースAI」。今求められるAIとは?

人が考える業務の自動化/効率化や新たな知見の導出を実現するテクノロジーとして「AI( Artificial Intelligenceの略、人工知能 )」が注目を集めて久しいですが、その歴史は意外に古く、民間企業や自治体では研究分野より派生した商用製品の導入がかなり進んでいます。しかし、AIは様々で、機械学習や特化型AI、また、RPAとAIの明確な使い分けもまたわかりづらいのではないでしょうか。本稿では、「ルールベースAI」に焦点をあて、「ルールベースAIとは何か」から活用事例、導入における課題までを分かりやすく解説していきます。



ルールベースAIは、既知の事項をAI化する技術


企業では、日々様々な人による「知的判断」と「意思決定」がなされています。一例を挙げれば、複数のExcelファイルの情報を目検で確認し、一つのファイルに加工する作業や、何らかの申請受理業務において、受付内容の不備を目検でチェックし、問題がなければ次工程に進める作業といったように、どの業務にも人の判断と意思決定を要する作業が存在します。

ものづくりの分野では、その道の達人と呼ばれるような職人が手工業で行ってきた工程は、ハードウェア(機械)による自動化で、全体的な生産性は飛躍的に向上しました。しかし、人による判断が必要な作業の自動化はなかなか難しいものがあります。

昨今、企業のデジタルトランスメーション(DX)に欠かせない手段として注目されているのが「ルールベースで作るAI」で、このルールベースAIをプログラミングではなくノーコードで製造できるツールは20年前より製品化されていることをご存じでしょうか?これらのツールは第2次人工知能研究より生まれたもので、ハードウェアによる自動化だけでは補えない、人の判断と意思決定を要する作業をも自動化しようという、いわば、ホワイトワーカーの知的作業を代行するための「事務用ロボット」を簡単に製造するために世界中で利用されています。

企業内の定型的で反復性の高い知的判断業務にルールベースAIを活用できれば、部分的には自動化できていた一連の作業がすべて自動化され、全体的な生産性向上に大きく貢献します。

(関連記事)
業務に「AI」を適用するコツと視点


ルールベースAIの得意分野、不得意分野


AIと言えどももちろん万能ではありません。また、AIと名の付くソリューションが数多く乱立していますが、その中身はルールベースで構築されたものか機械学習型の2種類しかなく、それぞれ得意分野と不得意分野があります。ルールベースAIの適用範囲は「ルール化された知的作業」の自動化が中心です。例えば「2つのデータのメールアドレスが同一ならば重複とみなし、統合する」と人がAIに教育(定義)すれば、その通りに分類してくれる、つまり、命令に100%忠実なコピーロボットです。では、例外が発生した場合はどうなるのでしょうか。近年の商用ルールベースAI製造製品はとても進化しており、ルールベースAIに知識を定義するときに、知識の論理矛盾や欠損があればツール内の推論機能が自動でそれを検出し、「先生!正しく教えてください」と、人の思考の甘さを正してくれるので、その心配がありません。

ちなみに、大量の画像を自立学習し、「写真の中にネコがいる」と判定するようなAIはルールベースでの実装は難易度が高いもので、このような案件は機械学習ですべきことです。(機械学習系AIとの違いについては後述を参照してください)。

それではルールベースAIの代表的な長所と短所を以下に挙げます。

【長所】

  • 案件によりますが、機械学習型AIと比較して実用化(業務自動化)までのスピードが圧倒的に速い
  • 人が人を育てるように、人がAIを教育
  • 低コスト

【短所】

  • 自立学習をせず、人がAIに全て教える
  • 形式知でなければAIに教育できない
  • 教育されていない事柄は判断も意思決定もできない

ルールベースAIの成長は、「赤子」から「大人」になっていく人の成長と似ています。人も生まれたばかりの時は何もできず、幼少期は親に教えられた通りに動き、教えを守らない場合はしつけられて成長していきます。企業活動も同様で、新入社員は先輩社員に業務の処理ルールを教えられ、例外が発生したら、先輩社員やその上長の指示に従うことで業務ルールを覚えていきます。このように、企業活動は「ルール化」の繰り返しにより成り立っているため、ルールベースAIは企業の知的判断の自動化に向いていると言えます。


ルールベースAIとRPAやプログラミングは何が違うのか?


昨今業務自動化といえば、真っ先に思い浮かぶのは「RPA」でしょうか。RPAはRobotics Process Automationの略語であり、ロボットでプロセスを自動化する取り組みのことですが、広い意味ではAIもRPAの取り組みの一つといえます。「RPA」と聞くと、一般的にパソコン上の「操作」を自動化するソフトウェアロボットをイメージされるかと思いますが、その自動化の軸は「手作業」にあります。それに対し、ルールベースAIは判断を伴う複雑な加工やデータのチェック処理などが得意であり、その自動化の軸は「考える作業」にあります。

RPAや機械学習と商用製品で作るルールベースAIの大きな違いは、知識実装をどうするか、つまり「プログラミング」の有無にあります。RPAや機械学習で判断部分(ただし定型に限る)を内部に実装するには、その仕組み特有の言語でプログラミングが必要となり、プログラミング言語を熟知した専門家の領域になります。例えばExcelのマクロですら処理手順を構造化し、 Excelの言語を用いて命令を記述します。RPAツールも機械学習における出力結果に対する判断も、また、プログラミングで作るルールベースAIもこれと差異はありません。

これに対して商用製品で作るルールベースAIは、基本的にプログラミングという概念がなく、当然のことながらプログラミングも行いません。複雑なプログラミングを学ぶ必要はなく、一般的にGUIより語彙を用いて自動化したい判断を「宣言」するだけでよいのです。

