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アシストフォーラム2023 特別セッション講演録

持続的な企業価値の向上 ~ お客様に選ばれ続けるために ~

営業マン時代に「人と組織」を強くするノウハウを培い、今は青山学院大学陸上競技部を牽引する原晋氏、サッカー日本代表監督を二度務め、ワールドカップへ導いた後、オーナーとして「FC今治」を経営する岡田武史氏、そして、アシスト社長である大塚辰男の3人による特別セッションの内容をお届けします。

原晋監督の著書『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』から、以下3つのテーマについてお話しいただきました。

 ● 常識を破らなければ「強い組織にならない」
 ● 自立した個で自律した組織を作る
 ● 伸びる人財を見極める


原氏
青山学院大学
地球社会共生学部 教授 陸上競技部長距離ブロック 監督 
原晋氏
岡田氏
株式会社今治.夢スポーツ 代表取締役会長 
(サッカー日本代表元監督)
岡田武史氏
大塚氏
株式会社アシスト 代表取締役社長 大塚辰男

常識を破らなければ「強い組織にならない」

原氏
原氏
陸上業界の指導スタイルは長年、上意下達。カリスマ指導者が支配するというやり方が主流でした。20年前、青学の監督になった時、栄養学や心理学、トレーニングメソッドなど多岐にわたる指導を分業制にし、監督が横軸を差してマネジメントする指導スタイルに大きく変更しました。上意下達では強くなれないと考えたからです。

岡田氏
岡田氏
サッカーや野球も同じ流れを辿ってWBCやワールドカップまできたように思います。

原氏
原氏
青学の監督に就任した時に行われていたトレーニングは、私が40年前に小学校でやっていたのとまったく変わらず、腕立て伏せや腹筋、背筋などでした。「腕をもっと振れるようにする」ための筋肉を鍛えたり、可動域を広げる必要があるのに、別の筋力を鍛えて固め、腕が振れなくなるような真逆のことをやっていたのです。

大塚
大塚
「岡田メソッド」も常識を疑うという考え方が出発点ですか?

岡田氏
岡田氏
サッカー界では自分で判断できるように16歳ぐらいまでは自由にプレーさせ、16歳からは戦術や対応策などを教え込むやり方をとってきました。ただ、こちらが想定するような主体的に動ける選手は登場しませんでした。そこでスペインの有名コーチのメソッドを真似て、16歳までは徹底的に原理原則を教えて、それ以降は主体的にプレーさせるという「岡田メソッド」を作り、今も試しているところです。

原氏
原氏
「スポーツは歯を食いしばって真剣にやらなければダメだ!ウォーミングアップ中も整理体操中も私語厳禁!」というのも常識でした。しかし、整理体操をなぜやるかを考えたら、一日の振り返りやリフレッシュの意味もあり、ストレッチをきちんとやってさえいれば、選手同士が「今日どうだった?」と会話するのはまったく問題ないわけです。常識ではなく、それが何を目的としているのかを追及するようにしています。

岡田氏
岡田氏
アシストも常識を疑うところからスタートしたと聞いています。

大塚
大塚
アシストは今年創立51年目ですが、弊社のビジネスモデルそのものが、当時の常識と真逆のものでした。コンピュータ用のソフトウェアは自社で手作りするのが当たり前だった時代に、各社共通の部分は既製のソフトウェアを使い、自社独自の部分だけ開発すべき、という考え方を訴求するところからのスタートでした。そうした非常識と思われる変革もすぐに当たり前になり、競合にも真似されるため、常に非常識なことは何かを見極め、新しいことへのチャレンジを繰り返してきました。

岡田氏
岡田氏
私も経営を始めて8年になりますが、業績が順調な時に先を見据えてあえて新しいことにチャレンジするのは、経営者としてとても勇気がいりませんか?

大塚
大塚
非常に不安があります。しかし、変化のスピードが加速化していますので、自分たちも変わらなければ取り残されてしまうのではないかという危機感の方が強いです。

原氏
原氏
青学でも同じような危機感を感じています。箱根駅伝で優勝してもメンバーは毎年入れ替わりますし、翌年の優勝が保証されるわけでもありません。アシストさんの場合は自社製品は開発しないビジネスモデルを選択しているので、時代のニーズに応じた新製品を的確に判断し、選んでいかないと時代に遅れるため、常に常識を打ち破る思想で取り組まれているということですね。

