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システム開発を行う会社や部門において、品質管理や品質向上のための取り組みを行っていないところはありません。しかし、上流工程が遅れてスケジュールが圧迫され、不十分な設計のまま製造して、テストで品質を上げようとしてもなかなか上がらないものです。
SIerでの前職を含め、過去に実施したシステム開発プロジェクトでの経験をもとに、アシストの高山隆一が品質向上への取り組みについて提言した論文が「第58回IBMユーザー論文」で銀賞を受賞しました。論文応募のきっかけや提言する取り組みについて高山にインタビューしました。
── 高山さん、「第58回IBMユーザー論文」での「銀賞」受賞おめでとうございます。まずは高山さんのアシストへの入社のきっかけや技術者としてのキャリアをあらためて教えてください。
はい。1981年に前職となる開発会社に入社して、指紋照合や通信関係のプロジェクトに従事した後、開発方法論や品質管理を担当しながら、開発ツールであるVisualBasicやPowerBuilder(注:アシストが1998年~2009年まで取り扱った製品)の公認トレーナーをしていました。そのPowerBuilderが縁で2001年にアシストに入社したんです。
アシスト入社後はPowerBuilderや内部統制評価支援のプロダクト担当から事業部の業務部門企画等を経て、2017年に東日本技術本部 開発推進部へ異動して現在に至ります。2005年から2017年までの約12年間は、「ソフトウェア・リサーチ・センター」という社内の部門横断で組織される調査部隊があり、そこで管理者も兼務していました。
アシストに入社したての頃は、会社の風土や文化が違いすぎて馴染めないところが多かったような気もしますが、多少なりとも会社に貢献できれば、好きなことをやらせてくれる社風がいいですね。
── 「IBMユーザー論文」に応募したきっかけは何だったんですか?
アシストに入社して4年目の2005年から、「IBMユーザー研究会」(IT研究会や日本ガイドシェア(以下、JGS))に参加し始めたんです。IBMユーザー論文に初めて応募しようと思ったのは、翌年の2006年度(第45回)でした。2005年度のIBM関東研究会のIT研究会で同じチームだった他社の方から、「この研究は論文にした方が面白いよ」と勧められたのがきっかけでした。
その時は残念ながら体調を崩して入院することになり、結局応募を辞退してしまいました。しかし退院後に、並行して活動していたJGSの研究チームで執筆した論文がウェブネットワーク部会の優秀論文に選ばれ、2008年の第46回IBMシンポジウム(高松で開催)に派遣されることになりました。このシンポジウムでは、IBMユーザー論文の最優秀賞受賞者が、表彰式の後に約1,000名の聴衆の前で10分ほど記念講演をしたんです。それを見て、あまりのカッコよさに「自分もこれをやりたい」と思ったのがその後の論文執筆の活力源となりました。
── 今回、「(開発)テスト」というテーマでの受賞ですが、この論文では何を訴求したかったのですか?
前職では新入社員の時から、先輩や部門、プロジェクトに恵まれて、構造化や標準化の重要性を徹底的に叩き込まれました。だからそれが当たり前のこととしてチーム内で先輩から後輩へ伝えられ、伝承されていったのですが、社内の別チームやプロジェクトで他社のチームと仕事をしてみると、設計/製造までは順調に進んでいるように見えても、テストから先はもたつき出して、不具合を出して修正してもまた別のところで不具合が発生する。何とか収束させても、度重なる修正でプログラムの構造が悪化するばかりか、ドキュメントの修正も不十分となっているケースを多く見てきました。このようなプロジェクトでは、次の改修の際に解析に手間取るばかりか、テストに入ってからも想定外のトラブルを引き起こすようになります。
アシストに入社後も、何件かお客様の開発現場に関わりましたが、テストに入ってからプログラムの品質を上げるという考え方では遅いと感じていました。アシストの扱っているテストツールはテスト作業の効率化に大きく貢献しますが、その前段階で品質を上げてからでないと、せっかくツールを導入しても大きな効果は出せません。
テストは「目に見えないソフトウェアの品質を証明する」唯一の手段なので、どんなに品質が良いと思われても、省略できません。また、検証としてのテストは必要不可欠ですが、まずは不良を作り込まないことに注力すべきです。つまり、システムの品質を確保するには、テストで品質を確保する「テスト偏重主義」から脱却し、「テスト開始時の品質」を向上させることで、テストの効率化が図れ、工数を削減でき、その分設計に時間を割くという好循環が生まれます。
さらに、プログラム構造、ドキュメント(設計書)、保守性などに着目して内部品質の向上を図ることで、テスト開始前の品質向上によるテストの効率および質の向上だけではなく、ビジネスに対するアプリケーションの価値向上という、「もう一段上の品質」につながります。
図:内部品質向上の効果 |
また、プロセスや技法を高めても、短期的な効果しか得られません。なぜならそれを実施するのは常に人だからです。そこで、長期的、継続的に品質を高めるには組織が系統的に人材の育成に力を入れていくべきだ、ということも論文で切々と訴えました。
── 次は何を目指したいですか?
初受賞は、最初の応募から5年後の2012年(第51回)で、実はその時も「銀賞」だったんです。以降何度か受賞しましたが、残念ながらいまだに目標の「最優秀賞」に至っていません。目標に向けて「頑張りたい」という思いはあります。
ただ、今回の応募には特別な想いがありました。IBMユーザー研究会自体が2020年6月(JGSは10月まで)で終了し、IBM主体のコミュニティに生まれ変わることが確定していましたし、5月には「第58回IBMシンポジウム川崎大会」の開催が予定されており、この大会にユーザー研究会でお世話になった方々や、自分がアドバイザーを務めたチームの面々に対してお礼を込めて、受賞者としてステージに立つという目標を立てて、最後を締めくくろうと考えてました。結局、コロナ禍でイベントが中止になってしまったことが非常に残念です。9月に新しいコミュニティのキックオフイベントが予定されていて、そこで現在のような「IBMユーザー論文」が継続されていくのかどうかが発表されると聞いていますので、再チャレンジするかどうかは発表次第です。
第51回受賞の様子 |
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第54回受賞の様子 |
第58回賞状 |
個人的には、JCSQEソフトウェア品質技術者資格認定/中級と情報処理技術者試験/プロジェクトマネージャへの挑戦も検討していますが、約20年務めたアシストに対しては、これまで培ってきた知識やスキルを何らかの形で残し、貢献したいと考えています。
── 今回発表の場であるイベントがなくなってしまったことは残念でしたが、これからもご自身の経験を生かし、ぜひお客様への提言を素晴らしい論文として形にしていってください。本日はありがとうございました。
テスト偏重主義からの脱却 ~カギは内部品質と職場環境にあり~
https://www.ashisuto.co.jp/tech-note/article/20200511_test.html
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