地方公共団体情報システム標準化でなぜ今、データ連携基盤が求められているのか?!
令和3年9月(2021年9月)に「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」が施行され、自治体基幹業務の標準化対応完了期限として定められた令和7年12月(2025年12月)に向けて全国の自治体様にてガバメントクラウドへの基幹システム(標準準拠システム)の移行が山場を迎えています。
そのような中、データ連携基盤についてのご説明をさせていただくケースが増えてきています。なぜ今、このようなご相談を多くいただいているのか、本記事ではまとめてみたいと思います。
ガバメントクラウドにおける「庁内データ連携」機能とは
弊社ではガバメントクラウドへの接続サービスや業務システムなどは取り扱っておりませんが、ガバメントクラウドにおける共通機能として「庁内データ連携」に関するご提案をさせていただいています。
この記事を読まれている皆様へはご説明するまでもないと思いますが「庁内データ連携」についてはじめに少し解説をさせていただきます。
出典:デジタル庁 地方公共団体情報システム共通機能標準仕様書(第2.4版)
「データ要件・連携要件」は言うまでもなく、今回の自治体システム標準化の柱のひとつです。マルチベンダー化、システム標準化を行う中でそれらを支える「データ要件・連携要件」は非常に重要な要素とされています。
標準準拠システムは単一パッケージとして提供されていない限り、関係業務システム間でデータをやり取りする必要が出てきます。その際、政府の定めた「データ要件・連携要件」に基づいてデータをやりとりする必要があります。
データ要件では、システムごとに「基本データリスト」と呼ばれるデータ項目・形式が厳密に定められた形でデータを入出力する必要があります。また、自治体ごとの外字を利用するのではなく、行政事務標準文字(MJ/MJ+)という文字セットを用いる必要があります。
また、データ連携要件ではこのデータ要件を順守したデータをAPI連携、もしくはファイル連携で交換するように求めており、多くの自治体様やASPベンダー様では認証・セキュリティ要件の厳しいAPI連携よりファイル連携でのデータ連携の実装を選択されています。ファイル連携ではそれをやり取りするためのストレージとしてCSP(AWSなどのクラウドサービスプロバイダー)が提供するオブジェクトストレージを原則として利用するように定めています。
標準準拠システム間のデータ連携では、このオブジェクトストレージ上でデータ要件・データ連携要件を満たしてデータをやり取りすればよいので、ベンダー間の調整は不要となる仕組みです。
なぜデータ連携機能が必要となるのか
多くの自治体様において、ガバメントクラウドへ移行した基幹システムは、移行だけでは終わらず、各自治体様の独自施策システムや外部サービスといった様々なシステム(以降、標準準拠外システムと記載します)との接続が求められます。この標準準拠外システムは当然ながら前述の「データ要件・連携要件」に準拠する必要はありませんし、これに準拠させるとなると膨大なコストが発生します。
したがって、標準準拠外システムとのデータ連携については標準準拠外システムを担当されるベンダー様へ対応を依頼し、標準準拠システムとのデータ連携方法を調整していく必要が出てきます。
ここで、標準準拠システムとのデータ連携について標準準拠外システム側で吸収する前提で進められている自治体様も多くいらっしゃいます。つまり「データ連携基盤は設けずに対応する」という方針です。
そんな中、標準準拠システムの移行が山場を迎える今となって、データ連携基盤についてのご提案をさせていただくケースが増えてきています。なぜ今、このようなご相談を多くいただいているのか、本記事ではまとめてみたいと思います。
- 1. 移行困難システムが増えてきている
- 移行困難業務が存在する場合、標準準拠システムとのデータ連携において基本データリストからのレイアウト変換やデータ加工が発生します。
- 2. 法改正に対応しなければならない
- 法改正による基本データリストのレイアウト変換やデータ項目仕様が変更になる可能性があります。特に法改正の頻度が多い税関係の業務などは多くの影響を受ける可能性があり、税システムからデータ連携を受ける標準化対象外システムや外部システムとのデータ連携ではこの仕様変更を受けた対応が必要になる可能性があります。
- 3. 標準化対象業務アプリケーションにおけるベンダー間個別調整への対応
- デジタル庁様におけるデータ連携仕様の変更があり、標準化対象業務アプリケーションであってもベンダー間調整により基本データリストからの変更が可能になる旨の通達がありました。これにより、レイアウト変換機能が共通基盤としてのデータ連携基盤に求められる可能性があります。
- 4. API連携への対応
- 現状では標準準拠システムへの対応はファイル連携が主流であり、多くの自治体様がこの方式での実装を検討されています。しかし、将来API連携を行うシステムの導入、例えば移行困難業務が将来選択するアプリケーションがAPI連携のみに対応したシステムである場合、APIに対応したデータ連携方法に見直す必要があります。
これらの状況を見て、自治体様において「将来発生し得るリスク」への対応や「現在発生している課題」への対応の両方の側面からデータ連携基盤の構築を検討されるようになってきています。
アシストがご提案するデータ連携基盤
アシストではこのような課題に対し、短期間かつ低コストでデータ連携基盤を構築することができるソリューションをご提案しています。
ご興味をお持ちいただいた自治体様、自治体パートナー様がいらっしゃいましたら、ぜひお声掛けいただければと思います。
執筆者情報:
荒井 大輔(あらい だいすけ)
株式会社アシスト
DX推進技術本部 技術統括2部 DI技術部
2002年に入社し、テストツールやITSM/運用自動化ツールの担当や、業務可視化/業務改善に向けたサービス提供を経験。
3年前からデータ連携分野に従事。
運動をやめて5年ほど経ち、「そろそろ健康のために何かしないと」と思いつつも、お酒の場での異文化交流が楽しくて離れられない日々に悩む。
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