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2020.12.03

病院の情報システムにはデータ連携が必須!そのワケとは

病院の情報システムにはデータ連携が必須!そのワケとは

コロナ禍にある今、業務内容の急速な変化により電子データを活用する状況が増えてきています。
その中でも、医療機関や公共機関などでも電子化への取り組みが広がってきているように思います。
例えば…

・医療現場における電子カルテの導入
・教育現場におけるIT化
・公共機関におけるオンライン申請

などなど。

大学の授業がすべてオンラインに切り替わっていたり、小学生にタブレット端末が配布されたり、給付金の申請がオンラインにできるようになったりと、日々のニュースの中でも電子化に関するものを見ないことはありません。
電子データの活用基盤を整え、どう活かしていくのかが喫緊の課題となっているのではないでしょうか。

本記事では、その中でも、医療業界における電子データの二次活用について事例を交えてご紹介していきます。


医療系電子データの二次活用事例

1.医療情報の「一次利用」と「二次利用」とは

病院内の業務を支援するシステムは、病院情報システム(Hospital Information System 略してHIS)と呼ばれることがあります。病院情報システムとは、医療費の請求処理を行う医事会計システム、患者の診療記録を電子保存管理する電子カルテシステム、各部門からのオーダーを登録するオーダーエントリーシステム、看護管理システム、薬剤部システムなどの各部門の部門システムなどのことです。
冒頭にもあったように、最近では病床数が600床を超えるような病院での電子カルテの導入率は約90%となっており、病院情報システムは発展・普及を続けています。

医療情報の利用を考えるにあたっては、大きく「一次利用」と「二次利用」に分けられます。
「一次利用」とは、患者に検査を実施しその結果から診断を下すといった、収集した情報を本来の目的のために利用することを言います。
また、「二次利用」とは、その医療情報を収集する本来の目的以外のために利用することを言います。
例えば、病院の経営管理の指標となる統計作成や医療の質や効率の評価のための利用などです。

病院においてはEBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づいた医療)が求められています。EBMを実現するために、さまざま医療情報を蓄積・活用することは必要不可欠となっています。


2.二次利用のためのデータウェアハウス(DWH)の必要性

病院において病院情報システムが利用されるようになって以来、病院情報システムに蓄積されたデータを二次利用することは重要な目標とされてきました。一般企業と同様に業務系データベースと分析用データベースは分離され、分析用にデータウェアハウス(DWH)を導入・利用する病院が増えてきています。

DWHは電子カルテメーカーが提供しているのが一般的です。冒頭で述べた通り、病院にはさまざなシステムが存在し、各システムごとにデータベースでデータが管理されています。ある電子カルテメーカーのDWHは、主要な病院情報システムごとに業務システムのデータベース・レプリカ(複製)として提供されています。例えば、電子カルテシステム用DWH、医事会計システム用DWH、などです。
最近では、電子カルテメーカーだけでなく、サードベンダーからも独自のノウハウを活かしたデータウェアハウス・ソリューションが提供されています。


3.Office製品での分析の限界、BIツールの登場

医療情報の可視化・分析する上で、様々なツールが使われています。例えば、Microsoft OfficeのExcelはデータ抽出や資料作成などで多く利用されています。また、データ量が多くなり、Excelでは扱いきれないような場合は、一部のパワーユーザーがAccessを使ってデータ抽出・加工処理を行っているケースもあります。

世の中で「ビッグデータ」というキーワードがトレンドとなっていた頃、病院でも「ビッグデータ利活用」が注目を浴びました。保健医療分野でのビッグデータとしてはレセプトや特定健診データのNDB(National Database)や全国がん登録DBなどの公的なデータベースがありますが、病院内のビッグデータとしては、電子カルテDWHデータ、電子カルテのアクセスログやDPC(病院が国から診療報酬を受け取る制度のために作られた診断群分類)データなどがあります。

ビッグデータ活用のニーズは高まる一方で、普段使っているExcelやAccessなどのOffice製品では100万件や1000万件を超えるデータを扱うには限界があります。

そこで、2010年頃からBIツールが一躍脚光を浴びました。弊社が取り扱っているインメモリBIツール「QlikView」もその代表的なBIツールです。「QlikView」は「連想技術」という特許技術とデータの圧縮・インメモリ技術で、数千万件といったデータもレスポンスよく扱えるため、ビッグデータ活用のためのOffice製品に代わる便利なツールとして大学病院の先生や診療情報扱う現場の方々にご利用いただくようになりました。


4.現場で使えるDWHには”データ連携”が必要

医療現場においてBIツールが利用されるようになることで、大量データを扱うこともできるようにはなりましたが、分析に必要な情報がDWHに蓄積されていなかったり、蓄積されていてもそのままでは求める形でデータが可視化・分析できずに、結局、一旦抽出して更に加工が必要になる、といった課題も存在しています。

DWHに蓄積するデータは、業務システムのデータの単なるレプリカ(複製)ではなく、様々な業務システムの情報を分析しやすい形になっていることが理想的です。

医療情報の二次利用に早くから取り組まれている病院では、DWHに必要なデータが存在しない場合でも、電子カルテメーカーに依頼して業務システムからCSVデータとして抽出してもらい、そのデータを直接BIツールで加工して可視化・分析を行ったりしていました。しかし、この方法は個別対応が必要となり、決して効率的とは言えません。

さまざまな病院情報システムのデータベースから、分析のための統合データウェアハウスを構築するためには、各システムのデータベースからデータを抽出・加工・ロードを行って、統合データウェアハウスのテーブルに格納することが求められます。この処理はSQLなどで個別にプログラミングすることも可能ですが、技術的なハードルも高く、メンテナンス性が低くなってしまいます。

その課題を解決するべく、昨今では、病院情報システムの統合データウェアハウス構築におけるデータ連携製品の必要性が高まっています。

データ連携製品を使うことで、各業務システムからの複雑なETL処理を見える化し、効率よく統合データウェアハウスを構築・運用していくことが可能となります。


製品組み合わせ例

病院の情報システムにはデータ連携が必須!そのワケとは 構成イメージ図


アシストでは、データにまつわる様々な解決策を用意しております。
なにかお悩みがありましたら、いつでもご相談ください!


執筆者情報

執筆者情報

月足 俊博 (つきあし としひろ)
西日本支社 技術統括部 九州営業所 九州技術2課

1991年 株式会社アシストに新卒で入社。 メインフレームの開発支援言語(4GL)から始まり、主に開発支援系、 情報活用系ソフトウェアのフィールドエンジニアとして活動。 その後、ベンチャー企業に転職を経験後、2002年に再入社。 SFA製品の担当を経て、2010年から医療業界へのBIツールの 提案、導入、サポートを中心に活動中。

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