大塚
大塚
その一方で絶対に変えてはならないこともあります。弊社の場合、それは「お客様が一番である」こと。取扱製品も取り巻く環境も大幅に変わりましたが、お客様の顔ぶれはほとんど変わっていません。お客様第一主義を貫いていること、末永いお付き合いを大切にしていることの表れだと思っています。

原晋氏

自立した個で自律した組織を作る

原氏
原氏
昨今、教育でもビジネスでも自主性を大切にする風潮がありますが、自主性の前に、しっかり「しつける」ことが大事です。自主性の名のもとに、自由気ままにやらせてもうまくいきません。徒弟制度の中で先生に従う「生徒」から、生きる力を学ぶ「学生」となり、そして「社会人」へとステージ変化を意識する必要があります。自主性の前にまずは自ら立つ「自立」、「半自立」、最終的には自ら律する「自律」へとステップアップしていきます。

岡田氏
岡田氏
日本人は主体的に生きるのが苦手です。サッカーで窮地に立たされた選手が呆然としている状況をよく目にします。一方で、ブラジルの若手選手は、結果を出さないとすぐクビになるという切羽詰まった状況も影響しているのかもしれませんが、ハーフタイム中に、選手だけで激論を交わし、奇跡の逆転につなげています。この違いをどうやって埋めていけばいいのかと考え、岡田メソッドを思いついたわけです。
これは武道の「守破離」の考え方です。最初は師匠の教えや型を忠実に「守」るところからスタートしますが、日本は「守」ばかりを強調するから封建的と言われるのです。「破」や「離」をきちんと定義すれば最高の指導法ではないかと思います。「守」には個別のティーチング、「破」にはコーチング、「離」であればほっとけばいい、というように、それぞれの段階に応じたアプローチが必要です。日本社会は「人は皆一緒」というところからスタートしますが、実際には身長や顔も違えば価値観も性格も違う。本当は全員違うのに全員が同じスタート地点から出発することに違和感を感じています。

原氏
原氏
私も同感です。加えて、全員同じ価値観に染まりなさい、という文化が日本にはありますね。私がやろうとしている組織型マネジメントは、一つの組織内で理念は共有されるべきですが、そこには違う価値観や特徴をもった方々がいらっしゃいます。そういう組織で特定の価値観のみが正しいと言ったり、強制的に一つの型にはめたりするのは良くないと思います。理念を共有した様々な人を束ねながら同じ目的に向かっていく。そうした文化を作っていくべきだと思うのです。

岡田氏
岡田氏
勝つチームを分析すると必ずそこには一体感があります。しかし、一体感から作ろうとすると必ず失敗します。なぜなら人はそれぞれ違うから。20〜30人集まる中で全員が仲良しであるなどということはあり得ません。そりが合わないけれど、この人にパスしたら絶対に決めてくれると認め合う。人それぞれ違うし気に入らない部分もあるかもしれないがお互いに認め合い、勝ち始めると仲良くなっていきます。それは会社も同じですね。皆が仲良しということはあり得ないですよね。

大塚
大塚
仲良しこよしの組織というのはうまくいきませんね。結果が伴わないと、本当の意味で一つになれません。先ほど、原監督が個々を鍛えて自律したチームとして高みを目指すということでしたが具体的にはどう進めていらっしゃるのですか?

原氏
原氏
何のためにそのトレーニングを行うのかの目的を必ず伝えています。例えば、夏合宿の走り込みはやり方は何通りもありますが、走り込み自体は単調で面白いものではなく、学生たちは疲れてくると「こんな練習をして何の意味があるのか」と言い始めます。そんな時は、練習消化率が70%以上でないとお正月の箱根駅伝には出ることができないというエビデンスを添えて目的を明確化します。指導者の勘や経験だけではなく、走り込みをやらない場合のデータも添えることで信頼感と説得力が増します。

岡田氏
岡田氏
やらされていると思うか、必要性を理解して「自分ごと」にするかで大きな差が出ますね。

原氏
原氏
走り込みが重要だったら1キロでも2キロでも人よりも多く走ろうと、学生自身が思えば自分から走り出します。

大塚
大塚
自分ごとになったらしめしめですよね。

岡田氏
岡田氏
会社も同じですね。今治FCのオーナー一年目の時、雨の中、700人の観客がびしょ濡れになって観戦してくれました。私がタオルを持ってダッシュで出口に向かう中、社員はのんびり歩いてくる。この危機感のなさはなぜかと考え、自分がやってしまうからだと思って社員に丸投げしてみると、今度は会社がつぶれそうになりました。経営者と同じ気持ちになれといっても、持っている情報が異なるため、社員は自分で判断することができません。そこで、人事情報以外、取締役会の内容も含めて、できるだけ社員に情報を公開することで会社をフラットにしました。その結果、徐々に自分ごと化も進んでいます。

