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ITSMのベテラン技術者が語る!ITサービスマネジメント導入の失敗を防ぐ方法とは?

2024.02.08

<執筆者> 山本 翔 Yamamoto Sho

システム基盤技術統括部 技術1部

2011年より、運用管理を中心に、サービスマネジメントや業務自動化など幅広い案件にエンジニアとして従事。
2016年にアシストに中途入社。現在は、主にITサービスマネジメントの領域でお客様の課題解決に向けた提案を行うとともに、IT組織の業務改善をITILの発想を礎に支援している。
合唱演奏の指揮やボードゲームの制作など、ニッチな趣味にハマりがち。

※本コラムでは「顧客」と「ユーザー」を以下のように分けて記載します
 顧客: IT組織がサービスを提供する「企業」や「組織」を指しています。外部の企業を指す場合も、自社のビジネス部門などを指す場合もあります。
 ユーザー: 顧客に属している「実際にサービスを利用する個人」を指します。


なぜITSMを行うのか?


多くの企業でITサービスマネジメント(以下、ITSM)の重要度は年々増しています。

ITサービスマネジメント(ITSM)とは

ITサービスマネジメント(ITSM)とは、利用者のニーズにあったITサービスを提供するために必要な活動全般のことです。
具体的には、以下を指します。
・ITサービスを利用者(社員や消費者)がいつでも快適に利用できるための活動
・ITサービスを継続的に改善していくための活動

参考:【2022年版】ITSMとは?ITSMツールの違いや選ぶうえで知っておきたいポイント
   https://www.ashisuto.co.jp/enishi/service_management/itsm_tool.html


理由はいくつかありますが「ビジネス戦略」と「デジタル/IT戦略」が切り離せないものになってきていることが最も大きな要因でしょう。
昨今では、ITSMを継続的に改善し、それを活かしたビジネス戦略を立てることで企業価値を高めることができると考えられます。

また、CX(カスタマーエクスペリエンス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の観点から、お客様の体験価値向上も期待されています。
そのため、新しい技術を組み込みながらサービスを提供する必要があります。

これらを全体的かつ継続的に改善するITSMの取り組みは、全ての企業にとって必要不可欠な時代となっています。


なぜITSMの導入に失敗してしまうのか?


重要視されていながらも、ITSM導入に失敗する企業も少なくありません。

まず、ITSMには顧客にサービスを提供する過程で生じる 幅広い業務プロセスの管理と改善 が求められます。
ITSMを導入する目的や、目指すべき姿、取り組みの対象範囲を明確にできないと失敗してしまいます。
業務プロセスの有識者を巻き込みながら、目指すべき姿を明らかにする必要があります。

さらに、ITSMには 複数の組織を跨いだステークホルダーが関与 します。
彼らが持つ多様な価値観を一つにまとめ、ITSMによる最適な解決策を見つけ出すことができないと失敗してしまいます。
創造的で柔軟な思考と、ビジョンを描き組織を導く強力な推進力が必要となります。

そこで、本コラムでは、弊社がお客様のITSM導入を支援した経験から「ITSM導入の失敗パターン」を5つの観点で紹介するとともに、その失敗の回避に役立つヒントをお伝えします。


ITSM導入の失敗パターン①「目的」


なぜITSMを導入するのか明確ではない


目指す姿や目的が存在しないITSMは、いかなる場合も成功しません。まずは何を目的とするかを明確にしましょう。
目的が明確でないなら、そもそもITSMを導入するべきではありません。

▼ 失敗を回避するポイント

・ITSMの導入目的は一律ではなく、組織の価値観によって異なることを踏まえ 「ITSMによって継続的に改善したい価値」を言語化 しましょう
・「ITSMによって継続的に改善したい価値」が言語化できたら、管理領域ごとに改善項目を可視化しましょう
・顧客や上位組織の戦略と連動させることで、ステークホルダーの賛同を得られやすくなります


