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「ナレッジ共有」と「情報検索」における課題を解決!アシストの生成AI導入までの軌跡

2024.03.07

<執筆者> 佐子 雅之 Sako Masayuki

DX推進技術本部 技術統括1部
ナレッジ・プラットフォーム技術部 部長
Glean・生成AI実践プロジェクト「1GAN」全社責任者

2001年、新卒でアシストに入社。
Oracleの技術者として10年従事した後、新規ビジネス開発や新製品立ち上げを経て、現在は動画・ガイド・Webコンテンツ管理・今回ご紹介する「生成AI × 横断検索」など、ナレッジ共有を実現する製品を担当。
最近、LLMから「人間の知識習得プロセスがどうなっているか?」に興味を持つも、もはやSFのような世界で早々に挫折。
地道に学習します。

はじめに


こんにちは。Glean・生成AI実践プロジェクト「1GAN(イチガン)」の全社責任者である佐子です。
1GANは、アシストの全社員が参加する生成AIの活用・実践プロジェクトです。
後ほどご紹介するAIアシスタント「Glean(グリーン)」の生成AIテクノロジーを使いこなし、仕事を効率化する“ワクワク”と“成長”を実感すること、その体験価値をお客様に届けることを目指しています。
本コラムでは、1GANプロジェクトの一員として、アシストの生成AIへの取り組みをご紹介したいと思います。

2020年、コロナ禍によるテレワークの本格導入に伴い、アシストでも様々な問題が発生しました。
特に顕著だったものが「気軽に質問できない」ことです。
相手の状況が目に見えないため、いつ誰に質問をすれば良いか分からない、気を遣いすぎて質問ができないという状態が散見されました。
これは勤務スタイルが変わったことはもちろんですが、そもそも「ナレッジの共有ができていない」ことや「情報検索が簡単にできない」状態にあることが問題ではないかと考えました。
そこで、アシストではこれらを解決するための製品を発掘し、全社導入を進めてきましたので、その軌跡をご紹介したいと思います。


「ナレッジ共有」における課題と解決策


プライベートで何か情報を知りたい時、どのようにして情報を仕入れますか?
最近では、やはり「YouTube」で検索することが多いのではないでしょうか。

しかし、これが業務となると、動画ではなくマニュアルが基本となることが多いです。
プライベートで見るYouTube動画はあんなに分かりやすいのに、業務に関してはややこしくて長いマニュアルを見るしかないのが当たり前……。

そんな状態を覆す「 Panopto(パノプト) 」という動画活用基盤を導入しました。
いわば「社内版YouTube」です。

2020年に導入してすぐに、想像以上の動画がアップロードされ、毎日のように活用されるようになりました。

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・操作方法を動画にする   → マニュアルを見るより分かりやすい
・勉強会の内容を動画にする → 隙間時間に好きなスピード(0.5~2倍速)で確認できる
・MTGの内容を動画で残す  → 欠席者への共有や振り返りに活用できる

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など、様々な場面で多くの効果が見られました。

そのうち、YouTubeでいうユーチューバーならぬ、Panoptoのパノラーのような社員も登場し、隠れたタレントが発掘されるという副次的な効果もみられるほど、活用が進んでいきました。


「情報検索」における課題と解決策


次に、社内ナレッジを効率よく検索することに注目しました。

当時のアシストはシステムのSaaS化を推進しており、業務単位でSaaSが導入されている状態でした。
各業務は最適化されたのですが、システムも人もサイロ化した上、コロナ禍の影響もあり、
・欲しい情報がどこにあるか分からない
・誰がその情報に詳しいか分からない
という課題を抱えていました。

そんな中、世間的にも「生成AI」がブームとなり「チャット形式で質問をすると、適切な回答をしてくれる」ような仕組みにも注目が集まりました。
そこでアシストが試した技術が「 ファインチューニング 」と「 RAG 」です。


生成AIによる回答を実現する技術① ファインチューニング


生成AIを活用するシーンとして「サポート業務における生成AIの活用ができないか?」と考えました。

通常は、お客様から問い合わせがあれば、サポートエンジニアが自分の知識や社内ナレッジを活用し、解決策を文章にまとめて回答します。
もし、ナレッジの検索や回答文の作成に生成AIを活用できれば、お客様への回答までのリードタイムを削減できる上、社内工数の削減にもつながるのではないか、という狙いです。

