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OCIでGPUインスタンスを構築してみた
OCIで提供されている生成AIサービスとGPUインスタンスを前回の記事「生成AIにGPUが適している理由」で紹介しました。本記事では、GPUインスタンスをデプロイして、インスタンス上でLLM(大規模言語モデル)の動作環境を構築する方法をご紹介します。
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2023年9月、Oracle CloudのPaaSサービスであるOracle Base Database Service(以下、BaseDB) から、「23c」が先行リリースされました。そして2024年5月2日、23シリーズのバージョン名称が「23ai」になりました。19cの次にリリースされたLong Term Release(長期リリース)のため、今後バージョンアップをご検討の方は23aiを採用するかどうか、迷う方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、23aiで非推奨になった機能や廃止された機能の中から代表的なものをご紹介します。代替案がある場合には、その対処策も交えてお届けします。
Index
Oracle Database 23aiは オラクル社の定めるライフタイム・サポート・ポリシー上では「Long Term Release」 に該当するバージョンです。Premier Support期間が長いリリースのため、長期利用を考える環境などで採用されるタイプのリリースバージョンです。
Long Term Releaseに関しては、下記のブログも併せてご参照ください。
【参考ブログ】
Oracle 21c以降のバージョンアップで押さえておくべき仕様情報を現場経験者が語る!
https://www.ashisuto.co.jp/db_blog/article/oracledatabase-21c-spec-changes.html
Oracle Database 23aiのPremier Support期間は「2029年4月まで」とされています。一つ前のLong Term ReleaseであるOracle Database 19cのPremier Support期間は「2024年4月まで」ですが、本来は有償であるExtended Supportが無償(追加費用無し)で受けられるという特別措置により実質「2026年4月30日まで」となっています。
最新の情報(※)はアシストの担当営業まで直接お問い合わせください。サポート契約をお持ちの方は、My Oracle Supportの「Doc ID 742060.1」も併せてご参照ください。
上記のMy Oracle Supportのドキュメントでは、OSごとのリリース状況を調べることができます。ただし、Oracle CloudのPaaSサービスであるBaseDBの場合、特定のエディションや機能のリリース状況までは把握することができません。
Oracle CloudのBaseDBに関する23aiのリリース情報は、下記のマニュアルから確認が可能です。クラウド環境の利用をご検討中の方は、マニュアル情報もご参照ください。
参考:
About Oracle Base Database Service - Supported Database Editions
https://docs.oracle.com/en/cloud/paas/base-database/about/index.html#articletitle
(オラクル社サイトに移動します)
Oracle CloudのBaseDB の Enterprise Edition(以下、EE)以上のエディションではOracle Real Application Testing(以下、RAT)の機能も利用することが可能です。RATを使うとSQLの非互換調査ができるため、利用したい環境の23ai モジュールがまだ公開前の状態でも、バージョン差によるSQLの差異や修正が必要な箇所を事前に把握することができます。
アシストでは Oracle Cloud上のRATで検証を行うための環境構築からSQL非互換調査までを一貫してご支援することも可能です。ご希望の場合はアシストの担当営業までお声がけください。
23aiにバージョンアップをする場合、23aiで非推奨または廃止になった機能を押さえておく必要があります。また、Innovation Release(革新リリース)である21cでの非推奨および廃止機能も併せて確認が必要です。21cで廃止になった機能は、23aiでも廃止されているためです。
ここからは、主要なものをピックアップしてご紹介します。
非推奨と廃止の違いは、簡単に表現すると下記のとおりです。
非推奨だからといって、該当機能が使えなくなるわけではありません。サポートが受けられないわけでもありません。ただし、今後廃止される可能性があるため、バージョンアップ時には該当機能を使うかどうかの検討が必要です。
非推奨 | 提供はされているが、今後提供されなくなる可能性がある機能 |
廃止(または非サポート) | 提供されなくなった機能 |
21c時点で廃止された機能は、23aiでも廃止されています。主なものは下記のとおりです。
・非マルチテナント構成のデータベース作成
・自動ストレージ管理クラスターファイルシステム(Oracle ACFS)(Microsoft Windows)
・暗号化ツールキット(DBMS_CRYPTO_TOOLKIT)
・初期化パラメータのうち21cで非サポートになったもの
・Oracle ACFS関連機能(一部)
・Oracle Fail Safe(OFS)
23aiで廃止された機能の詳細は「
データベース・アップグレードガイド 23ai
」(オラクル社サイトに移動します)で確認できます。主なものは下記のとおりです。
・Oracle Client 32bit版の提供
・従来型監査
・古い暗号化アルゴリズム、および関連機能
・DBUAおよび手動アップグレード(catctl.pl、dbupgradeなど)
Oracle Client 32bit版のモジュール提供そのものが、23aiから正式に廃止されました。32bit版のアプリケーションの場合はOracle Clientのモジュールも32bit版を利用しているケースが多いかと思います。Oracle Client 23aiが64bit版の提供のみになったため、アプリケーションそのものも見直す必要性も高まった、とも言えるでしょう。
32bit版のアプリケーションを利用したシステムで23aiのデータベースを使いたいという場合、Oracle Client 19cの32bit版を利用すれば 23aiのデータベースへ接続することは可能です。
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クライアントとサーバー間の接続マトリクスの詳細はMy Oracle Supportの「Doc ID:2127402.1」も併せてご参照ください。