ITSM導入の目的

<例>


意思決定の方針に共通認識がない


意思決定の方針に一貫性がなければ、合理的なITSMの仕組みを構築できません。
また、ステークホルダーが同じ方向を向いていないと、コミュニケーションの効率が悪くなり、モチベーションの低下にも繋がります。

▼ 失敗を回避するポイント

・目的や目指す姿を明確にした後は、それらに基づき 意思決定の方針(≒価値観)を可視化し、キーマンとなる関係者と合意 しましょう
・自分たちが特に重要視する価値に共通の認識を持つことで、意思決定の透明性が高まり、関係者が一丸となって同じ方向に進むことができます
・関係者のフィードバックを踏まえ、随時方針の見直しも行えると良いです


意思決定の方針を決める時に参考となる「ITIL4:従うべき原則」

1.価値に注目する
2.現状からはじめる
3.フィードバックを元に反復して進化する
4.協働し、可視性を高める
5.包括的に考え、取り組む
6.シンプルにし、実践する
7.最適化し、自動化する

出典:ITIL4:従うべき原則 (Guiding Principle)
   https://peoplecert.jp/doc/ITIL4%20Guiding%20Principle.pdf (2024年2月8日時点の情報)

優先度を決める時に参考となる「トレードオフスライダー」

・並列する要素の重要度を評価し、優先度を可視化したもの
・スコープ/予算/時間/品質の観点が一般的だが、それらに限定しなくてもよい

<例>

ITSM導入の失敗パターン②「サービス」


提供するサービスを定義できない


サービスとは「顧客に価値を提供し、顧客とともに価値を共創するための手段」です。
ITSM導入の前提として、提供するサービスを正しく理解する必要がありますが、意外にもそれらを言語化/構造化できていないIT組織は多いです。
「どのような目的で、どのようなサービスを提供しているか?」が不明瞭な場合、IT組織が提供する価値や目指す方向にズレが生じ、顧客が期待するものと一致しなくなります。

▼ 失敗を回避するポイント

「サービスによって顧客をどのような状態にするのか」を定義 しましょう
・「組織のミッション」からのトップダウンと「日頃の業務」からのボトムアップで、サービスを分析できます
・「組織のミッション」と「日頃の業務」が一致しない部分にサービスの過不足があります
・サービスを定義しサービスカタログとして可視化すれば、組織が顧客に提供する価値も明確になり、業務の無駄な工程に気づくきっかけにもなります


サービスを整理する「サービスカタログ管理」

・IT組織が顧客に提供するサービスを明文化し、維持/改善する取り組み
・ITSM導入時点では、そのサービスで「誰を」「どうするか」の観点が特に重要
・ボトムアップに偏りやすいため、組織のミッションとの連動性も振り返りながら取り組む

<例>


顧客/ユーザーの期待を分析できない


サービスの定義は、組織が自己本位に行うのではなく、顧客にとっての価値と照らし合わせる必要があります。
顧客にとっての価値が欠落したサービスは、市場での競争力を持ちません。

▼ 失敗を回避するポイント

・様々な組織や立場のユーザーがいることを踏まえて、 顧客の「期待」や「価値」を整理 しましょう
・複数の組織と繰り返し接点を持ちながら、サービスへの期待をすり合わせることが重要です
・顧客の期待や価値を分析するには、ユーザー行動の可視化が有効です


ユーザーの行動を分析する「ユーザーストーリーマッピング」

・ユーザーの行動と、その行動を実現するプロダクトの機能を分析するための手法
・横軸でユーザー行動の時系列を、縦軸でプロダクト機能の優先順位を表現する
・プロダクト開発で用いられやすいが、ITSMシステムの要件定義でも使用できる