よく、ルールベースのAIはエンジニアが製造する単なるif then else文で構築されたシステムと何が違うのでしょうか?と言われることがあります。この境界線はなかなか難しいものがありますが、所謂手組の**システムというものはモノリシックで構築され、入力と出力はそのシステム内で固定れたものですが、例えば弊社の商用製品の場合、大量の知識をあたかも大福帳のようにストアし、それを一つの知能として稼働させれば、様々なシステムからの入力を知りうる知識の中より検索し、知識の関連性を内部の「推論エンジン」が検証。最適な解を探してくる。このような利用ができます。


インテリジェント・オートメーションの実現に向け、ルールベースAIの活用が進む


DXを見据えた「インテリジェント・オートメーション」、すなわち判断と意思決定の自動化に取り組むべく、ルールベースAIを導入した企業は弊社で取り扱う商用製品だけでも500社を上回ります。企業や官公庁でルールベースAIの導入が進む背景には、厚生労働省が推進する「働き方改革」があります。この定義の中には、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、 「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、 投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です」とあり、実現には労働生産性の向上を要するのです。

つまり、人口減少が進む社会でもサービスレベルを下げることなく、現状と同様のアウトプットを出し続けなければ成しえません。具体的には、アウトプットにたどり着くまでに必要な単純な事務作業から解放し、より価値のある業務に注力させること、および、熟練社員の知見をそのままAIに蓄積し、その作業を代替させ、経験によらずに誰もが同じレベルのアウトプットの出力が求められています。
この推進に最も適している技術がルールベースAIであり、活用が加速度的に進んでいることも頷けます。

ルールベースAI導入効果

KDDI
・対象業務の一連の業務プロセスを自動化でき、RPAツール以上の業務効率化を実現
・AEDANを適用した業務では工数を3分の1以下に削減、人為的なミスも撲滅
・ベテラン担当者のスキル・ノウハウを可視化、共有化でき、組織の財産として継承

トーア再保険
・専門知識の浅い事務担当者にもルールに基づく査定業務が可能となり、査定者の負荷が軽減
・査定者が査定以外の業務にも注力できるようになったことで、顧客支援という新たな企業価値を創出
・査定業務の効率化に加え、ノウハウの蓄積/共有/査定品質の均一化にも寄与

(関連記事)
KDDI事例:RPAの領域を大幅に拡大!複雑な判断や作業のつなぎまでも含めた自動化で業務スタイルを変革
トーア再保険事例:生命再保険引受における97%の疾患をルール化


ルールベースAIの導入、普及のボトルネックとは?


弊社での調査結果によると、企業や自治体における商用ルールベースAIの導入における課題は以下の通りです。

1)適用業務が不明
2)導入効果が不明
3)現場の理解不足(自分の業務がなくなる不安)
4)AIに対する理解不足(機械学習だけがAIであると誤った認識をしている)
5)ITとビジネスの両方を理解できる人材が不足

例えば情報システム部門の場合、一般的にシステムのことはもちろん理解をしているが、意外に自社の現場業務を知らず、適用業務が不明瞭となるケースが最も多く、また、IT技術者であれば「AIとは機械学習のことである」と誤った認識を持たれるケースも多いのです。さらに、AIに関するセンセーショナルな記事をそのまま鵜呑みにし、AIに自分の仕事が奪われる恐怖心より、AIそのものに拒絶反応を持つケースも少なからず存在します。

また、ルールベースAIを導入しても効果が得られないのは、主に以下のケースです。

1)そもそも業務が属人化しており、明確で公開された業務ルールが無い、または整理されていなかった
2)誰が見ても中身が理解できないような製品を選択してしまった
3)コスト重視で、機能不足の製品を選択してしまった
4)自社で構築と保守ができず、結局SIerに丸投げせざるを得ないような製品を選択してしまった

AIには学習が必要であり、何らかの手段でAIに知識を与えなければなりません。しかし、与える知識や学習させるためのデータがなければAIは作れません。

さらに、AIと言えども結局は「ITシステム」です。いくらその活用にバラ色の未来が描けようとも、避けて通れないのは「AIの運用」です。特に、ユーザー部門では製品検討時にこの「運用」フェーズの議論が疎かにされがちですが、一番重要なのはこの運用フェーズで、AIを育て続けるための製品機能とその体制で未来が決まると言っても過言ではありません。


ルールベースAIは、自社ノウハウの収容庫である


多くのAI製品は使いこなしにノウハウが必要だったり、高額なコストが必要となるため、AIに対し、「未だハードルが高い」と感じている企業や人が多いことは確かです。

しかし、弊社の商用ツールを活用すればその心配は無用で、導入と運用にさほど高度なITスキルは必要ありません。むしろ、恒久的に保守をし続けられるように業務をモデル化する論理的思考力です。前述に挙げた導入事例はいわゆるユーザー部門の活用事例です。これらは高度なITスキルがなくてもルールベースAIを自ら作り上げられることを証明しています。

ルールベースAIに蓄積されてゆく知識は企業の財産であり、その知識は継続的に、永続的に高まってゆきます。
ぜひ多くの企業にルールベースAIを活用した業務改革にチャレンジし、その可能性を感じて欲しいと願っています。



執筆者のご紹介

アシスト中尾 有揮

中尾 有揮
DX推進技術本部

1994年中途入社。 システム運用やセキュリティ、仮想化など、10を超えるメーカー製品のグループマネージャ、新規事業開発マネージャを経て、現在「AIのアシスト」を実現すべく事業戦略とマーケティングに従事。言語学、数学、認知心理学を組み合わせ、日々世間と戦う漢語の教師。 Progress認定ビジネスアナリスト、人工知能学会 会員。

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