23aiのさらに次のデータベースでは、19cからの接続が動作保証されるかどうかは現時点では未定です。筆者の個人的な感覚では、おそらく廃止されるのではと予想しています。
23aiにデータベースをバージョンアップしたいけれど、クライアント側の64bit化が間に合わないという場合、19cの32bit版クライアントでまずは乗り切れるでしょう。ただし、今後に備えて下記の情報は事前に把握しておくことをお勧めします。
・32bitアプリケーションのご利用状況
・Oracle Client(32bit版)の現在の導入先
(クライアント端末か、APサーバーなのか、など)
・Oracle Client(32bit版)の現在の導入台数
・Oracle Client(32bit版)の現在の導入バージョン(19c かどうか)
・・・など
Oracle Database 23aiからは従来型の監査方式が廃止され、統合監査のみとなりました。従来型の監査方式を既に採用している場合、統合監査への置き換えが必要です。
従来の監査型と統合監査の主な違いは下記のとおりです。統合監査の場合、監査データはSYSAUX表領域に格納されます。旧バージョンからバージョンアップをする際は、データベースの物理設計(SYSAUX表領域のサイズなど)も既存踏襲は避け、監査データが格納されることも考慮することをお勧めします。
従来型監査(9i - ※23ai以降廃止)
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統合監査(12c-)
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対応バージョン
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9i~(23ai以降は廃止)
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12c~
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監査条件
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指定不可
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指定可能
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初期化パラメータ
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AUDIT_TRAIL の設定が必要
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なし
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監査の設定方法
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AUDIT文で監査内容を設定
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ポリシーを設定
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監査証跡
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・SUS_AUD$ 表、SYS_FGA_LOGS$ 表
・OS 監査レコードファイル(*)
・DB 監査レコードファイル(*)
(*) OS上にファイル出力。一部の情報はWindowsはイベントログにも出力あり
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SYSAUX表領域内に一元管理(*)
(AUDSYS.UNIFIED_AUDIT_TRAIL) |
DB以外の監査
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不可
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・Database Vault
・RMAN
・Data Pump
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23aiではセキュリティ機能がさらに強化されています。下記のグラフは2023年6月頃のFree版マニュアルの情報を基に、各カテゴリごとの新機能数を数えて割合を調べたものです。
このグラフを見ても、AI対応に絡む更新が多かったApplication Developに続き、セキュリティ関連の新機能は2番目に多いことが分かります。
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セキュリティ関連の新機能や仕様変更の傾向を見てみると「古いアルゴリズムの排除」に伴うものが多く見られます。主に下記が挙げられます。
・透過的データ暗号化(TDE)公開キー基盤(PKI)キー
・GOSTおよびSEEDアルゴリズムの透過的データ暗号化(TDE) 暗号化ライブラリ
・ENCRYPTION_WALLET_LOCATION パラメータ
・ADD_SSLV3_TO_DEFAULT SQLNET.ORAパラメータ(およびSSLv3)のサポート終了
Oracle Database 23ai以前のバージョンから Advanced Security Option(ASO)を利用している場合、現在のアルゴリズムのご利用状況等をご確認ください。Oracle Database 23aiにバージョンアップをする際、一部の機能や設定の置き換えが必要になる場合があります。
変更が必要な個所の代替案や変更手法の詳細は、アップグレードガイドなどの各種マニュアルをご参照ください。
Oracle Database 23aiから、DBUAや手動アップグレード(catctl.pl、dbupgradeなど)のサポートは終了しています。
Oracle Database 23aiに直接アップグレードが可能なLong Term Releaseは、Oracle Database 19cです。今後は同一筐体内でOracle Database 19cを23aiへアップグレードをしたい場合には、DBUAの代わりに「AutoUpgrade」を利用します。
19cよりも古いバージョンから同一筐体内でアップグレードをしたい場合、19cにアップグレードした後に23aiにアップグレードします。複数バージョンのモジュール導入が必要なため、ディスク容量に余裕があるかどうかを事前にご確認ください。ご利用中のOSがバージョンアップしたいOracle新バージョンに対応していない場合は、OSのバージョンアップ手順なども計画が必要です。
