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2023.12.22

【JP1/AJS3】無償利用可!V13新機能「マネジメントポータル」でJP1/AJS3の稼働状況を可視化

【JP1/AJS3】無償利用可!V13新機能「マネジメントポータル」でジョブの稼働状況を可視化

JP1/AJS3の運用業務において、「JP1/AJS3に何か問題が生じているのか確認したいが、どこから調べれば良いか分からない」という経験はありませんか?

そのような声にお応えするために、JP1/AJS3 V13では「マネジメントポータル」機能が導入されました。「マネジメントポータル」を利用することで、JP1/AJS3システムのリアルタイムな稼働状況をWeb画面で確認できます。これにより、ジョブ実行を防ぐ要因がどこにあるか、データベースの使用状況に問題がないかなど、システムの状況をすばやく簡易的に把握することが可能です。

本記事では、V13で新たに実装されたマネジメントポータルの機能について詳しくご紹介します。
※マネジメントポータル機能を利用するには、JP1/AJS3 - Web Consoleのセットアップが必要です。セットアップ手順は、後述のマニュアルをご参照ください。


マネジメントポータルの画面

マネジメントポータルにログインすると[サマリ]画面が表示されます。

サマリ

[サマリ]画面

[サマリ]画面の表示説明

接続先のマネージャーの稼働状況
画面上部には、接続したマネージャーホストの稼働状況([サマリ]画面上に表示されている情報の中で一番深刻な状態のステータス)が表示されます。上記画像では、接続先マネージャーホスト名が「localhost」、ステータス「異常」であることが分かります。

ホストサービス
JP1/AJS3サービスのうち、ホストサービス管理機能の状態が表示されます。

エージェントサービス
JP1/AJS3サービスのうち、エージェントサービス管理機能の状態が表示されます。

スケジューラーサービス
スケジューラーサービスの稼働状況が表示されます。上記画像では、正常状態のスケジューラーサービスが1つあることが分かります。

データベース
データベースの稼働状況が表示されます。上記画像では、警告状態のデータベースが1つあることが分かります。セットアップ識別子から、警告状態のデータベース名が「_JF0」であることが分かります。

実行ホスト
実行エージェントの通信状態が表示されます。上記画像では、正常状態の実行エージェントが3つ、異常状態の実行エージェントが1つあることが分かります。


[サマリ]画面からは、下記3つの画面を起動することができます。各画面で、稼働状況の詳細を確認できます。
 ・[スケジューラーサービス詳細]画面
 ・[データベース詳細]画面
 ・[実行ホスト詳細]画面

続いて、各画面について説明します。


スケジューラーサービス詳細

[スケジューラーサービス詳細]画面では、スケジューラーサービスの状態が表示されます。対象ホストでスケジューラーサービスを多重化している場合は、各スケジューラーサービスの状態を確認することができます。

スケジューラーサービス1

[スケジューラーサービス詳細]画面


[運用環境]をクリックすると、[スケジューラーサービス運用環境]画面が開き、ajsstatusコマンドから得られた情報を確認することができます。

[スケジューラーサービス運用環境]画面

ワンポイントアドバイス

[スケジューラーサービス運用環境]画面では、通常、JP1/AJS3 - Managerサーバーでajsstatusコマンドを実行しなければ分からないスケジューラーサービスに関する情報を、簡単に確認することができます。例えば、スケジューラーログファイル(ジョブネットやジョブの実行開始・終了などに関するログ)の場所などをここで確かめることが可能です。


[状態]では、[スケジューラーサービスの状態]、[抑止機能]、[終了制限]を確認することができます。これらの情報は、ajsstatusコマンドから得られた情報を表示しています。出力項目は下記の通りです。詳細はajsstatusのマニュアルをご参照ください。

・スケジューラーサービスの状態:運用中 / 停止 / メンテナンス中
・抑止機能:ジョブ実行 / なし
・終了制限:スケジュール / ジョブネット / ジョブ / なし / 強制停止 / 停止 / 制限解除


JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス
 - ajsstatus


[ジョブ実行状況]では、[キューイングおよび実行中状態のジョブ数]を確認することができます。表示されている数字は、稼働状況レポート(ajsreport)の「CONTENTJOB_NUM」から、過去10分間の最大値が表示されています。そのため、ここに表示されている値は、リアルタイムの値ではありません。

