データ活用の「攻め」と「守り」の摩擦解消がビジネススピードを加速する:Delphix講演報告
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2016年に発表された経済産業省の調査によると、国内のIT人材供給は2019年をピークに減少傾向に入り、2020年には最大で36.9万人が不足する(*)など国内のIT技術者不足が深刻化することが明らかになり、政府による働き方改革推進も広がりを見せています。
そうした中、2018年3月15日、16日の2日間にわたり開催されたガートナー・ジャパン主催のイベント「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018」では、テクノロジによって新しいビジネスモデルを生み出す取り組みや既存のビジネス・オペレーションの効率を劇的に向上させる取り組み、また、新しいテクノロジや人材育成を駆使して、ビジネスニーズに機敏に対応できる仕組みが紹介されました。
アシストからも、データベース技術本部 ビジネス推進部部長 岸和田隆が登壇し、「ダイナミック・データ・プラットフォームがこれからのデジタル変革を支える」と題した講演で、弊社が提供する「Delphix(デルフィックス)」が企業のビジネスやアプリケーション戦略にもたらす価値についてご紹介しました。その内容をダイジェストでお届けします。
データ活用の“攻め”と“守り”の摩擦をいかに解消するか
「今日の情報システムには、ビジネススピードの加速、セキュリティリスクの管理、クラウドの最適な活用、生産性の向上など、様々な要望や課題が突き付けられています。しかも、これらをすべて実現しながら同時にコストを削減することが経営から求められています。この難問をクリアするための重要なポイントになるのが『データ活用』です」
岸和田はセッションの冒頭でこう述べ、今日多くの企業が「データ利用のニーズ」と「データ管理上の制約」の両立に苦慮し、思うようにデータ活用を進められずにいると指摘します。言うまでもなく、企業におけるデータ活用のニーズは急速な勢いで増大しています。ビッグデータやIoTなどの技術が実用化されたことにより企業の中に大量のデータが蓄積されるようになった今、ビジネスの現場ではそれらを利用して新たな知見を見いだしたり、より迅速・正確な意思決定や将来予測に役立てたいというニーズが顕在化し、迅速な実現が求められています。
またクラウドのビジネス利用が広がるにつれ、クラウドとオンプレミスとの間でデータを行き来させ、より高度なデータ活用を行いたいというニーズも高まっています。さらには、クラウドを活用した迅速なアプリケーション開発・展開を進める上でも、データをいかに柔軟に扱えるかが重要なポイントになってきます。
一方、データを管理する側からすると、企業が抱えるデータ量が増加するに従い、それらの管理に要する手間やコストも年々増え続けています。データの保護やセキュリティ対策、ガバナンスという面でも、個人情報保護法やPCI DSS、GDPRなど、国内外で個人情報の扱いに関して厳しい規制がかけられるようになり、これに対応するためにも多くのコストや手間を強いられています。
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このように、「攻め」のデータ利用のニーズが高まる一方で、データを管理する「守り」での制約も増え続けているというジレンマに多くの企業が悩まされている、と岸和田は指摘します。逆に言えば、このジレンマをうまく解消できれば、企業はデータ活用を強力に推し進めることができるのです。
「データの攻めと守りの両立が実現すれば、データ利用者は必要なデータに必要なタイミングでアクセスできるようになり、本番システムと同じデータを使ってアプリケーションの開発やテストができるようになり、様々なビジネスデータを低リスクで活用できるようになります。同時に、データ管理者も、データ利用者の要請に応じて、迅速にデータを提供できるようになり、ストレージの利用効率を高められるようになり、クラウドとオンプレミスのハイブリッド環境下で柔軟にデータを管理できるようになります」(岸和田)
そして、まさにこうしたデータ活用の在り方を実現できるキーコンポーネントとして弊社が推奨するのが「Delphix」なのです。
多様なデータ活用・管理のニーズに応える「Delphix」
Delphixが提供するデータ活用およびデータ管理の仕組み、あるいはそのためのプラットフォーム技術全般が「Delphix Dynamic Data Platform」です。岸和田は、このDelphix Dynamic Data Platformの仕組みを次のように説明します。