この時、LLMを社内利用に最適な状態までもっていくために「ファインチューニング」に挑戦しました。


ファインチューニング(Fine-Tuning、微調整)とは

既存の学習済みモデルに、追加でデータを学習させ、目的に合わせて調整する手法。


既存のFAQをベースに、各製品のバージョン固有の情報などを追加していきました。
結果としては、良い回答を得られることもありますが、多種多様なお問い合わせに対して、各製品のバージョンや前提条件を踏まえて精度が高い回答を維持することは、非常に難しいと言わざるを得ませんでした。

しかも、ファインチューニングは「やり続ける」必要があります。
一度情報の精度を上げられたとしても、それを 維持・管理する工数がかかる ため、現時点では継続的な利用は難しいと判断されました。


生成AIによる回答を実現する技術② RAG


サポート業務だけでなく「全社員が簡単に情報検索ができる環境を実現できないか?」という想いに応えてくれたのが、AIアシスタント「 Glean(グリーン) 」です。

Gleanは「ファインチューニング」ではなく、LLMと連携する「RAG」というアーキテクチャを利用しています。


RAG(Retrieval Augmented Generation、検索拡張生成)とは

LLMによるテキスト生成と、文書やテキストの検索を組み合わせて、正確な回答を得る手法。
企業内の文書を検索対象とできるため、企業内の知識を活用して生成AIの回答を実現する方法として注目されています。


<RAGを使った自動回答の流れ>

1.企業内の文書を書庫化する
2.質問があれば、Retrieverと呼ばれる仕組みが、書庫から適切な知識を見つけ出す
3.書庫と質問内容をあわせてLLMに情報を引き渡す
4.LLMが自然文を生成し、回答を返す

<RAGの概要(イメージ図)>

RAGを活用する時の課題は、以下を実現するための仕組みづくりです。

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・文書を取り込み続ける(常に最新情報を回答結果に反映する)
・質問に応じて最適な文書を抽出する(高い精度を実現する)
・権限を加味した文書検索をする(権限によって検索対象とする文書を変える)

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つまり、企業内の知識を継続的に適用し続け、企業のID管理と連携して適切な権限のもとに使える状態にしなければなりません。

これらの課題を解決するのが、 社内ドキュメントの網羅的な検索と、企業ごとのLLMをオールインワンで提供する「Glean」 です。


AIアシスタント「Glean」全社導入までの流れ


アシストは生成AIアシスタント「Glean」を全社導入し、生成AIの全社活用を進めています。
今回は、そのプロセスを含め、アシストがどのように生成AIを活用するに至ったのかを紹介したいと思います。


STEP1:検証


2022年、米国で2019年に設立されたスタートアップ企業「Glean社」とアシストが出会いました。
当時、Gleanにはまだ「生成AI」機能がなく「横断検索」機能が中心の製品でした。
それでもGleanに魅入られた我々は、すぐにGleanの社内検証を始めました。

検証時に一番懸念されていたのは「日本語環境で使えるのか?」という点です。
結果、なんと「全く使えない」という結論に……。
その後Glean社と協議を重ね、アップデートされたGleanでは問題なく日本語検索ができるようになりました。
さらに検証範囲を広げた後「これなら多くの社員を対象にPoCをしても良いのではないか」と判断しました。


Gleanの「横断検索」

Webブラウザ上のGleanの検索窓に知りたいことを入力すると、Microsoft365やBox、Google Workspace、Slack、Salesforceなどの企業で利用しているSaaSシステムを横断的に検索して、瞬時に知りたい情報を探し出します。


<Gleanの便利機能>

・検索結果について詳しい従業員を表示する
・これまでの検索履歴を学習し、検索者が必要とするインサイトをパーソナライズして提供する
・検索者が所属する組織や、職種、役職などをもとに、同じ立場の人がよく検索したり閲覧している履歴も解析しながら、
 その検索者が必要とする情報を提案する


