ビジネス現場におけるデータドリブンの現状と今後!~推進、定着の落とし穴と、その飛び越え方~
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2022年3月に開催したaebisユーザー会にて、アシストのユーザー企業様にご登壇いただき「ビジネス現場におけるデータドリブン」についてパネルディスカッションを実施しました。
情報システム担当者、IT企画担当者、事業部門のシステム担当者と、異なる立場でシステムに携わるメンバーが、それぞれの視点でDXやデータドリブン推進に向けた経験や教訓を語っていただきました。これからデータドリブンに取り組まれる方はもちろん、今まさに課題を感じられている方にも、ヒント盛りだくさんのディスカッションの一部を抜粋してお届けします。
HEADLINE
パネリスト
株式会社オークネット
DX部門 デジタルサービス開発部 デジマ・データ分析グループ
段 裕之 氏
BtoBオークション運営企業の情報システム部門で業務に従事。デジタルマーケティングの推進、データ分析をミッションに持ち、システムの定着、活用推進も担う。
オークネット社ではBIツール「Tableau」を利用中。2021年から改めてデジマグループでデータ分析にも取り組む予定で、現在はデータ分析基盤構築が進行中。
株式会社デンソー
センシングシステム&セミコンダクタ製造部 製造企画室 情報システム推進課
川上 直人 氏
自動車部品メーカーのセンシングシステム&セミコンダクタ製造部門の情報システム部門に所属。工場の情報化推進を業務とし、Qlik Senseを活用しデータ可視化やデータ解析に取り組む。
機械学習で製品の不良発生要因解析を行った際に、データ品質やデータの前処理に苦労した経験をもつ。
株式会社アシスト
経営企画本部 ITサービス企画部 ITサービス企画課
岡田 優治
アシスト(ソフトウェア商社)の情報システム部門に所属、主にITシステムの企画や活用推進を担当。
十数年使用していたSFAとスケジューラー一体型のツールからGoogle
Workspaceへの切り替えをはじめ、「業務変革」のコラボレーションワークを率いる。現在は基幹レガシーシステムの刷新プロジェクトリーダーとして、経営側と現場側のコミュニケーションハブとして奮闘中。
データドリブンを左右する?データ品質に関する教訓
登壇した3社はそれぞれ社内システムから集めたデータを利用してDXやデータドリブンを推進しようと取り組んでいます。このデータドリブンに大きな影響を与えるのが「データ品質」です。各社でのデータ品質に対する取り組みについてディスカッションが交わされました。
弊社はデータドリブンな取り組みの「しくじり先生(失敗例)」の一つとして聞いていただければと(笑)
BIツール(Tableau)を社内で活用し、KPIの可視化に取り組んだことがあります。
その際、システムから直接取得するデータはきれいで良いのですが、現場で加工するなど、人が直接入力しているExcelを対象にした時が大変でした。
人手を介したデータなので入力ミスがあると、KPIにも影響が出てしまう。
こうなるとデータ品質の担保が難しく、KPIの活用も思うように進みませんでした。
私は機械学習で製品の不良発生要因解析を行った際に、データ品質の問題に直面しました。
この分析は、今あるデータをひとまずExcelに落とし、その中から知見を得られるか?というトライの一環でした。
そのため、比較的データがしっかり残されているラインを分析の対象に選びました。しかし、ふたを開けてみると残されているデータの多くは、部材ロットに関するカテゴリーデータでした。部材ロットのトレースをするという意味では質の良いデータと言えますが、今回の解析では加圧や電圧などの数値データの方が必要でした。結果として予測の能力(ROC-AUC)は0.5程度(ランダムな回答と同義)に留まってしまい、不良発生の要因解析には至りませんでした。
蓄積されているデータを何かに活かそう、ではなく、ラインを設計する段階から、こういう課題を解決するためにはこういう分析ができるんじゃないか?という仮説を持ち、必要なデータを考えることが重要だと気づかされました。
現在のアシストの基幹システムはフルスクラッチで開発したこともあり、自由度高く業務に合わせてシステムを作り変えてきました。部分最適なシステムやデータになっていることで、現場や経営層が欲しいデータをすぐに取り出せないことが大きな課題として顕在化しています。
現在進行中の基幹システム刷新PJでは、「全体最適」の視点で業務変革を実現したいと考えて取り組んでいます。そうすることによって経営層が欲しいデータも現場が欲しいデータも、欲しいタイミングで、基幹システムから抽出をして、分析に生かし次のビジネスにつなげる、データドリブン環境を作りたいです。
データ品質に関する体験談や、課題解決や目的に応じたデータの必要性という視点は、多くの方が共感し納得いただける内容なのではないでしょうか。
目的やアクションの具体化がデータドリブンの肝!