「オンプレミスやクラウドなど様々な場所に散在し、またデータベースやファイル、アプリケーションなど様々な形式で管理されているデータを、Delphixが1カ所に収集します。その際、データは毎回全件コピーするのではなく、初回のコピー以降は差分データのみを自動的に取得するため、システムやネットワークに与える影響を最小限に抑えながらデータの同期を取ることができます」
さらにその上で、収集したデータをDelphix内部で“仮想化”して管理することによって、管理者は「仮想のデータセット」を自在に切り出してユーザーに提供できるようになります。この仮想のデータセットは「データポッド」と呼ばれ、ユーザーが望むデータのセットを切り出して提供します。このデータポッドはあくまでも論理的・仮想的なデータセットであり、データの実体は伴っていません。そのため、データのコピーや移動にかかる時間や手間、データの保管に必要なストレージ容量を大幅に抑えた上で、手軽にデータをユーザーに提供できるようになるのです。
「ユーザーはデータポッドの単位で、自由にデータを変更したり、元の状態に戻したり、あるいは複数のバージョンのデータを管理できるようになります。しかも、あるデータポッドに加えた操作や変更は、他のデータポッドや元のデータソースには一切影響を与えません。こうした仕組みによって、データを活用するユーザーに大きな自由度を与えるとともに、データを管理する側も迅速かつ簡単にユーザーにデータを提供できるようになります。このような仕組みを備えた製品は、今のところDelphix以外にはほとんど存在しません」(岸和田)
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Delphixにはデータをマスキングする機能もあり、個人情報など外部に出せないデータ項目を、自動的にダミーデータに書き換えることができます。これにより、セキュリティを確実に担保しながら、安全に安心してデータ活用を推し進められるようになります。また、データの活用状況を集中制御できる強力な管理機能も備えており、管理者はDelphixを介したデータの展開やマスキングなどの実行状況を一元的に監視したり、分析結果をリポートにまとめることができます。
加えて、これらの機能の大部分をAPIで外部に公開している点も、Delphixの大きな特徴だといえます。アプリケーションやDevOpsツールから、これらのAPIを通じてDelphixの機能を実行することで、データ管理タスクの自動化も可能になります。
こうしたDelphixの各種機能を活用することで、企業は多様な価値を享受できると岸和田は述べます。
「Delphixを導入した企業の中には、アプリケーション開発とリリースサイクルの期間を30~50%短縮させたり、開発やテストのために多数のデータセットを保持するためのストレージコストを80%削減するなど、大きな成果を上げた例が多数あります。同時に、データの自動マスキングにより確実なセキュリティを担保できたり、クラウド導入のハードルを大幅に下げた例もあります。「攻め」と「守り」両方の極めて多様なデータ活用ニーズに応えられるのも、Delphixの大きな特徴だと言えます」
データ分析・BIやクラウド移行における導入効果に大きな期待
本セッションの後半で岸和田は、Delphixの特徴が特に生きるであろうユースケースを紹介しました。本番環境のデータを使って開発やテストを行うケースでは、本番環境のネットワークセグメントに配置したDelphixが本番データと同期を取り、データにマスキング処理を施した上でさらに開発環境のネットワークセグメント内に配置したもう1台のDelphixにレプリケーションし、各開発者やテスト担当者にデータポッドで展開するといった構成がよくとられます。
この場合、本番環境のデータはマスキングした状態で開発環境に渡されるため、セキュリティを担保した上で本番データを使った開発やテストを安全に実施できるようになります。また、Delphixのライセンス価格はDelphixの稼働数ではなく、Delphixに取り込むデータソースの容量によって決まるため、Delphixを複数台配置した構成もコストを気にせず組むことができます。