<例>


ITSM導入の失敗パターン③「体制」


意思決定のプロセスが明確ではない


前述では、意思決定の方針(価値観)を可視化することを推奨しましたが、それに合わせて意思決定のプロセスや役割も定義する必要があります。
「誰がどのように意思決定を行うか」が明確ではないプロジェクトは、進捗が遅延するのは当然のことながら、プロジェクト自体の形骸化や瓦解もあり得ます。

▼ 失敗を回避するポイント

・プロジェクトの開始前に重要なステークホルダーを整理し、 意思決定のプロセスを可視化、合意 しましょう
・意思決定の大部分を外部組織に依存するのではなく、あくまでIT組織が推進役を担いながら、必要な利害関係者と共に意思決定を行います


意思決定の役割分担をモデル化する「DACI(デイシー)」

・Driver(推進者): 意思決定を推進する
・Approver(承認者):意思決定を承認する
・Contributors(貢献者):意思決定を支援する
・Informed(報告先):意思決定の結果を知らされる

<例>


適切な実行体制を確立できない


実行体制が不明確であったり、いびつなバランスの役割分担であることは、プロジェクトが停滞するばかりでなく、稼働後の運用も阻害します。
特に初めてのITSM導入時にはどのような役割のチームが必要かの計画が不十分なまま始動してしまうケースも多いですが、中長期的なITSMの活用にも影響を及ぼすことがあるので注意しましょう。

▼ 失敗を回避するポイント

主要なタスクを早期に可視化し、実行体制をステークホルダーと合意 します
・宙に浮いたタスクが発生した場合の取り扱い方針も合意できると良いです
・稼働後のユーザーサポートや継続的改善を担当するチームも設けましょう
・一部の関係者にノウハウが集中しないよう、トレーニング体制も検討しましょう


タスク実行の役割分担をモデル化する「RACI(レイシー)」

・Responsible(実行責任者): タスクの実行責任を直接的に担う
・Accountable(説明責任者): タスクの完了に責任を負い、進捗を説明する
・Consulted(協業先): タスクの実行に際して相談を受ける
・Informed(報告先): タスクの進捗を知らされる

ITSM導入に登場しやすい役割


ITSM導入の失敗パターン④「構築」


専門家の支援を適切に利用できない


ITSMの専門家の支援を受けたり、ITILのように多くの企業で共通化された知見を用いることは、ITSMの仕組みの検討や構築を加速させ、企業にとっての最適な判断に繋がります。
しかし「共通化された知見」と「自分たちの価値観」のバランスを損なうことで、ITSMシステムの構築が著しく非効率的になることもあります。

▼ 失敗を回避するポイント

意思決定で最も大切なのは、顧客と組織の「価値観」 であり、専門家ではないことを忘れないようにしましょう
・専門家には「ITSM全体に対する幅広い知見」と「プロダクトの技術的な専門性」を期待し、「価値観」は自分達の手で責任をもって磨きましょう


必要でないものを作ってしまう


ITSMの取り組みは1回で完結するものではなく、継続的な改善が前提にあります。
これは仮説立証の繰り返しでもあり、効果を最初から完全に予想することはできません。
「必要ではないが、あったらいいな」という要求には特に注意が必要で、この要求を実装して維持することで、複雑なITSMの仕組みを生み出し、組織の負債となることもあります。

▼ 失敗を回避するポイント

顧客のニーズを満たす必要最小限のプロダクトを指す「MVP(Minimum Viable Product)」から始め 、徐々に改善するような発想を持ちましょう
・MVPで得られたフィードバックに優先度をつけて取り込んでいく「フィードバックループ」のサイクルを回していくと良いでしょう
・これらを実現するために、ITSMツールは「すぐに使用できるMVPの役割を持っている」ことと、フィードバックループを高速に回すために「すぐに改善できるノーコード/ローコード開発ができる」ものを選ぶことが重要です


ITSM導入の失敗パターン⑤「改善」


改善のKPIを定義/計測できない


ITSMの導入すること自体が目的となり、改善のKPIを定めないまま運用を開始してしまうケースは多いです。
しかし、KPIが可視化されなければ、ITSM自体の目的が不明瞭となり、継続的な改善が困難になります。