特に本番環境の場合、万が一切り戻しをすることになる事態に備えておくことを考えると、アップグレード前にバックアップを取得するなどの対策もしておきたいところです。
別の筐体にリプレースするタイミングで23aiにバージョンアップをする場合、Data Pumpを利用したExport/Importや、PDBを移動する手法などをご検討ください。
主に下記があります。
・Oracle Enterprise Manager Database Express(EM Express)のサポート終了
・従来のExportコマンドのサポート終了
・Oracle Grid Infrastructure 構成ウィザードツール(config.sh)のサポート終了
EM Expressの代替案としては Enterprise Manager Cloud Control(EMCC)があります。EMCCは引き続き提供されています。
従来のImportコマンドは引き続き提供されています。Data Pumpのない古いバージョンのデータもOracle Database 23aiにImportすることは可能です。旧バージョンからの移行手法にお困りの方は、アシストまでご相談ください。
また、上記以外にもOracle Database 21c時点で廃止のものは、Oracle Database 23aiでも廃止されています。廃止された機能の具体的な代替案などは、都度アップグレードガイドも併せてご参考ください。
23aiで非推奨になった機能には、主に下記があります。
・Oracle Persistent Memory(PMEM)
・Oracle Advanced Cluster File System(ACFS)のACFS圧縮機能
・ENCRYPT_NEW_TABLESPACES
・MY_WALLET_DIRECTORY 接続文字列
Intel社がOptane Persistent Memoryハードウェアの製造を中止したことに伴い、Oracle Database 23aiの利用環境では非推奨になりました。IAサーバのHW構成をご検討の際には、利用したいOracle Databaseバージョンとの組み合わせとこの非推奨事項も考慮した上で、選定する必要があります。
なお、2024年1月には、最新のExadata X10Mが登場しました。Exadata X10MからはPMEMに代わる「XRMEM」が利用できるようになっています。Exadata X10Mに関するHW構成の詳細は、下記の記事も併せてご参照ください。
【参考ブログ】
・Exadata最新モデル「X10M」登場!圧倒的な拡張性を備えたOracle Databaseプラットフォームを徹底解説!
https://www.ashisuto.co.jp/db_blog/article/exadata-x10m.html
主に下記があります。詳細はアップグレードガイドをご参照ください。
・Oracle Advanced Cluster File System(ACFS)のACFS圧縮機能
・ENCRYPT_NEW_TABLESPACES
・MY_WALLET_DIRECTORY 接続文字列
Oracle Database 23aiからの仕様変更の大部分は、Oracle Database 21cの仕様変更の影響が大きい印象です。本項では21c時点では未発表だった仕様変更を紹介します。
・DBMS_RESULT_CACHE関数名の変更
Enterprise Editionで利用可能な「リザルトキャッシュ」に関する関数の名称が変更されています。詳細は下記に記載します。変更前の名称を指定している場合、23aiでは関数名の変更作業が必要です。ご注意ください。
変更前(21c以前) | 変更後(23ai-) |
---|---|
BLACK_LISTファンクション | BLOCK_LISTファンクション |
BLACK_LIST_ADDプロシージャ | BLOCK_LIST_ADDプロシージャ |
BLACK_LIST_CLEARプロシージャ | BLOCK_LIST_CLEARプロシージャ |
BLACK_LIST_REMOVEプロシージャ | BLOCK_LIST_REMOVEプロシージャ |
OBJECT_BLACK_LISTファンクション | OBJECT_BLOCK_LISTファンクション |
OBJECT_BLACK_LIST_ADDプロシージャ | OBJECT_BLOCK_LIST_ADDプロシージャ |
OBJECT_BLACK_LIST_CLEARプロシージャ | OBJECT_BLOCK LIST_CLEARプロシージャ |
OBJECT_BLACK_LIST_REMOVEプロシージャ | OBJECT_BLOCK_LIST_REMOVEプロシージャ |
その他の仕様変更は、Oracle Database 23aiのアップグレードマニュアルをご参照ください。
Oracle Database 23aiでは新たな機能も多数追加されています。また、Oracle Database 21cは Innovation Releaseだったため、21cで登場していた新機能もいよいよLong Term Releaseの23aiから本格的に利用できるようになりました。
筆者の主観ですが、「セキュリティ面での機能強化」でインフラ基盤のクラウド化の流れを意識していた19c、21cでの傾向に加え、AI時代を意識した「SQL関連の機能強化」も多い印象です。
アシスト現場ブログでは、新機能に関する情報も随時お届けしています。今後の記事にも是非ご期待ください!
Oracle Cloud環境の場合、Oracle Database 23aiはBaseDBの全てのエディションで公開されています。オンプレ環境用の正式版モジュールは順次リリース予定です。
23シリーズのデータベースをオンプレ環境で検証したいという場合、Free版のモジュール(23c)入手が可能です。利用規約をご確認のうえダウンロードしてお試しください。
Oracle Database 23aiへのバージョンアップは、アプリケーションの64bit化対応の要否によっても計画の立て方が変わります。データベースの周辺環境の事前把握がバージョンアップ計画の大きなポイントになるでしょう。また、モジュールリリースの状況も見極めながら、 19cを採用するのか、23aiを採用するのかでご相談いただくケースも増えています。
最新のリリーススケジュールや移行計画、リプレース先のお悩みなど、お気軽にアシストまでお問い合わせください。
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2007年度アシストに入社後、Oracle Database のフィールドエンジニアと定期研修のセミナー講師を兼務。2度の産休・育休を経て、データベースやクラウド関連のプリセールスエンジニアとして活動中。 ...show more |
■本記事の内容について
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