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営業自らが作り、育てる「セールスコックピット」の取り組み!

営業自らが作り、育てる「セールスコックピット」の取り組み!

コ二カミノルタジャパン株式会社では、営業が主導する形で営業ワークフロー改革プロジェクトを推進。この活動の中では、営業活動で使う様々なデータを分析する「セールスコックピット」という基盤を構築し、営業業務の改革を進めています。プロジェクトの推進役を担当した コ二カミノルタジャパン 営業推進統括部 統括部長の長井隆宏様に「営業部門における真のデータ活用とは何か」をテーマに、ご講演いただきました。



1. 営業ワークフロー改革プロジェクトの概要

1-1)プロジェクト発足の背景

コニカミノルタという会社名は、皆様にとってお正月の社会人駅伝やプラネタリウムなどのイメージがあるかと思います。
古くは、コニカとミノルタという2つの会社がありましたが、2003年の経営統合によりコニカミノルタとなり、当社はその国内販売会社となります。カメラ、フィルムが創業事業ですので、主に光学技術を生かした多品種の事業を展開しています。

当社では、営業ワークフロー改革プロジェクトを進めましたが、これには2つの大きなきっかけがありました。

1つ目は、営業現場の声です。当時のシステムは製品起点が主であり、アカウントプランから始まる営業の実業務との乖離がありました。このため、営業現場から見直しを求める声が多く、特に営業の仕事の進め方である営業業務ワークフローに課題があがっていました。
2つ目は、コロナ禍における喫緊の課題として、リアルやオンラインといった営業様式の進化の必要性です。営業生産性向上、固定費削減を含めた構造改革が求められていました。

ワークフロー改革というと、システムが主導でどうしても営業職はそのシステムを受け入れる、というように受動的になりがちです。しかし、今回のプロジェクトは改革には営業視点が重要であることから、営業及び営業職に近しい部門を巻き込んで、営業自ら主体となって進めてきました。

いかに営業自身の主体的な活動として進めることができるかが、プロジェクトにとっても非常に重要だったと感じています。

1-2)営業業務の棚卸から見えたデータ課題


改革で目指す姿を考えるにあたり、「会社の指針」は重要な要素であり、あるべき姿の軸としていました。

会社の指針
  • 継続性のある企業
  • 顧客提供価値を追求している企業
  • 個人の人財が輝く企業


上記3つのあるべき姿が、自分たちが取り組む改革の先に繋がっていることが重要であり、その実現のために営業自身が何ができるかを考え、取り組みました。 営業のあるべき姿を「顧客課題解決によるビジネスを継続的に行えるよう、営業活動に対する準備及び顧客接点時間・回数に充てる時間が最大化されている状態」と掲げ、改革を進めました。

まずは、当社における営業活動ステップを分け営業業務の棚卸しを行いました。この棚卸しにより顕在化したのが、営業活動で利用するデータ入手の課題です。必要なデータは様々なデータソースから入手され、営業担当者によりデータの入手方法が違う、マネジメント層と一般層で必要としている情報の分析の仕方が違うなど、必要なシーンで適切なデータを誰もが簡単に入手できる状態ではありませんでした。改革では、ここに着目しました。

1-3)データに着目する意義

データは営業のあらゆるシーンで活用されます。 データの分析は、営業活動における顧客課題解決を行うための手段です。日々の営業活動報告、案件情報、お客様との商談内容、販売金額など様々なデータを、可能な限り短い時間で入手・分析ができれば、お客様に寄り添った価値提供を行うための対策や検討、戦略立案に専念できます。

戦略的な打ち手を逃さずに機会損失を防ぐためにも、データの入手や分析を誰でも簡単に可能とするプラットフォームが必要であり、これに取り組むことで、営業活動準備及び顧客接点時間・回数が最大化されると考えました。

ところが営業活動で利用するデータは点在している。そこで、データ連携ツールDataSpiderを利用して、1つのデータベースにデータを集約し分散していたデータに繋がりを持たせました。
そして営業自身がデータを入手して分析するためのプラットフォームとして企画したのが「セールスコックピット」です。

フロー図



2. データ分析基盤「セールスコックピット」への取り組み

2-1)データ活用の課題

データをなかなか活用できないという課題を皆様もお持ちではないでしょうか。「データを活用する」というのは、「情報」「手段」「意思」の3つの段階で捉え、どこに課題があるのかを把握して解決策を検討する必要があります。

  • 情報
  •   活用したい多種多様な情報がデータとして存在し一元管理されている
  • 手段
  •   データを活用する手段が存在していて、必要なときに、誰もが利用可能な状態となっている
  • 意思
  •   どうデータを活かすのか、何に使うのか、その意思があること

課題

当社のデータ活用の課題は、次の3つでした。

1.考える時間の不足 実務を優先する中で「なぜデータが必要なのか」「どう活用するのか」について考える時間が少し疎かになっていました。上述の「➂意思」にあたります。

2.情報活用の偏り 線ではなく点での情報活用となっていたため、本当の意味で営業活動へデータを活かせている人財が限られていました。上述の「①情報」にあたります。

3.活かし切れないBIツール 営業要望を聞き入れた機能はありましたが、BIツール自体が精査されていないため、データの抽出時間が非常に長く、また抽出対象が肥大化してしまっていました。上述の「➁手段」にあたります。