CONTENTJOB_NUM

集計間隔内で最も大きかった同時ジョブ実行数(キューイングおよび実行中状態のジョブの合計数)です。
ジョブとは、PCジョブ/UNIXジョブ(キューレスジョブを除く)、QUEUEジョブ、フレキシブルジョブ、HTTP接続ジョブ、カスタムジョブ、アクションジョブ(キューレスジョブを除く)、および引き継ぎ情報設定ジョブのことを指します。

JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス
 - ajsreport

[キューイングおよび実行中状態のジョブ数]の数字をクリックすると、[ジョブ実行状況詳細]画面が開きます。ここでは「CONTENTJOB_NUM」の過去10分間分の情報を1分毎にグラフで確認することができます。

[ジョブ実行状況詳細]画面

ワンポイントアドバイス

[ジョブ実行状況詳細]画面では、キューイングおよび実行中状態のジョブ数が多い時間を特定できます。ジョブが遅延しているときには、実行中やキューイング状態のジョブが想定している数を超えていないかを確認することができます。

※キューイングおよび実行中のジョブ名は、確認できません。
※グラフ中の赤い線は「MaximumContentJob」の値です。システム内で同時に実行できるキューイング中および実行中のジョブ数を示しています。黄色い線は「AlartContentJob」の値です。警告メッセージを出すキューイング中および実行中のジョブ数を示しています。

JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
 20.5.2 ジョブ実行環境の環境設定パラメーターの詳細
 (12) MaximumContentJob
 (13) AlartContentJob


[起動条件付きジョブネットの滞留状況]の[実行世代数]は、起動条件付きジョブネットの実行世代数の過去10分間の滞留数の最大値を表示します。環境設定パラメーター「CONDGENWARNINT」に設定した間隔で値が更新されます。値が更新されるまでは「0」が表示される場合があります。


JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
 20.4.2 スケジューラーサービスの環境設定パラメーターの詳細
  (119) CONDGENWARNNUM
  (118) CONDGENWARNINT


ワンポイントアドバイス

起動条件の実行世代の滞留は、システム全体の遅延やサービス起動障害などを引き起こすことがあります。滞留が発生していることが確認できた場合は、下記のブログの記事を参考に対処をご検討ください。

【JP1/AJS3】起動条件付きジョブネットの滞留を解消する3つの方法


[イベントジョブの滞留状況]の[未通知情報数]は、スケジューラーサービスに通知できていないイベントジョブなどの通知数を確認することができます。表示されている数字は、稼働状況レポート(ajsreport)の「EVJOB_UNREPORTED_EVENT_NUM」から、過去10分間の最大値が表示されています。


EVJOB_UNREPORTED_EVENT_NUM

スケジューラーサービスに通知できていない次の通知の合計数が、集計間隔内で最も大きい値を示します。
・イベントジョブの開始通知
・起動条件の成立通知
・イベント成立通知
・イベント成立以外(強制終了など)の通知

JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス
- ajsreport

[未通知情報数]をクリックすると、[イベントジョブの滞留状況詳細]画面が開きます。24時間以内のマネージャーホストへのデータ送信頻度が高い実行ホスト名と、起動条件付きジョブネット名を上位5件まで確認することができます。

[イベントジョブの滞留状況詳細]画面

ワンポイントアドバイス

未通知情報とは…
イベントジョブ(起動条件付きジョブネット内のものを含む)を実行した場合、実行したイベントジョブの定義データや、監視条件が成立した際のイベント情報などがプロセス間で通信されます。その際、通信エラーなどが発生すると、通信情報を一時ファイルに格納し、時間をおいて再試行します。JP1/AJS3ではこの一時ファイルを「未通知情報」と表現しています。

起動条件付きジョブネットに対して予期しない大量のイベントが発生すると、未通知情報が生じる可能性があります。未通知情報数が増加すると、イベントジョブがキューイングする、イベントの検知が遅延したり検知されない、といった影響が出る可能性があります。[イベントジョブの滞留状況詳細]画面では、実行ホスト名や起動条件付きジョブネット名を確認することができるので、対象のジョブネットをすばやく特定することができます。