STEP2:PoC


2022年秋には、営業職を中心に数百名を対象としたPoCを開始しました。
3ヵ月程度、実際の業務で使ってみてもらった結果は大変好評でした。
驚いたのは「 もうGleanなしでは業務が回せない 」とまで言い出す熱烈なファンが現れたことです。
その結果を受け、2023年1月の経営会議にてGleanの全社導入が決定しました。


STEP3:「横断検索」機能の全社導入


2023年2月、ついにGleanの「横断検索」機能を全社導入し、アシストの全社員がGleanを利用するようになりました。
最初はPowerPointやExcelなどのオフィス文書が大量に格納されたクラウドストレージを中心に、次にSalesforceも対象に、というように検索対象先を徐々に広げていきました。

社員向けに最低限の使い方をまとめたマニュアルや動画は準備しましたが、正直手厚いフォローはしていません。
それにも関わらず、日に日に検索回数は増加していきました。

Glean導入前は、弊社ポータルのトップページに「検索窓」はあったのですが、私含め誰も使っていませんでした。
理由はシンプルに「欲しい物が見つからない」からです。
検索システムへの信頼がなかったわけですね。

Glean導入後は

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・検索すれば見つかる
・検索キーワードさえ間違えなければ必ずヒットする
・検索キーワードを入力する途中で欲しい資料が出てくる
・キーワードに詳しい人が探せる
・その人の上司や所属組織もすぐに分かる

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といった成功体験を経て、利用頻度が上がっていきました。

利用すればするほど、Gleanのパーソナライズ機能により「その人に合った検索結果」が出るようになり、より便利になったGleanの利用回数が増えていく……というポジティブなループが回るようになりました。


STEP4:「生成AI」機能の追加


2023年5月、Glean社から「生成AI機能が日本語でも使えるみたいだから使ってみる?」と一報が入りました。
まずは数名の社員で使ってみたのですが「ヤバイ」という感想がピッタリなほどの衝撃が走りました。
これは「 社内のあらゆるナレッジを生成AIで即活用できる 」時代になったことを確信した瞬間でもありました。


Gleanの「生成AI」

チャットで質問すると、社内のデータを横断検索して回答を生成します。
複雑な質問であったとしても、質問の意図をGleanが読み解き、わかりやすく回答してくれます。
より詳しく調べたい時は、回答結果に表示される「関連したドキュメントやリンク」を見ることができます。


今ではGleanは業務とは切り離せないものとなっており、全社員が当たり前のように使っています。
元々ファインチューニングでの実装を試みていた「サポート業務における生成AIの活用」も、Gleanで実現できました。
----- 参考コラム:【Oracle Database】サポートセンターでの生成AI(Glean)活用 -----

今後も各自の「活用事例」を共有するために、Zoomランチ会で情報交換をしたり、Glean活用事例コンテストを開催したりと、ますます活用の幅が広がりそうです。

「それでどんな効果があるの?」「ぶっちゃけどうだった?」と気になる方は、ぜひ弊社の担当営業に聞いてみてください。
全社員が日々使っていますので、ユーザーとしての感想を聞けるはずです。


さいごに


アシストでは、2023年5月から、お客様にもGleanを紹介・販売するようになりました。
そこから約半年の間に日本国内で10社を超えるお客様に導入いただいています。
実はその多くが西日本地区のお客様です。西日本には、情報を取得することに貪欲で、DXに積極的な企業が多いのかもしれません。

Gleanに少しでも興味を持たれましたら、ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。
ここでは書けない裏話もこっそりお話しします。

ちなみにこのコラムも、私ではなくGleanが執筆・改訂をしているのかもしれませんよ(笑)。



参考


[ 資料・動画 ] Glean資料ライブラリ

[ 資料・動画 ] Glean資料ライブラリ

Gleanの紹介資料やデモンストレーション動画を公開中!

\ こんな資料や動画を用意しています /
・3枚でわかるスライド
・Gleanご紹介スライド
・Gleanのココがスゴイ!
・Gleanとは(動画)
・Gleanの検索機能(動画)
・Gleanのチャット機能(動画)

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