▼ 失敗を回避するポイント

目的の達成を測定するためのKPIは、ITSM導入時に定義 しておきましょう
・導入時はKPIも完璧ではないため、フィードバックループの中で有効性を吟味します
・KPIはITSMシステムの運用の中で自動収集できることが望ましいです
・KPIをステークホルダーに共有することで、ITSMの価値の可視化や評価に繋がります
・これらの運用をまわしていくことで、更にITSMに肯定的になり、改善が促進されるサイクルを生み出すことができます


ITSM導入の目的に対応する「KPI」

<例>


ITSMを改善できない


継続的改善を行う過程で、ITSMの仕組みも柔軟に改善されるべきです。
しかし、しかるべき計画が行われずに導入された場合、導入以降に手を加えられず塩漬けとなり、最小限の価値しか発揮できないまま風化することも珍しくはありません。

▼ 失敗を回避するポイント

「導入はゴールではなく、継続的な改善が前提である」という共通認識を持ち 、改善のマネジメントを行いましょう
・改善を推進するチーム形成や、改善を評価や報酬につなげる仕組みも検討すると良いです
・改善に柔軟に取り組むためにも、シンプルな設計や、ノーコード/ローコード開発ができるITSMツールを選ぶことも大切です


さいごに


今回は、重要でありながら一筋縄ではいかないITSM推進の勘所をお伝えしました。
ITSM導入に失敗しないために、ぜひ以下の5つのポイントを押さえていただければと思います。


ITSM導入に失敗しないための5つのポイント

1.目的を定め、共通認識を持つ
2.顧客を理解し、サービスを定義する
3.意思決定と実行の体制を明確にする
4.ITSMツールや専門家を適切に利用する
5.改善を重視し、改善を途絶えさせない


ビジネス戦略とデジタル/IT戦略を密接に織り交ぜながら、目まぐるしい環境変化への対応を求められる現代において、ITSMは企業価値を高める重要な取り組みです。
そんなITSMの導入に失敗しないためには、組織の目的や価値観にあった最適なITSMツールを選定する必要があります。
アシストでは、完全ノンコーディングで開発できる高機能な「Service Management Automation X(SMAX、スマックス) 」というITSMツールを取り扱っています。
ITSMの導入や改善に際してお困りごとや相談があれば、ぜひお気軽にご連絡ください。



参考

[ Webページ ] Service Management Automation X

[ Webページ ] Service Management Automation X

「簡単・高機能・イマドキ」 をコンセプトとしたコンテナ型ITサービスマネジメントツール(SaaS)です。

\ こんな特長があります /
・完全ノンコーディングで業務フローを作成
・主要ITプロセスはすべて標準機能 + 分析レポートも提供
・AIを活用して、過去事象からナレッジや解決策を自動提案
・ユーザーや担当者間のチャット機能を搭載

[ 動画 ] ITSMツール導入後、継続して価値あるサービスを提供できていますか?

[ 動画 ] ITSMツール導入後、継続して価値あるサービスを提供できていますか?

ITSMツールが持つべき特性や、ITSMツール「SMAX」を、デモンストレーションを交えて紹介します。(約43分)

\ ITSMツールがそなえるべき5つの特性を紹介します /
1.サービス管理に軸足をおく
2.コラボレーションを推進する
3.業務プロセスを簡素化し、定型業務を自動化する
4.データドリブンで改善を助ける
5.持続可能なガバナンスを支援する

[ サービス ] サービスデスク改善ワークショップ

サービスデスクを改善するにあたって必要なご支援を、ワークショップ形式で行います。ぜひお気軽に お問い合わせ ください。

\ こんなことを行います /
・ITSM勉強会
・業務機能階層の整理
・VSMワークショップ
・将来の構想を検討
・サービスカタログの整理



 
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