
株式会社アシスト 代表取締役会長
ビル・トッテン
出張の多かった6月ですが、その合間を縫って、ちょうど京都にいらっしゃっていた、香川大学農学部で食用ウサギの研究をされている川崎先生と学生さんたちをわが家の菜園にご案内することができました。
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ウサギの中で一匹、どんどん痩せてきて、さらに口の下から胸のあたりの毛が抜けているウサギがいます。食欲は旺盛でペレット(固形のエサ)はよく食べているのですが、先生にみていただいたところ、なんとこのウサギには歯がないことがわかりました。ケージを噛んだりしたのか、何らかの理由で歯が折れてしまったようなのです。このウサギは柔らかいペレットはよく食べるのですが、固くて噛めないのかティモシー(干し草)は食べていないようでした。
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草食動物であるウサギは、草を食べないと腸内細菌がおかしくなるのだそうです。草に含まれる繊維質がウサギの腸の中の菌に必要で、さらにそれは胃腸を刺激して動かす作用があり、そのためペレットのような、繊維質が少なく、たんぱく質や脂肪、炭水化物の含有量が多い餌だけを食べていたウサギは栄養がいきわたらず痩せてしまったのでしょう。特にわが家のウサギには、ウサギの個体を大きくするために牛の飼料として販売されているペレットを与えていたため、歯のないウサギは草不足になってしまったのです。早速ウサギ用の、ティモシー入りペレットと、腸の善玉菌のエサになるというオリゴ糖を買ってきて、ウサギに与えることにしました。
生き物は食べ物から栄養を取り込み、体を維持しています。栄養というと、食べ物を消化して栄養を体内に取り入れるのがすべてのようですが、消化の難しい草を食べるウサギは、腸内細菌、つまり微生物の力で栄養をつくりだし、食糞をします。エサがあるのに、なぜわざわざ糞を食べるのだろうと思っていましたが、ウサギが夜自分の糞を食べるのは、腸のなかで発酵され栄養素が高まった状態で出された糞を食べることでさらに栄養を摂取しているのです。
歯のないウサギはこの草を食べられなかったので栄養がとれず、腸内細菌のバランスがくずれて唾液の成分も悪玉菌が増え、口のまわりの毛もただれてしまったようです。草食動物のウサギにとってどれほど草が重要であるかを改めて知りました。
考えてみると菜園に欠かせない堆肥は牛糞や鶏糞の菌が養分になっています。しかし動物性ばかりの堆肥ではよい土はできず、落ち葉などの植物性堆肥が欠かせません。土壌にも私たちの体の中にも、細菌とよばれる微生物が多数棲息していて、ウサギに限らず、まさに人も菌と共生していることを実感しています。
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