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現場が納得するID管理の進め方|「超上流アプローチ」で現行踏襲の呪縛を解く

▶POP-UPトップページへ戻る    ▶技術コラム一覧へ戻る    2026.01.13


DX推進やゼロトラストセキュリティへの対応が急務となる中、ID管理システムの刷新に取り組む企業が増えています。
しかし、いざ高機能なツールを導入しても、「現場から使いにくいと不満が出る」「結局手作業が残ってしまった」という失敗事例が後を絶ちません。その原因は、ツール選びの失敗ではなく、それ以前の「超上流工程」の欠落にありました。
本コラムでは、ID管理の現場で起きているよくある課題とその解決策を、実例を交えて解説します。

<執筆者> 毛利 幹宏 Mori Mikihiro

ビジネスインフラ技術本部 システム基盤技術統括部 技術5部 課長

2006年に新卒でアシストに入社。入社以降、認証基盤、ID管理を中心にセキュリティ分野に従事。
お客様のセキュリティ課題を解決するためのソリューション提案、実装を担当。
週末は2歳の娘から求められる課題解決に奮闘中。

保有資格:情報処理安全確保支援士、CISSP、CCSK


ID管理とは?


ID管理とは、単なるアカウント作成作業ではありません。
「誰が」「どのシステムに」「どんな権限で」アクセスできるかを統制し、ビジネスの安全性と利便性を両立させる基盤です。

昨今では、ID管理の不備がそのままセキュリティ事故(情報漏洩や不正アクセス)に直結します。
ID管理は、もはやバックオフィスの事務処理ではなく、企業の信頼を守る重要なセキュリティの境界 となっています。

ID管理とは


企業が利用するあらゆるID情報を適切に管理するための基盤です。
システム利用における安全性と快適さを提供し、企業のビジネスを推進します。

一般IDと特権IDとは?


ID管理を成功させる第一歩は、管理対象を正しく理解することです。
大きく以下の2種類に分けられ、それぞれ対策が異なります。

一般ID
  • 対象   : 従業員が各業務システムを利用するためのID
  • 管理内容 : 入社・異動・退職に伴うID生成や削除、組織・役職変更に伴う権限管理
⇒ 「統合ID管理」で、IDを自動で各システムに割り当て、運用負荷を軽減とセキュリティ向上を実現する仕組みが必要
特権ID
  • 対象   : 各システム管理者・運用者が、サーバーやデータベースのメンテナンスなどを行うための高権限ID
  • 管理内容 : いつ・誰が・何をしたかの徹底的な監視・証跡管理、申請・承認フローによる厳格な統制
⇒ 「特権ID管理」で、高権限で共有利用される特殊なIDに特化した管理・運用体制が必要


では、統合ID管理と特権ID管理で、それぞれどのような課題が発生し、どのように解決していくべきなのかを見ていきましょう。


統合ID管理のよくある課題


統合ID管理でよくある課題を、実際に弊社のお客様事例からピックアップしてみました。

ルールが統一されていない


「いつIDを作り、いつ消すか」などのルールが曖昧なまま運用しているケースもあります。
ルールがきちんと定義されていないことで、退職者のIDがシステム上にいつまでも残存する(セキュリティホールになる)状態が
発生することもあるでしょう。
また、ルールが実態に合っておらず守られていない、マニュアル化されていなくて正しいルールが分からないということもあります。

運用負荷が高い


手作業の運用をしているケースでは、管理者の運用負荷が高くなります。
ユーザー数やシステム数が増えることで工数が増大していくでしょう。
システム/ツールを導入しているケースでも、複雑なルールを強いることで個別対応となり、工数の増大や属人化に繋がります。

システムがブラックボックス化している


長年の運用で積み重なった「特定の役職者だけの謎ルール」や「スクラッチ開発時の複雑なロジック」などがあることで、
システムがブラックボックス化します。
これらを許してしまうと、新システム/ツールへの移行時には、さらに過度なカスタマイズを行うことになります。
その結果、担当者が代わると誰も中身が分からない「触るのが怖いシステム」が完成してしまいます。

統合ID管理の課題解決のポイント


よくある課題を解決するには「超上流工程」で業務そのものを見直すことが重要になります。

超上流工程とは


システムやソフトウェアの構築における設計などの上流工程よりもさらに上流の
「システム化の方向性」「システム化計画」「要件定義」を行う工程 を指しています。


超上流工程は、システム構築を成功に導くための第一歩です。
関係者の要求を分析して正しく理解し、システムの目指すべき方向性を決めていきましょう。
具体的には、以下のポイントを押さえておきましょう。

As-Is(現状)とTo-Be(あるべき姿)のギャップを分析する


既存ルールや既存ツールの仕様を解析するのではなく「ビジネスとして本来どうあるべきか」という視点から要件を定義し直します。
「なぜその承認が必要か?」を問い直し、不要な業務を「断捨離」する勇気が必要です。

ルールを厳格に定義する


IDのライフサイクルに関しては「入社日の何日前にIDを有効化するか」「退職後は即時削除か、引き継ぎ用に残すか」といった「IDが存在する期間=リスク期間」を明確に定義し、システムが安全な状態を担保します。
他にも権限管理や認証、監査、運用などのルールを決めておきます。