ETL処理をオフロードするためにDelphixが使われる例も多く見られます。基幹系データベースから情報系データベースにデータを転送するためのETL処理は、転送元データベースに大きな負荷をかけ、処理時間も長くかかるため、夜間バッチで行われることが一般的です。そのためデータに1日のタイムラグが生じます。Delphixは、初回のデータコピー以降は差分データのみの転送でデータ同期をとるため、転送元データベースに負荷をかけることなく、ほぼリアルタイムに最新のデータを取り込むことができます。こうして取り込んだデータを、さらにDelphixの仮想データベースから情報系データベースへとETL処理で転送することで、基幹系データベースには負荷をかけずに、かつリアルタイムに近い鮮度の高いデータを情報系データベースに反映できるようになります。
個々のデータ利用者に展開されたデータポッドは、任意の時点にデータの状態を巻き戻したり、ソースコードのようにデータのバージョン管理を行えるほか、他のユーザーのデータポッドと特定のバージョンのデータを共有することもできます。本セッションでは、テスト担当者がバグを発見した際のデータを開発者と共有し、開発者側で即座にバグを再現するデモが披露されました。
米国の金融サービス企業では、アプリケーションの開発・テスト環境に全面的にDelphixを導入し、こうした機能を活用したところ、開発のより早いタイミングで多くのバグを検出できるようになり、アプリケーション品質と開発生産性の飛躍的な向上を実現したといいます。
金融以外にも、ヘルスケアやテクノロジー、小売、製造、通信など、様々な業界で、世界約400社の大手企業がDelphix Dynamic Data Platformで高度なデータ活用を推し進めています。その用途は多岐にわたり、アプリケーションの開発・テストやデータのセキュリティ・コンプライアンス対応以外にも、クラウドへのデータ移行やデータ分析・加工・レポーティング、データ保護など実に多様です。
特にデータ分析やBIの用途においては、先ほど挙げたETLのオフロード構成などを活用することで、鮮度の高い分析データをシステムに大きな影響を与えることなくDWHに集めることができるため、高い導入効果が期待できます。またアプリケーションやデータのクラウド移行においても、オンプレミス環境のDelphixとクラウド環境のDelphixの間でデータをレプリケーションする構成をとることで、セキュアかつ効率的にデータをクラウドに移行できるようになります。
DelphixはITに携わる人々の働き方をも大きく変える
岸和田は最後に、Delphixのこうした導入効果により企業システムが抱える様々な課題が解決でき、ひいてはITに携わる人々の働き方をも大きく変えていくのではないかと期待を述べます。
「近い将来、国内のIT技術者の数が大幅に不足すると言われている中、Delphixのようなツールは、データにまつわる仕事の生産性を飛躍的に向上させ、労働人口不足の解消にも一役買えるのではないでしょうか。今後、企業が働き方改革を推進していく上でも、Delphixには大きな役割が期待されると思います」
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※「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」経済産業省より
http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160610002/20160610002.html
【ご参加のお客様からのコメント】 ※抜粋してご紹介しています。
・今後のデジタル化に関する取り組みの基盤やクラウド環境へのデータ移行に有効だと感じました。
・DevOpsに有効だと感じました。
・インフラ担当者に検討させたい。
・システムが複数サーバに分散しており、データの断面を揃えてテストするのが難しく、困っています。
Delphixを検討してみたいです。
・ダミーデータのみでテストを実施していたことによる障害を経験したことがあり、
本番データを安全に使えるDelphixは使えそう。
・マスキングが、簡単で安全にできそうだと感じた。
・本番データではテストケースに対する網羅性は低いが、実際に存在する想定外のデータに対応できる。
・開発用のテストデータ準備作業の効率化や、簡易バックアップに使えそう。
・本番環境の障害調査で使えそうだと感じました。
本セションの講演スライドをダウンロードいただけます。
2018/3/15-16開催
『ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018』
【LS2A】ダイナミック・データ・プラットフォームがこれからのデジタル変革を支える 株式会社アシスト