2-2)システムのあるべき姿に向けて

1.考える時間の不足---徹底的に考える なぜデータが必要なのか?どう活用するのか?考える時間がないのではなく、必要性を感じていないから考えないのではないか?そこで、データを活用する必要性を今一度見直す、ということを実施しました。

大量のデータの中から本当に必要となるデータを棚卸しすることで、データ活用とは何かを明確化し、データ活用がきちんとできている状態をイメージしていきました。

データ活用をイメージ


2.情報活用の偏り---情報をカテゴライズ データ活用ができている人は、データをどんなカテゴリーで取りまとめればよいかを自身のノウハウとして持っていました。そのため、軸ごとにデータやノウハウを集めて、属人的ではなく誰もが情報を見られる仕組みを作り標準化するという対策を取りました。

3.活かしきれないBIツール---柔軟性の高い環境作り 情報の軸はビジネス環境に応じて変化をしていきますし、営業がデータを活用したいシーンは継続的に発生します。そのため柔軟性のあるシステムで対応することで、常に営業活動に即したBIツールであり続けデータ活用を促進できるようにしました。

また、外的要因と技術進化の影響を受けながら柔軟なシステムを保持していくためには内製化できることも非常に重要で、今回のセールスコックピットでも特に重要視した点です。

内製化には、『社内で完結するため市場の変化に迅速かつ柔軟に対応できる』『社内にシステム開発のノウハウを蓄積できる』『現場のニーズをより正確に反映できる』などの利点があります。

WebFOCUSを選定

システム開発の内製化ができるか、業務要件を満たすことができるかといった観点から、アシスト社のWebFOCUSを採用しました。前述した情報、手段、意思のうち、手段に対する打ち手となるわけですが、常に変化や進化をさせていくうえで、また営業自ら手段を育てていくという観点でも、柔軟性の高いWebFOCUSが最善であるという判断でした。


3. 営業活動の変化

営業自らが情報の整理や明確化、軸を作って反映するなどデータ活用を進めながら、システム面ではビジネス環境の変化に伴う軸の変化を容易に反映できる仕組みを実装し、セールスコックピットを作り上げていきました。
営業自らが考えた欲しい情報や分析軸がシステムに柔軟に反映されていることで、あるべき営業活動へとつなげていくことができました。

実際のシステムの画面イメージです。ダッシュボードや検索軸が実装され、誰でも容易に営業活動に即したデータ活用ができる仕組みになっています。


ダッシュボード


せっかく作ったデータ活用の仕組みも使われなければ意味がなく、営業自身が常に考えて活用し続けなければ目指す姿は実現できません。データの活用や展開における推進も、営業自らが行うことに今は取り組んでいます。
具体的には、問い合わせへの対応、操作のフォロー勉強会、利用シーンや活用事例の共有、などです。もっと利用していくための推進チームを形成し、主体的に取り組んでデータ活用を推進していく、これがまさに「営業が育てる」ということだと思っています。


データ活用の推進状況を定量的に表したものです。セールスコックピットに搭載されている機能の利用状況を月毎に可視化してみました。

グラフ

利用数が増加して利用頻度が高いまま推移してるものもあれば、利用数が一定のもの、変動がないもの、機能によって活用の頻度にばらつきが出ていることがわかります。全体としては右肩上がりで利用が増えてきており、データ活用という手段についての効果が見えてきています。
営業活動そのものでは、「セールスコックピットを利用した新しい営業活動ができている」という変化を効果としてみています。

訪問前の顧客分析やお客様の課題に沿ったアカウントプランの策定、同業他社の事例情報など、様々なシーンでセールスコックピットの利用が定着してきています。

4. 「営業自ら」という戦略

営業が自ら取り組んだ結果、営業の意識も変わってきました。営業自身がデータ活用しながら自ら気づきを発生させることができるようになり、これがデジタルトランスフォーメーションに繋がっていると考えています。

少し大げさかもしれませんが、データ活用と営業活動とが互いに作用することで、効果や機能を高め合うシナジーが生まれてきています。


営業の行動変化


データを活用していけば、今度はそのデータをもっとたくさん入手したくなってきます。そうなると、新たな課題や変化が生まれてくるのは当然なので、今後はそのデータ活用プロセスをさらに変化させていくことが必要であると認識しています。

営業部門において、真のデータ活用を追求するということは、どういうことなのか?それは営業自らが必要な情報を自分自身で整理して、様々な分析観点を作っていくことではないでしょうか。情報の軸を自ら作って、自らの観点を作り分析していくことが、さらなる営業の進化に繋がっていくと信じています。まさにここが「営業自ら、育て、作っていく」という取り組みに繋がっていくと考えています。

弊社の場合は、営業に着目をして、営業が自ら考えて作り、育て、変えていくという形で、デジタルトランスフォーメーションの具体化に着手しました。どうなっていきたいか?どのように目指し取り組んでいくか?どれぐらいの期間で?など、まだまだ道半ばではありますが、「営業自ら」という戦略をもってまずはスタートを切りました。

変化が激しい世の中ですので、デジタルやテクノロジーを活用して進化していくために、常に自分自身、営業自身がどうなりたいかを考えることが重要だと思います。ご紹介した、弊社のセールスコックピットの取り組みが、皆様の変化を起こすきっかけとなれば幸いです。


本稿は、2024年7月に開催したアシストフォーラム「営業自らが作り、育てる「セールスコックピット」の取り組み!」のセッションを基にした記事です。




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