無理のない自動化・標準化を目指す


システム/ツールを導入する際には「現行維持」ではなく、ツールに合わせた柔軟な設計を心がけます。
As-IsとTo-Beの分析結果をもとに、必要な業務に合わせて一から検討します。
そうすることで、例外対応や属人化、複雑なカスタマイズを防ぐことができます。

統合ID管理の課題解決事例


前述のポイントを踏まえ、アシストが実際に支援をしたお客様事例を見てみましょう。

A社の事例
  • 独自開発システムがブラックボックス化していたA社。
  • 現行解析に時間を費やすのをやめて「本来あるべきID管理」をゼロベースで定義しました。
⇒ 不要な例外処理を排除し、パッケージ製品の標準機能に業務を合わせることで、運用の透明化を実現しました。
B社の事例
  • 既存のID管理システムに不安を抱えていたB社。
  • ID管理をセキュリティ基盤として位置づけ、特有のルールなどを排除して一から運用を見直しました。
⇒ クラウドシフトやゼロトラストなどを意識した目指すべき姿を実現できました。


このように、現行踏襲に拘らず、超上流工程から見直すことが成功の秘訣と言えるでしょう。

特権ID管理のよくある課題


統合ID管理と特権ID管理では、よくある課題も異なってきます。
実際に弊社のお客様事例からピックアップしてみました。

ステークホルダー間に認識のズレが発生する


特権ID管理には、利用部門、承認者、監査担当、システム管理者など多くの関係者が登場します。
「誰が何を承認するのか」や「新システム/ツールを使った運用イメージ」に認識のズレが発生すると、運用テスト段階で大混乱に陥ります。

現場がルールを受け入れてくれない


現場の実情を無視して「事前申請必須」「ログの全件突き合わせ」などの厳格なルールを押し付けると、現場は「緊急対応が間に合わない」「手順が面倒だ」と反発します。
結果「申請なしで特権IDを使う」という抜け道が常態化し、ルールが形骸化してしまいます。

システム/ツール導入前の検証が終わらない


誤って特権IDを付与することなど、あってはなりません。
しかし、むやみに不安になって「あれもこれも確認したい」と欲張ってしまうことで、検証項目が膨大になり、導入プロジェクトが長期化・頓挫するケースも少なくありません。

特権ID管理の課題解決のポイント


よくある課題を解決するには「超上流工程」で「現場が腹落ちする運用設計」を固めることが重要になります。

業務フローを徹底的に可視化する


「申請→承認→作業→監査」の流れを図式化し、新システム/ツール導入後に誰がどう動くかを具体的にイメージしてもらいます。
現場担当者に「新システム/ツールの方が楽になる・安全になる」と理解してもらうことが不可欠です。

メリハリのある統制を目指す


全てのシステムを一律に厳しく管理する必要はありません。
重要なシステムは厳格な事前申請を求める一方、低リスクな対象は事後承認を許容するなど「守るべきもの」に合わせた現実的な運用レベルを設定します。

システム/ツール導入前の検証に優先順位をつける


短期間で効率的に検証を行うため、確認項目に優先順位(Must・Want)をつけます。
「緊急時の承認者不在対応」など、運用のボトルネックになりそうな重要項目に絞って検証を進めます。

特権ID管理の課題解決事例


前述のポイントを踏まえ、アシストが実際に支援をしたお客様事例を見てみましょう。

C社の事例
  • 特権ID管理システムを初めて導入するC社。
  • 利用者、承認者、監査者、システム管理者と関係者が多く、それぞれの役割でやっていることがバラバラでした。
  • そこで、要件整理をしながら業務フローを使って可視化を実施。
⇒ 現状把握と導入後のイメージをつかんでもらうことで、検討がスムーズに進みました。
D社の事例
  • ツール導入済みだがルールが形骸化していたD社。
  • 現場へのヒアリングで「作業が止まるポイント」を特定し、
  • セキュリティレベルを維持しつつ 現場が許容できる現実的なルールへ修正。
⇒ 現実的な落としどころを見つけることで、統制を取り戻しました。


このように、多くの関係者が関わるからこそ、現場が納得のいく運用に落とし込むことが成功の秘訣と言えるでしょう。

アシストがお手伝いできること


ID管理の成否は、システム/ツール導入前の「超上流工程」で決まります。
「現行踏襲」の呪縛を解き、将来のビジネスを支える強固なセキュリティ基盤を構築するには、中立な視点での現状分析と、豊富な知見に基づく設計支援が有効です。

弊社アシストは、25年以上にわたりID管理分野の課題解決を支援してきました。
現状分析からポリシー策定、最適なソリューションの実装・定着までを一気通貫でサポートします。
もちろん、統合ID管理では「LDAP Manager(エルダップ マネージャー)」や「Okta(オクタ)」、特権ID管理では「iDoperation(アイディーオペレーション)」などのツールのご提案も可能です。

「何から手をつければいいかわからない」「ツールを導入したけれど運用が回っていない」
そうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
手戻りのない最短ルートでのプロジェクト推進をご支援します。

参考


ID管理、アイデンティティ管理の対策を選定する方法

ID管理ソリューションの選定で後悔しないための
ポイントをご紹介します。

\ ソリューション選定のためにやっておきたいこと /
・ビジネス視点での目的や未来像を確認する
・自社で利用しているID情報を分類する
・それぞれのIDの課題やリスクをマッピング
・課題やリスクの対策方法と該当ソリューションを確認する



 
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