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システム開発工期短縮のボトルネック「テスト工程」に改善のメス:Delphix事例講演レポート

マツダ株式会社によるDelphix活用事例

最新技術の活用による「攻めのIT」と既存システム資産を再生する「守りのIT」

日本を代表する自動車メーカー、マツダ。国内はもとより欧州を中心に海外でも広くビジネスを展開するマツダは、ロータリーエンジンに代表される独自技術や、走りにこだわったクルマ作りが多くのユーザーに愛され続けており、またその優れた製品デザインも世界中で高い評価を受けています。

AIやIoTの活用がクルマにおける顧客体験価値向上に欠かせなくなった今、マツダのIT部門でもビジネス競争力強化に向けたIT活用と、それを実現するシステムの構築に積極的に取り組んでいます。一方、メインフレームをはじめとする既存のシステム資産をJavaで再構築するなどの老朽化対策も進めており、こうした「攻めのIT」と「守りのIT」の両輪で多数のプロジェクトが同時進行しています。限られたリソースでこれらのプロジェクトに短期間で対応していくためには、システム開発の抜本的なブレイクスルーが必要であると判断。次世代標準フレームワーク一括整備への取り組みを開始しました。

カタログ選択型開発と超高速開発基盤導入への取組み

マツダの取組み~カタログ選択型開発と超高速開発基盤の導入~(クリックして拡大)

次世代標準フレームワークで目指したのは、「カタログ選択型開発」でした。システムごとに完全オーダーメイドで「造る」から、業務要件やそれを実現するために必要な機能や部品を「選ぶ」への開発スタイルの転換です。さらには、システムを設計するとそのカタログから必要な機能や部品を選んでプログラムを自動生成する「超高速開発基盤」を導入し、更なる生産性向上と開発のスピードアップを実現しようとしています。カタログ選択型開発の機能や部品には、既存資産の優れたものを利用することで、アプリケーションとインフラに関するマツダの英知を結集しています。

カタログ選択型開発と超高速開発基盤の導入により、設計からコーディングまでの工数を大幅に削減することに成功したマツダが、次に着目したのがテスト工程でした。テスト工程は、従来からシステム開発プロジェクト工期の大きな割合を占めていましたが、工数を削減できずにおり、開発工期短縮のボトルネックになっていました。

一般的に、テストにおいて工数と品質はトレードオフの関係にあります。テスト工数の単純な削減は品質低下を招く可能性があるため、高品質維持と効率化の最適なバランスの見極めに取り組んでいます。一方、テスト工程で行われる作業を分析したところ、品質には全く影響を与えずに削減可能な工数があることに気づきました。テストデータの準備や管理に多大な工数が費されていたのです。


効率化が難しかったテストデータの準備

マツダ株式会社 品川 誠一氏
マツダ株式会社 品川 誠一氏

マツダには、月間生産台数確定のタイミングで実施される処理が多数あります。システムのテストにおいては、「確定日1カ月前」「確定日1週間前」「確定当日」という特定の時点のテストデータが必要です。このようなデータの「断面」を準備するためには、適切なタイミングを見極めて本番データベースからデータを抽出し、テスト用データとしてマスキング加工するなど、高スキルのデータベースエンジニアの多大な工数が割かれていました。作成した断面を使ってテストケースを実行しデータを更新した後、更新前の状態に巻き戻すには元データからの再インポートが必要です。そのため1日に2、3回が限度であり、開発者にとってもテスト効率化のボトルネックになっていました。


マツダの取組み

マツダの取組み~狙いとする効果~(クリックして拡大)

単体テスト時には、開発者がそれぞれのローカルPCにOracle Databaseのインスタンスを立ち上げ、データをインポートしてテスト用データベースを作成していました。プロジェクト全体で見ると、プロジェクト規模が大きくなるほどこのインポート作業にかかる工数が大きくなります。またマツダでは、遠隔地や海外にも開発拠点を持っています。海外の開発拠点で発見したバグを国内で再現しようとしても、データの断面が変わってしまっていて再現できず、障害対応にも時間を要していました。

テストデータの準備工数が課題であることに気づき、その解決方法を探していた2017年9月、アシストからデータベース仮想化ソフトウェア「Delphix 」を紹介されました。