データベース詳細

[データベース詳細]画面では、JP1/AJS3が使用している組み込みDBの領域の状態を確認することができます。円グラフで使用領域と無効領域、空き領域を確認可能なため、組み込みDBのメンテナンス時期の検討をすることができ、運用の安定化に繋がります。

[データベース詳細]画面

構成情報をクリックすると、[データベース構成情報]画面が開き、ajsembdbstatusコマンドから得られた構成情報を確認できます。

[データベース構成情報]画面

ワンポイントアドバイス

JP1/AJS3ではジョブ情報などの管理に組み込みDBを使用します。「使用領域」とは、データベースが実際に使用している領域のことです。ジョブの定義情報やジョブの実行登録情報などの管理に使用しています。
ジョブ情報などのデータの追加と削除が繰り返されると、組み込みDB内に断片化した空き領域が生じます。JP1/AJS3ではこの空き領域を「無効領域」と表現しています。無効領域には、自動メンテナンス機能やコマンドで解放しない限り新しいデータを追加することはできません。

そのため、無効領域が増加傾向にある場合は注意が必要です。無効領域が増加すると、ジョブの遅延や、異常終了に繋がります。無効領域の解消については、下記ブログをご参照ください。

【JP1/AJS3】組み込みDBの無効領域を解消してジョブ遅延を予防しよう

なお、組み込みDBの自動増分が設定されている場合、自動的に領域の拡張が行われるため、円グラフの表示が100%にはなりません。自動増分の履歴は画面から確認できないため、ディスクを使い切ることが無いよう別途ディスク容量の監視をすることを推奨します。


実行ホスト

[実行ホスト]画面では、実行エージェントの通信状態を確認することができます。通信が取れない実行エージェントは「接続不可」と表示されるため、ジョブが実行できない原因が通信状態かどうかの確認が即座に行えます。[実行ホスト]画面で、実行エージェントの状態を確認するには、マネージャーホストでジョブ配信遅延の軽減機能を有効にしておく必要があります。

JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
21.5.1 ジョブ配信遅延の軽減機能を有効にする手順

[実行ホスト]画面

実行ホストを選択し、[サービス状態]をクリックすると、JP1/AJS3のサービスの状態が表示されます。マネージャーやエージェントホストにログインをせずにサービスの状態を確認することができます。

[プロセス詳細]画面

ワンポイントアドバイス

エージェントのジョブが異常終了した場合に、GUI上から通信状態やJP1サービスを確認できるため、障害時の迅速な一次対応に繋がります。


マネジメントポータルのセットアップ

マネジメントポータルを使用する場合は、マネージャーホストおよびエージェントホストでセットアップが必要です。また、JP1/AJS3の状態を取得するための各機能のセットアップが必要です。下記のマニュアルを参照してセットアップをしてください。

▼Windowsの場合
JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
3.4 JP1/AJS3 - Web Consoleを使用する場合に必要なセットアップ

JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
6.7 Web GUI(マネジメントポータル)に関する設定

▼UNIXの場合
JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
13.3 JP1/AJS3 - Web Consoleを使用する場合に必要なセットアップ

JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
15.8 Web GUI(マネジメントポータル)に関する設定

まとめ

今回はV13の新機能であるマネジメントポータルについてご紹介しました。JP1/AJS3が安定して稼働しているかどうかをWeb画面で簡単に監視できるようになったことは、運用担当者、特にJP1/AJS3にあまり触れたことがない方には嬉しい機能ではないでしょうか。急ぎ問題の有無を確認したい時など、発生頻度の高い事象をいち早くチェックできるので、迅速な対応にも繋がると思います。

しかし、マネジメントポータルで確認した事象をログとして出力できないことや、確認後に取るべきアクションの指示表示が無いことなど、開発元へ機能拡張要求を出す必要はあると考えています。今回新登場したマネジメントポータルは、機能面ではまだ改善の余地はありますが、JP1/AJS3の標準機能として様々な情報が確認できるようになった点は評価できると思います。V13を導入された際は、ぜひお試しください。

製品正式名称(略称表記) および機能対象バージョン

JP1/Automatic Job Management System 3(JP1/AJS3)13-00以降


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執筆者情報

2022年7月に中途入社。JP1のサポートセンターにて勤務。分かりやすい回答をご案内できるように心掛けています。2023年4月より本ブログ記事を担当することになりました。
趣味は旅行です。特に京都が好きで、よく行きます。

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