アシストのブログ

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2018.02.09

マーケティングオートメーション導入の鍵は連携にあり

マーケティングオートメーション導入の鍵は連携にあり

企業のデジタルトランスフォーメーションの一環としてマーケティングオートメーション(以下、MA)が、注目を集めています。「ビジネスのデジタル化」は、近年流行りのテーマとして脚光を浴びていますが、ここで重要なのはテーマそのものではなく、自社の課題解決に何が必要なのかを理解することです。今回は、アシストにおけるMA導入を例に、その背景や課題解決に向けた取り組みについてお伝えします。


MA導入の背景と目的

アシストのようなB2Bの営業活動では、お客様が自社の課題解決を図ろうとしているタイミングで提案活動をさせていただくことが最も案件発生の確率が高くなり、お客様との関係性が深まります。アシストでは、営業担当者には週15件の顧客訪問が課せられています。全国200名以上の営業担当者が、これを基準に活動していますので、年間約15万回以上のお客様との接点を持つことになり、この接点の中でお客様への提案機会をいただいています。しかし、その中には訪問がしばらく空いてしまった間に競合他社の製品を採用されていた場合や、訪問していてもお客様が具体的に検討している状況を察知できなかった場合など、提案機会を逸しているケースもあります。そこで、この提案タイミングを訪問以前に知ることができれば、適切な提案につなげることができ、お客様との関係性をより深めることができると考えました。

MAの機能を利用して可能になることの一つが、提案タイミングを推定するために「お客様を知る」ことです。近年、お客様が何か情報収集をする際には、インターネットで検索するのが一般的です。ただB2B企業のサイトへは、ネットサーフィンで訪れることはあまりなく、ほとんどが何らかの意思を持って来訪します。

そこでMAを利用すれば、あらかじめWebページやMAから配信されるメールに、お客様の関心度合いを予測するための加点スコアを設定し、そのページ閲覧やメールクリック等のアクションを集計・スコアリングすることで、どの程度の関心があるかの判断材料とすることができます。例えば、短期間にある分野のスコアが上がれば、その分野の課題解決に向けた関心度合いが強くなっているのではないかという仮説につながります。

そこで弊社でも、一つには、お客様の関心度合いが高い時に適切な提案活動を行うことで、お客様の満足度をより高め、さらに関係性を深めたいという目的からMAを導入しました。

また、二つ目の導入目的はお客様のフォローアップでした。新規・既存顧客問わず、お客様が何らかの課題を認知していても、その優先度や予算の関係で今すぐには検討に入れない場合も少なくありません。このようなお客様に対して何らかのフォローを継続的に行わない場合、2年以内に80%のお客様が競合他社のソリューションを導入してしまうという統計もあります。しかし、現在検討をしていないお客様全てを営業担当者による直接的な営業活動でフォローし続けることは現実的に不可能です。だからといって、コンタクトを継続するためと称して、画一的なメールを延々と流し続けてしまうと、お客様の関心からピントが外れてしまいご迷惑となるばかりか、配信停止というお客様の判断を誘発してしまい、その後のコンタクトが難しくなります。そこで、お客様の関心度合いに合わせてご興味をいただけるコンテンツを配信することができれば良いのですが、何千人、何万人というお客様個人に対して、適切なコンテンツの個別配信を人手で管理することは現実的ではありません。

これを実現するのが、カスタマージャーニーやエンゲージメントと呼ばれているMAが持つ機能です。配信したメールの開封やコンテンツのクリックの有無、役職や地域、業種や企業規模など様々な条件を基にした分岐ロジックにより、次のアクションや配信するコンテンツを適切に変えることができます。この機能によりお客様の興味関心度合いに応じたコンテンツの提供が可能となり、お客様が検討段階に入った際にはお声がけいただける可能性が高まります。

MAの活用には、システム間連携が必須


お客様の興味に合致した情報をきめ細かく提供するには様々な条件設定が必要になります。ただし、こうした条件値はMAの中だけでは取得できません。条件設定のためWebアンケート等でお客様情報を収集したいところですが、そうするとお客様の負担が増し、Webからの直帰率が極端に上がってしまう結果となります。

そこで、社内にある情報と紐づけて情報を参照することが必要になります。例えば、既存のお客様かどうかの判別などは、製品単位で社内の契約情報を参照しなければなりません。MAを活用するためには、社内システムとの連携の仕組みが不可欠なのです。

アシストにおけるMAとデータ連携


アシストでは、MAにはSalesforce社のPardotを採用しました。他のMAツールに比べて機能的な制約はあるものの取得したリード情報がSalesforceと相互に自動的に同期が取れることが採用の決め手でした。なぜならば、Salesforceと同期が取れれば、弊社取扱製品であるデータ連携ツールDataSpider Servista(以下、DataSpider)のSalesforceアダプタを活用できるので、外部システムとの連携が極めて容易に構築できるからです。ただし、弊社では10年以上活用している既存のSFAシステムがあるため、現段階ではSalesforceをPardotと他のシステムとの連携インターフェースと位置付けています。

