クラウドサービス後発組ならでは!Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の魅力とは?
2023.7.10
<執筆者> 冷水 直也 Hiyamizu Naoya
ビジネスインフラ技術本部
データベース技術統括部 技術3部 部長
2003年に入社し、データベース分野を中心に西日本で活動。その後、4年間の東京勤務ではデータベース仮想化製品の立ち上げを担当。帰阪した現在は、西日本のデータベース技術部隊の責任者となる。
徹底的に物事を追求する性格が災いすることが多く、比較的多趣味なほうだが、人生で一度も趣味を楽しめたことがないことが悩み。全く思いどおりにならないゴルフは、4年間一度も楽しいと思えないまま休止中。最近はロードバイク、キャンプ、ジム通いを嗜み中。いつか心から楽しめる趣味に出会えますように。
はじめに
こんにちは。2023年5月から、データベース技術統括部 西日本エリアの部長になった冷水直也です。
皆様は2019年に東京リージョンが開設された、Oracle社のパブリッククラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)
」をご存知でしょうか?Amazon社の「AWS」やMicrosoft社の「Azure」に比べると、まだまだ知名度が低いのが実情です。
そんな中、IT業界でも話題になったのが、「OCI」と「Azure」の連携を強化する「Oracle Database Service for Microsoft Azure」のリリースです。(詳細は後述します。)
このサービスからも「マルチクラウドの活用が当たり前になる時代」の前兆を感じており、個人的にも今後の各社の動向を楽しみにしています。
数年後にはクラウドサービスの種類を意識せず、ただただ「サービスを利用するだけ」の時代も来るのでしょうか。
まるで電気やガス、水道のように。
そんなマルチクラウド時代に最適なクラウドサービスを選んでもらうため、本コラムでは、まだ世の中に出ている情報が少ないであろう「OCI」に関してお話ししたいと思います。
Oracle Cloud の差別化ポイント
「AWS」や「Azure」に比べてクラウドサービスへの参入が遅かったOCIですが、後発組だからこそ、各サービスの良いとこどりを実現しています。
そこで、他社サービスと比較して「OCIのココがすごい」差別化ポイントを3つ紹介します。
1.コストパフォーマンスが良い
他社サービスと比較しても、OCIはコストパフォーマンスが良いと言えます。
▼コストが低い
他社サービスとOCIのコストを比較してみましょう。
OCIでは、
・コンピュート
・ストレージ
・ネットワーク
の全てのサービスで、
圧倒的なコストパフォーマンスを実現
しています。
コストの比較(一例)
|
▼リソースの柔軟な組み合わせが可能
OCIのコンピュートサービスでは、
・CPUとメモリを、自由に組み合わせることができる
・一度選択した組み合わせを、後で柔軟に変更できる
という点が大変好評です。
多くの他社サービスでは「CPU1つ、メモリ8GBの仮想マシン」のような型を用意し、利用者はいくつかの型の中から要件に合うものを選定します。
しかし、
・必要なCPU数に合わせるとメモリが足りない
・必要なメモリに合わせるとCPU数が多すぎてコストが高くなる
というケースが少なからず発生します。
OCIではそういったケースがなく、真の意味で
「必要なときに必要なだけ」を実現
できます。
▼ネットワークを無償で提供
OCIのネットワークサービスでは、
・アウトバウンド通信が月額10TBまで無償
・専用線接続時(Oracle FastConnect利用時)ならアウトバウンド通信が無償
となっており、他社サービスと大きく差をつけています。
弊社のお客様から「アウトバウンド通信が無償提供になっている部分をもっとアピールしたほうがいいよ」とアドバイスをいただいたことがあり、それ以来、ずっとアピールしています。(あの時にアドバイスをくださったお客様、ありがとうございます。)
2.データベースサービスに強い
Oracle社が提供しているクラウドサービスなだけあって、Oracle Databaseを利用するユーザーにとっては嬉しい機能がたくさんあります。
▼スペックが優れている
OCIは、デフォルトで高いIOPSやスループットを提供しています。
低価格な上、IOPSをアップさせるための追加費用も不要です。
データベーススペックの比較
OCI | 他社クラウド | |||
---|---|---|---|---|
タイプ | バランスタイプ (※デフォルト) |
通常SSDタイプ (※デフォルト) |
高速SSDタイプ | |
サイズ | 50 GB ~ 32 TB | 1 GB ~ 16 TB | 4 GB ~ 16 GB | |
IOPS | 1GBあたり | 60 IOPS | 3 IOPS | 最大50 IOPS |
最大 | 25,000 IOPS | 16,000 IOPS | 64,000 IOPS | |
スループット | 最大 | 480 MB / 秒 | 250 MP / 秒 | 1,000 MB / 秒 |
価格 | サイズ | 5.1 円 / 1 GB | 11 円 / 1 GB | 13.7 円 / 1 GB |
IOPS | - | - | 7.12 円 / 1 IOPS |
それだけでなく、
・他社クラウドでは実現できない高可用性構成である「Oracle RAC」を提供している
・Data Guardを簡単に組める
という点から、
高い可用性や障害対策を重視する
場合は、特におすすめです。
▼様々なOracle Databaseオプションが利用できる
OCI専用のOracle Databaseエディションでは、オンプレミスでは別途費用が必要だった
・データベース診断用のオプション(Diagnostics Pack)
・自動チューニング用のオプション(Tuning Pack)
などが、追加料金なく利用可能です。
Oracle Database エディションの比較