Delphixがデータ準備の様々な課題を解決

Delphixは、独自のデータベース仮想化技術により、データベースの実体を物理的にコピーすることなく迅速かつ効率的に複製できるというソリューションです。

Delphixでは、作成したデータベースの複製に任意の断面を定義し、それを「ブックマーク」として保持できます。テストケースに応じて、ある断面の状態を保持しながら別の状態を派生させることも可能です。開発者自身がわずか数クリックでそれらの作業をできるようになったことで、データベース加工の作業待ちや、他の開発者との作業調整が不要になり、自分のペースで効率的にテストが実施できるようになります。

また、ある担当者がバグを発見したとき、その時点のデータの断面を保持して自分以外の人に共有することができます。開発者はテスト担当者がバグを発見したときと完全に同じデータを使って確実に再現できるようになるため、バグ修正や障害対応も迅速に実施できます。

従来は、開発者が使うDBは開発用マスターDBからの物理コピーであり、更新前の状態にデータを戻す洗い替えも、更新前のデータを再コピーしていた。Delphix導入後は、物理コピーは不要になり、データの洗い替えもDelphixのブックマーク機能による巻き戻しだけで済むようになったため、テストの効率化、回転率が大きく向上した。

開発者の人数分という大量の仮想データベースを、少ないディスク容量で簡単に作成できる点も、マツダは高く評価しました。開発者は割り当てられた仮想データベースでテストができるため、ローカルPCにデータベースを構築してデータをインポートするという作業は不要です。また資源効率も良く、例えば100個の仮想データベースを作成するのに必要なディスク量は元のデータベースの2倍にも満たず、ハードウェアリソースの劇的な削減になります。これは、Delphixの仮想データベースが元のデータベースの差分のみを保持する仕組みだからです。

このように、テストデータの構築・管理で抱えていた課題を解決する上で、Delphixが極めて有効だと考えたマツダは、パイロットプロジェクトで実際にDelphixを利用することで有効性を確認しました。テストの実務に即したさまざまな評価項目を設け、テストデータの準備や管理の作業を行ってパフォーマンスや使い勝手を評価し、「Delphixは同社の要件を十分に満たす」との結論に達しました。

こうして2018年10月、Delphixの本格的な活用が開始されました。


テスト現場にすぐに定着し、今や欠かせないツールに

マツダでは現在、完成車の国内流通システムの構築プロジェクトでDelphixを活用しています。開発者40名規模のこのプロジェクトでは、2018年10月からスタートした結合テストにおいて、Delphixで仮想データベースを6つ作成し、複数のテストシナリオを並行して実施することでテストの回転率を上げています。

テスト現場では、任意のタイミングで必要な断面に戻れるよう、Delphixの仮想データベースに頻繁に断面(ブックマーク)を登録しており、テスト開始2週間後には既に150個のブックマークが登録されていました。従来は、バグ発生時のデータを正確に再現させるのは極めて困難でしたが、Delphix導入により、バグ発生時にすぐに直前のデータに戻して保持できるようになり、後からでも確実に再現できるようになりました。

マツダ株式会社 品川誠一様

聞いたことのないツールを使うのは面倒だ、と当初感じていたプロジェクトメンバーも、使い始めてみると「とても便利」「これがないとテストにならない」と評価し、テストに欠かせないツールになりました。Delphixはユーザーインターフェースが直観的で分かりやすい点も好評で、多くのメンバーがごく短時間の説明だけで使いこなせるようになりました。

大量の仮想データベースを数クリックで作成できる点も大変好評です。現時点でも6つの仮想データベースを作成して並行利用していますが、今後さらに大規模な開発プロジェクトの単体テストにおいて、数百名規模の開発者に専用のテストデータを提供する際に、この機能が大いに生きるのではないかと期待しています。


「データのコンテナ化」でさらなる開発生産性の向上を目指す

このように、サーバ上にテスト用の仮想データベースを個別に構築・管理できる点は、今後開発環境のクラウド化やコンテナ化を進める上でも非常に有利だと考えています。マツダでは現在、開発者個々の専用開発環境をDockerのコンテナ環境として構築・管理する取り組みを進めています。その中で、環境の仮想化だけでなくデータをコンテナ化していくというアプローチも、DevOpsやアジャイル開発を考えたときには重要だと考えるようになりました。そこでDelphixの仮想データベースをデータコンテナと見なし、Jenkinsなどの自動実行ツールのプロセス内で各環境のDockerコンテナと柔軟に結びつけながら、高速にリリースしていく方法を検討しています。