MAは、リードと呼ばれるお客様の個人情報を基にして、配信したメールの開封やWebサイト訪問履歴を記録する仕組みです。しかし、その個人情報は、氏名や社名、住所等、お客様ご自身にWebフォームから入力いただくため、社名や住所が省略されていることがよくあります。一方、既存のSFAや契約管理システムで管理されている顧客情報は、お客様からいただいた名刺情報を基に登録されているため、MAにある略称の社名とはマッチングできません。また見込案件や契約情報は、お客様個人ではなく、会社単位や事業所単位で管理されているということもあり、MAのリード個人情報と簡単に連携できません。

そこで、MAのリード情報を社内のSFAや契約情報と連携させ、それぞれのシステム間のお客様情報のマッチング精度を上げるためには、社名や住所の名寄せを行った上で共通コードの付番が必要になると判断しました。

クラウド上の企業情報DBを活用


アシストでは、その共通コードを何にするかについて、様々な外部サービスを検討しました。その結果、クラウド上で最新情報が提供される企業情報DBを採用し、その事業所単位にユニークに採番されている共通企業コードを社内システムのお客様管理データに付番することにしました。クラウド上の企業情報DBに対して社名、住所をAPI経由で引き渡すことで共通企業コードが返されるという仕組みです。また、その際にこの外部サービスのナレッジにより、社名の略称や住所表記の揺れなども吸収して処理されます。

MAで得たリードにこの共通企業コードを付番することにより、それをキーに社内データとマッチングして契約情報や営業活動情報を相互参照できるようにしました。また、弊社では名刺やセミナー管理も外部サービスを利用しています。日々取り込まれる名刺情報やセミナー参加情報についてもこの共通企業コードを付番して社内システムであるSFAやMAに併せて連携することにしました。

アンマッチが多発


しかし、運用テスト段階で社名、住所でうまく共通企業コードが参照できない(アンマッチ)ケースが多発しました。この企業情報DBは、登記情報やWebクロールを基に会社名や事業所の住所情報を最新化しています。MAから入ってくる住所や営業活動で得られる名刺の住所は、出向先や派遣先、グループ会社のものだったり、Webに公開されていない事業所であったり等、アンマッチが生じている要因が判明しました。そこでアンマッチとなった名刺データは別に出力し、毎日その名刺情報の妥当性をチェックする体制を敷くことで、会社と事業所の整合性の取れた顧客マスタを構築、維持することにしました。

以上のプロセスを経て、名刺管理サービスから入ってくる情報にDataSpiderで共通企業コードを付番した上でSalesforceを経由してMAのPardotへ、セミナー管理サービスから登録された参加者情報もDataSpiderでSalesforceを経由してPardotへ、そして弊社のWebサイトからはPardotのWebフォームで実装されたページから各種資料のダウンロードや問い合わせを通じてPardotへリード情報が入ってくるという仕組みになり、弊社がコンタクトのある全てのお客様情報をPardotに集約しました(図1)。また、これらは全て共通企業コードで一元化されているため、Pardot上の情報に併せて、営業活動情報や契約情報を企業単位や個人単位に参照することも可能になりました。

図1:アシストのお客様情報連携の仕組み


今後の運用と課題


アシストのMAの導入と運用は始まったばかりです。まだ顧客アンマッチデータを正規のコードへ変換するという人的作業が、日々発生しています。これは一度変換が行われると次からはマッチングできるようになるので、いずれは解消していきますが、人手で行わなければならないため、その負荷を下げていくことが当面の課題の一つです。

また、MAはその名の通りオートメーション化ツールであり、これを単に導入してもリードが増えたり、見込案件が増えたりするものではありません。メールを配信しても開封していただかなければ送れなかったことと同義になります。適切なお客様に適切なコンテンツをお届けし、お客様満足を高めると同時に提案タイミングを見極めるためには、正しい情報を基に分析する必要があります。そのために、今後はBIツールのQlik製品を活用してMAのみならずGoogle AnalyticsやCMS(弊社ではNOREN)のログも対象に含めた分析基盤を構築する予定です。

最後に


弊社ではこれまで以上にお客様のことを理解し、お客様のお手伝いに役立てるためのツールとしてMAを導入しました。しかし、MAを導入するだけではその目的の達成には不十分であり、社内の様々なシステムと連携し、できる限りお客様情報を一元化することが必要でした。今回実装に活躍したデータ連携ツールは、クラウドを含めたシステム間のデータ連携を迅速かつ最小限の工数で実装できます。MAを他システムと有機的につなぎ導入効果を高めるには、このようなデータ連携ツールは必須と言っても過言ではないと思います。今回のMA導入により、これまで以上に「お客様にご満足いただける」活動につながることを目指します。

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執筆者のご紹介

アシスト杉乃 敏也

杉乃 敏也
DX推進技術本部

1987年入社。開発系、運用系、DB系製品のフィールド・サポート、営業支援を経た後に、SFAコンサルタントに従事。その後BI/DI系製品の技術責任者から、マーケティング責任者を歴任。趣味はスキーと山歩き。

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