
株式会社アシスト 代表取締役会長
ビル・トッテン
暖冬と思っていたら強い寒波がきて、それも長く続かず立春も過ぎ、土づくりの季節が始まりました。
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家庭菜園を始めた当初、福岡正信氏の『わら一本の革命』の本に感銘を受け、不耕起、無肥料、無農薬、無除草で水もやらない自然農法に憧れました。ところが実際は、自然に任せればすべてうまくいく、というような甘いものではありませんでした。京都の気候、私自身の栽培技術レベルや自然観察力、テニスコートだった庭に土を入れて畑にしたという土壌条件で、耕さず、肥料もやらない、では、うまく育つわけがないことはすぐにわかりました。
試行錯誤の中で先輩方から学んだのは土づくりの大切さです。理想は野山の腐葉土のようなふかふか柔らかい土。それに近づけるために微生物やミミズが繁殖しやすい、ゆっくり分解する有機質の物を、と考えた時に知ったのが馬糞堆肥でした。私が馬糞を分けてもらっているのは、家から賀茂川を上流に40分くらい歩いたところにある厩舎です。我が家に2台あるうちの小型のリヤカーに空き缶を載せ、1年に2、3回、馬糞をもらいにいきます。
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この厩舎にはいま7頭の馬がいます。時代祭や祇園祭など、京都で催される様々なお祭りに派遣されるそうです。私は馬糞のお世話になっているだけで、流鏑馬などで走る彼らの雄姿を見たことは残念ながらまだありません。ご自由にどうぞ、と置いてある馬糞を、空き缶に入れていきます。
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このあたりは田畑が広がっています。この田んぼからおたまじゃくしを捕って家に持ち帰ったこともあります。
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帰り道は、馬糞でリヤカーは重くなりますが、道は緩やかな下りなので行きよりも速足になります。
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持ち帰った馬糞にぬかを混ぜ、それから朝、自分で焼いておいた炭を混ぜ入れました。これはバイオ炭と呼ばれるもので、立命館大学の先生のご指導で作り始めたものです。
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馬は、牛と違い咀嚼が荒いので、馬糞は無数の微生物とともに有機物を分解しきらない状態で出てくるそうです。ここに発酵を促すものを加えると6ヵ月後には完熟堆肥ができあがります。
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いまある完熟堆肥は昨年作ったもので、時間が経っているのでかさが減り、においも土のにおいに近くなっています。残っている野菜を少しずつ収穫しながら、この堆肥を土に混ぜこんでいきます。藁をかぶせておくと土と有機物の接触や微生物の繁殖が良いようです。ニンニクを抜いたところには穴をあけて、そこに堆肥を入れて土と馴染ませておきます。
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一時は肥料効果の高い堆肥は何かとか、有効成分を調べたりしたこともありましたが、最近はもっぱらこの馬糞堆肥を土壌に投入し、あとの分解は微生物にまかせきりです。江戸時代には灰や糞尿を上手く活用して農作物の肥やしに使っていたという話を聞きますが、日頃から馬糞で堆肥を作るような暮らしをしていると、エネルギーや食料が封鎖されてもなんとかなる、という気がしてきます。
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