大塚
大塚
目的を明確にすることは重要ですね。弊社の例ですと、お客様が弊社からソフトウェア製品を導入してくださるのは、それによってある目的を達成するためですが、時々、製品を導入することが目的だと取り違えている場合があります。目的が何かを整理するような伴走型サービスを提案することもあります。

原氏
原氏
お二人のお話を伺うと、「何のためにやるのか」がキーワードになるように思いました。私は大学でも教えていますが、「ペットボトルの売上げを、その品物を映像で見せられないラジオショッピングで10倍にするにはどう表現するか」や「北朝鮮のミサイルが日本に打ち込まれた際の、スポーツに及ぼす影響は?」といった、考えさせる教育を重視しています。暗記ではAIに太刀打ちできません。役立つ力を学生に身に着けさせるためには「考えさせる」ことが必要だと思っています。

岡田氏
岡田氏
ChatGPTのようなAIが一般的になった社会で価値がでるのは、数字で表せない価値を持っているものだと思うのです。感動や共感を与えられるもの、つまりそれはスポーツであり、アートではないでしょうか。スポーツにとっては今の状況は追い風なのではと思っています。

原氏
原氏
箱根駅伝の区間記録やその他の情報はパソコンを叩けば効率よく入手できます。そうやって捻出した時間を使って、いかに選手をうまくマネジメントするか、AIにはできないことを学んでいかなければならない、ということですね。

岡田武史氏

伸びる人財を見極める

原氏
原氏
私は選手のスカウティング活動を重視しています。この20年間で青学で伸びる学生と、伸びない学生の特徴がわかってきました。私は、1から10まで手取り足取り教えるやり方ではなく、選手自身がやりたいことを後押しする組織マネジメントの方法を採用しています。どうやったらできるのかと、自ら前向きに考えそうな学生を積極的にスカウトしています。陸上競技はタイムで評価されるものの、仮に5〜10秒遅くとも、意欲的な目をした戦う本能が垣間見れる学生の方が大学4年間の伸びしろは大きいのです。

岡田氏
岡田氏
それは一度会っただけでわかるのですか?

原氏
原氏
身長体重から始まって大学4年間の目標、青学で何をしたいのかなど10個ぐらいの質問を矢継ぎ早に行います。きちんと私の目を見て前向きな回答ができるかどうかなどのポイントがありますが、大概わかります。ぜひ今度アシストさんの人事面接を私にやらせていただきたい(笑)。

大塚
大塚
機会があればぜひお願いしたいです。アシストでは、数年前から、新卒の採用担当に人事のメンバーではなく、現場のエース社員をアサインしています。採用活動で聞く人事の話は、あくまでも人事の立場からの話なので、学生にあまり響いていないようでした。そこで、営業や技術部隊から一番活躍している社員を数年間、採用活動専任に社長命令でアサインすることにしました。

岡田氏
岡田氏
現場の上司から大反発が起こりませんでしたか。

大塚
大塚
そういったマネージャーには「君は明日や来年のことしか考えられないのか。5年先、10年先のことを考えて欲しい」と伝えました。すると納得してくれます。業績維持のためにはエースを現場に置いておきたくなりますが、将来的なことを考えると、こうした思い切った施策が必要、と判断しました。

原氏
原氏
よく人事の方から「真面目な社員しか入ってこないのだがどうすればいいでしょうか」という相談を受けますが、貴社の中で一番不真面目な人を人事担当にすればいいんですよとお伝えしています。採用担当者は自分の好みの人を入れたがるので、同じような金太郎飴集団が生まれがちなんですね。ここで提案ですが、岡田監督と原監督の面接デーというのを、アシストさんぜひ設けてください。

大塚
大塚
めちゃくちゃ多数の応募が来そうですね(笑)。

原氏
原氏
何が正解かよくわからない時代になってきました。チャレンジ精神を忘れることなく、精一杯努力し、楽しい世の中にしていきましょう。

岡田氏
岡田氏
原さんとお酒を飲まずに話すことがあまりないので、今日はもっと色々と聞きたいと思うことばかりでした。ぜひ「47の言葉」を皆さんもお読みください。経営にも役立つと思います。私も学んでいきます。

大塚
大塚
本日は本当にありがとうございました。

アシスト 大塚辰男、原晋氏、岡田武史氏

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