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迫り来るシンギュラリティと人類の未来

アシストテクニカルフォーラム2016 特別講演

シンギュラリティがやってくる


シンギュラリティとは、機械超知能またはそれにより知能増強された超人類が誕生する時であり、2045年の頃であるとされている。人類は過去に、農業革命、産業革命を経験したが、今後数十年の間に人類史を一変するようなシンギュラリティ革命が起きようとしている。

第二の大分岐


産業革命に乗ったヨーロッパ、米国、日本は先進国の道を歩み、乗り損ねた中国とインドは発展途上国に転落した。これを大分岐と呼ぶ。今後起きるシンギュラリティ革命では、第二の大分岐が起きる。日本がそれに乗るかどうかは、日本の将来を考える上で重大な問題である。中国は過去の失敗を繰り返さないために、科学技術に膨大な投資をしている。特にスーパーコンピュータではすでに世界一を達成した。日本では齊藤元章氏が一人、中国と張り合えるスーパーコンピュータを開発している。

汎用人工知能がカギ


シンギュラリティ革命で大切な技術は人工知能、特に人間のように考えることのできる汎用人工知能である。人工知能技術では米国を中心とする欧米が圧倒的に進んでいる。特にグーグル、フェイスブック、IBMが強い。中国はこの方面でも、膨大な投資を決断した。日本は圧倒的に遅れている。それを跳ね返すのが、齊藤の人工知能用コンピュータの開発である。齊藤の構想では、1000億のコアと100兆のインターコネクトをもつ脳型コンピュータを2025年までに作るという。その脳型コンピュータは人間10億人分の計算能力を持つ。だから計算能力に関してだけ言えば、2025年にもシンギュラリティは可能だ。

マスターアルゴリズムを求めて


しかしハードは良いとして、問題はソフトである。汎用人工知能を作るためには、人間の大脳を模倣するのが手取り早いと思われる。世界ではそのための激しい研究競争が展開されている。今後の世界を制するのは、天才と研究投資である。日本では全脳アーキテクチャ・イニシャティブという組織が、研究をしている。大脳新皮質の計算アルゴリズムが解明されれば、人類史が変わる。私はそれをマスター・アルゴリズムと呼んでいる。その姿はおぼろげながら見えてきた。シンギュラリティは近いのである。


松田 卓也 氏  プロフィール

ブロードバンドタワーAI2オープンイノベーション研究所所長、神戸大学名誉教授。京都大学理学博士。本来は宇宙物理学者である。著書に「相対論的宇宙論」「間違いだらけの物理学」など多数。近年はシンギュラリティ・サロンを主宰してシンギュラリティ問題について発信している。また汎用人工知能解明に向けて、神経科学と機械学習理論の融合を模索している。


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