Delphixの導入にあたっては、アシストの技術者の手厚いサポートがスムーズな導入や展開に大いに役立ちました。今後、データのコンテナ化構想を実現する上でもアシストの支援が必要だと考えています。今後も高レベルなサポートに期待しています。


【本講演を聴講されたお客様からのコメント】 ※抜粋してご紹介しています。

・迅速に少ない容量でデータを取れるのが良いと思いました。
・テスト工程の工数はユーザー部署としても気になっていました。社内の現在のやり方を聞いてみようと思います。
・マツダ様と同じくテストデータの準備に工数がかかっており、Delphixを検討してみたい。
・すぐに導入は難しいかもしれないが、検討してみたい。
・本番での障害発生時の問題切り分けに使えそうだと感じた。
・使いやすそうなので、ハンズオンで実際の操作を確認してみたい。


Delphix Dynamic Data Platformのご紹介

データの価値をスピーディーに活用

Delphixが実現する様々なデータ活用(クリックして拡大)

企業にとってのデータの価値は年々高まっています。それらを活用してスピーディーにビジネスに直結させたいという「データ利用のニーズ」が顕在化し、素早い実現が求められる一方、データの保護やセキュリティ対策、ガバナンス、またデータを保持するストレージ容量といった「データ管理上の制約」もますます厳しくなっています。このように、「攻め」のデータ利用のニーズが高まる一方で、データを管理する「守り」での制約も増え続けているというジレンマに多くの企業が悩まされています。逆に言えば、このジレンマをうまく解消できれば、企業はデータ活用を強力に推し進めることができます。

Delphix が提供するソリューションの価値は、こうしたデータ活用の「攻め」と「守り」の両立です。データベース仮想化の技術を使ってデータベースの複製を迅速・簡単に作成できるDelphix は、開発・テストに限らず様々な用途で多くのユーザーに活用されています。近年では、BIのためのデータベースを手軽に作成したり、災害対策のためにDelphix を利用するユーザーも増えてきています。

Delphix は、必要な人が必要なデータを必要なタイミングで安全に利用できる環境を提供することで、データ活用の「攻め」と「守り」を実現し、企業の成長やガバナンス強化に大きく寄与します。

Delphixを実現するテクノロジー

スナップショット技術によるデータベースの仮想化(クリックして拡大)

Delphix は、物理的なコピーではなく、ストレージのスナップショット技術とDBMS のリカバリ機能によって、データベースを構成するファイルを仮想的に再現します。物理的なデータのコピーが発生しないため、本番環境の特定時点のデータを開発環境に瞬時に生成することが可能です。また、Delphix 独自のストレージ圧縮技術も実装されていることから、ストレージ容量を圧倒的に抑えられ、ストレージリソースのコストを大幅に削減できます。

Delphixでは、仮想データベースでありながら更新も可能であり、テストフェーズ(結合テスト、システムテスト、運用テスト)や、本番環境の設定変更前の検証、本番同様のデータを使用したトレーニング用途としても利用することが可能です。



本講演の概要

◎本イベントについて

 日経XTECH DxD Summit
 ~デジタルビジネスの勝敗を決めるのは超高速なソフトウエア開発力~
  開催日:2018年11月20日(火)
  会 場:ホテル雅叙園東京

◎本セッションについて

 【ソリューション講演】開発/テスト工程で利用するテストデータ準備時間を従来比:10分の1に!
  講演者:マツダ株式会社 MDI & IT本部 サプライチェーンシステム部
       主幹エンジニア 品川 誠一 氏
      株式会社アシスト データベース技術本部 ビジネス推進部
       部長 岸和田 隆


本事例のご案内

マツダ株式会社様のDelphixご活用事例について、以下のページでもご案内しています。


『Delphix導入事例集~5社の事例を徹底研究~ 』のご案内

5社のDelphix活用事例を集めた事例集です。
本ページでご紹介したマツダを含むIT先進企業5社それぞれの事例ごとに、Delphix導入に至った背景やビジネス上の課題と、Delphix導入によりどのように解決され、どの程度の効果が出ているかが分かりやすくまとめられています。


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