オンプレミスと共通のエディション | OCI専用のエディション | ||
---|---|---|---|
Standard Edition (SE) |
Enterprise Edition (EE) |
EE High Performance (EEHP) |
EE Extreme Performance
(EEEP) |
オンプレミスのDBSEと同じ 機能を提供 |
オンプレミスのDBEEに加えて 以下のオプションが利用可能 ・Diagnostics Packs ・Tuning Packs ・Real Application Testing ・Data Masking and Subsetting Pack |
左記EEに加えて 以下のオプションが利用可能 (個別選択不要) ・Multitenant ・Partitioning ・Advanced Compression ・Advanced Security ・Database Vault ・Label Security ・OLAP、Spatial ・Management Packs |
左記EEHPに加えて 以下のオプションが利用可能 (個別選択不要) ・Real Application Clusters(RAC) ・Database In-Memory ・Active Data Guard |
Oracle Databaseを、オンプレミスと同じような感覚、もしくはそれ以上の利便性で使いたい
利用者にとっては嬉しいオプションが多く含まれます。
▼簡単にOracle Databaseのクラウド移行テストができる
OCIのデータベースライセンスに含まれる Real Application Testing(以下、RAT)の一機能に SQL Performance Analyzer(以下、SPA)があります。
SPAは、現行環境と新環境との間でSQLが動くかどうかの非互換チェックや、パフォーマンス比較ができる機能です。
SPAを利用することで、現行環境でキャプチャしたSQLをOCI上ですぐに実行することができます。
「全SQLのうち約98%はエラーなく実行できるが、残り2%は個別に改修してください」というような精度の高いアドバイスを出してくれる非常に優秀なサービスです。
このアドバイスのおかげで「網羅的に全SQLのテストをしなくてよくなった」という事例も多数あります。
<参考:関西電力株式会社 事例>
Oracle Cloud+Oracle RATで約23,000のSQLを漏れなく事前検証、本番稼働後の性能障害を阻止
オンプレからクラウドへの「リフト&シフト」のはじめの一歩として
「OCI+RAT(SPA)によるテスト」の実施
がおすすめです。
3.マルチクラウド戦略に長けている
OCIにするメリットは多くありますが、弊社としては「とにかく他社サービスからOCIに乗り換えてほしい」と思っているわけではありません。
企業として重要なデータベースを中心に、各サービスをうまく組み合わせながら共存共栄すべきだと考えています。
特に、一般的な企業で数多く使われるWindows、Windows Server、Microsoft 365をはじめとしたMicrosoft製品の普及率は高く、これらのサービスとの親和性が高いAzureは、お客様にとって外すことのできないクラウドサービスではないでしょうか。
そんな折、OracleとMicrosoftはマルチクラウドの取り組みを推進すべく、2019年にクラウドパートナーシップを結びました。
そして、2022年には、冒頭で触れた「Oracle Database Service for Microsoft Azure」をリリースしています。
「Oracle Database Service for Microsoft Azure」とは
OCIとAzure間のネットワークをシームレスにつなぐためのサービス。
「OCI Azure Interconnect」と「Azure」の管理画面から、OCIのサービスを違和感なく利用できる。
<参考:Oracle社 ニュース>
オラクルとマイクロソフト、Oracle Database Service for Microsoft Azureの提供開始を発表
このサービスにより、「バックエンドにはOracle、フロントエンドにはAzure」という使い分けが可能になりました。
全てを一つのクラウドサービスで実現するのではなく、
各社のクラウドサービスの強みを生かしながらお互いをシームレスにつなぐマルチクラウド構成
が、今後のデファクトスタンダードになるのではないかと我々は予想しています。
こういった独自の尖った要素で戦っていこうとする姿、いわゆるランチェスター戦略でいう「差別化要素に特化した局所戦」は、クラウドサービスの後発組ならではの取り組みだと思っています。
Oracle Cloud の料金体系
OCIは料金体系でもメリットが多いです。
1.基本の料金プラン
OCIは従量課金モデルが基本で、以下の特徴があります。
・1つの契約だけで、全てのOCI サービスが使える
・初期費用不要で、¥0から使い始めることができる
・どのリージョンでも、同じサービスは同じ価格で使える
購入モデルは「Universal Credits」と呼ばれ、 2つの選択肢があります。
購入モデル
Pay As You Go(PAYG) | Annual Flex | |
---|---|---|
支払いのタイミング | サービス利用後 月単位 |
サービス利用前 年単位 ※未消化分は失効、超過分は翌月請求 |
最低利用料金 | 0円 | 28万円 |
最短契約期間 | なし | 1年~ |
おすすめの利用シーン | 予算が決まっていない 短期間だけ利用したい |
予算が決まっている 一定期間以上利用する |
どちらのモデルでも同じ単価が適用され、サービス利用料にOCIのサポート費用が含まれます。
そのため、ユーザーは価格の違いを気にせず、利用シーンによって購入モデルを選択することができます。
2.Oracle Databaseユーザーにとって嬉しい優遇措置
Oracle Databaseユーザーを優遇する仕組みも用意されています。
クラウド移行時のデータベースライセンスや、Oracle Databaseの保守更新費用を抑えることができます。
▼Bring Your Own License(BYOL)
BYOLとは、所有しているライセンスを持ち込むことを指します。
Oracle Databaseなどのライセンスを保有していれば、そのライセンスをOCIに持ち込むことが可能です。
もちろんAWSやAzureにもライセンスの持ち込みは可能ですが、必要となるライセンス数に違いがあります。
OCIならオンプレミスと同等のライセンスで良いですが、他社サービスでは2倍以上のライセンスが必要となる
ケースもあります。
Oracle Databaseを持ち込むなら、OCIが断然お得です。
必要なライセンス数の比較
<例:オンプレミス(IA機)からクラウドに移行する場合>
現在保有しているライセンス | 持ち込みに必要なライセンス | |||
---|---|---|---|---|
オンプレミス(IA機) | ⇒ | OCI | AWS / Azure | |
サーバスペック | 4 コア / 1CPU HT有効(8スレッド) |
⇒ | 4 OCPU(8 vCPU) | 8 vCPU |
Oracle EE | 2 Processor | ⇒ | 2 Processor(同じ) | 4 Processor(2倍) |
Oracle SE | 1 Processor | ⇒ | 1 Processor(同じ) | 2 Processor(2倍) |
▼Oracle Support Rewards
Oracle Support Rewardsは、2021年に発表された「Oracleソフトウェア保守更新費削減」プログラムです。
Annual Flexモデルのユーザーは、OCIの利用料金に応じて リワードを獲得します。
獲得したリワードは、Oracle製品の保守更新費に充当できます。
OCIの費用そのものを下げる仕組みではありませんが、既存のOracle製品の保守更新費を下げることでトータルコストを抑えることが可能です。
リワード率はOCI費用の25〜33%と高く、
大規模になればなるほど価格メリットが出やすい
プログラムです。
Oracle保守更新費を削減しながらクラウド移行を加速する強力な施策となるため、現在、非常に多くのご相談をいただいています。
リワードを活用するかしないかで数億円の差が出る事例もあり、クラウド化を目指すお客様にとって欠かすことのできないプログラムです。
Oracle Cloud の成功事例
では、具体的にどのようなお客様がOCIを採用し、どのような効果があったのでしょうか?
「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」をはじめとする教育、介護・保育分野で様々なサービスを展開する株式会社ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)様の事例を見ていきましょう。
株式会社ベネッセコーポレーション OCI導入事例
▼ポイント
・フロントエンドに「Azure」、バックエンドに「OCIのデータベース」を採用した
マルチクラウド構成
で、サービス全体のレスポンスを向上
・「Oracle Exadata Database Service」で、従前システムの性能を維持しながら
コストを最適化
▼選定背景
コロナ禍で通信教育のニーズが拡大して会員数が急増したことや、DX推進のためにクラウド環境への移行を検討していたベネッセ様。
複数のクラウドサービスを検討した結果、
・初期コストが少ない
・短期間で移行できる
・CPU数を大きく削減しても性能が担保できる
・スムーズな移行ができる
・フロントエンドに採用したAzureとの親和性が高い
という点から、OCI上で提供されるOracle Exadata Database Serviceを採用することになりました。
▼効果
移行して数ヵ月経過した現在、システムは安定稼働しており、従前システムよりも
約60%のCPUを削減
しながら性能を維持できています。
また、「Oracle Support Rewards」を活用して
ライセンスの保守更新費用を低減
し、システム全体のコストを抑えています。
<参考:株式会社ベネッセコーポレーション 事例>
ベネッセの大規模基幹システムにOracle Cloud Infrastructureが採用
このように、AzureとOCIのマルチクラウド構成により、コストを抑えながらクラウド化を実現することができています。
ベネッセ様では今後、OCI上でのDR環境構築や、現在オンプレミス環境にあるシステムのクラウド移行も検討されるそうです。
さいごに
本コラムでは、OCIの “クラウドサービス後発組ならでは” の差別化要素や、最近注目をあびつつあるマルチクラウドの事例などをお伝えしました。
個人的には、AWSやAzureがシェアをどんどん拡大していく状況を見ながら「OCIはどうなるだろうか?」と楽しみにしていましたが、最近はデータベースを軸に独自の路線を見せつつあることを頼もしく思っています。
弊社のOCI取引実績も数年前と比較すると5倍以上になっており、今や主力製品の一つです。私が管轄する西日本のデータベース技術部でも最も力をいれており、今後もお客様にOCIの魅力をどんどんお伝えしていきたいと考えています。
引き続き、弊社からも情報提供していきたいと思いますが、個別のご相談や質問があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考
[ 事例 ] Oracle Cloud導入事例
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[ オンデマンド動画 ] 誰でもわかるOracle Cloud(約20分)
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