やったつもりになるデータ活用に注意
データドリブンに取り組む際に注意すべきことはどのようなことなのでしょうか?各社共通のポイントは、データドリブンにおける目的やアクションの具体化でした。
現場部門でITを担当している身として感じるのは、可視化した後のアクションまで踏み込んでヒアリングできていないままレポートを作ると、可視化だけにとどまってしまいアクションにつながらないんです。
「やりたいこと」に向かって、こういう数値があればこんな分析ができるのではないかという仮説を持ちながら、溜めるデータを考える(データの品質を担保する)ことは、すごく重要な仕事だと思います。
可視化の適用範囲を把握して業務フローに紐付けることが大事だと思っています。
弊社でも「いい感じにKPIを見える化して業務を回そう」という動きがありました。BIツール推進者にあるあるな課題かなと思うんですが「目的は何か?見える化した結果、どんな風に使うのか?」という点が具体化されていないため、可視化で終わってしまう。
BIツールってすごくかっこいいので「やっている気持ち」になりがちなんですが、そこが落とし穴なのではと思いますね。
データ分析の企画フェーズで、しっかり考えることが大事だと考えています。
データには、仮説や目標やこうあるべきというKPI(指標)を検討するために使う側面と、その仮説や目標やKPIが正しいのかを評価/モニタリングする側面があります。
この点を分析する立場の人が意識すると、可視化だけで終わらないデータドリブンな活動につながるのではと思いますね。
「可視化するだけで仕事をした気になるのはNG」「アクションを伴わない可視化に意味はない」といった発言もディスカッションの中でありました。(BIツールをお客様にご提案する立場のアシストとしては、なかなか身につまされる言葉です…)データを可視化して何をするのか、どのようなアクションをしたいのか、目的を具体化した上で、必要なデータやレポートを考える、という順序はデータドリブンの推進に悩まれている方に是非一度立ち返っていただきたいポイントだと感じます。
経営も現場もシステム部門も巻き込む「推進体制作り」の重要性
企業内でデータドリブン推進や業務変革を実現していくには、どのような推進体制が求められるのでしょうか。各社のこれまでの経験から全社を巻き込む体制づくりの重要性が浮かび上がりました。
私は元々業務部門に所属していて、IT部門に異動してきたんです。そのため業務部門が見たい観点や分析軸を想像して提案しています。
私のような業務部門とシステム部門の架け橋になる人材がいない場合もあると思いますので、体制としては現場の業務に非常に詳しい方と、裏側のデータやシステムに詳しい方と、それぞれ持っているものを持ち寄る体制づくりができると良いのではと思います。
例えば「不良」の項目の意味に関しては、業務部門が一番詳しいと思うんですが、逆にシステム部門側は、そのデータを裏側でどのように持っているのかであったり、業務部門が気づいていないデータも把握していたりするわけです。
業務部門とシステム部門の双方が持っている情報を掛け合わせることで、初めてあるべき姿が見えてくることもあるのではと感じます。
全社レベルで業務の見直しをする場合、現場部門の方からすると現行業務を変えることに抵抗感が生まれると思うんですね。その中でうまくバランスを取りながら推進するには、会社として業務の見直しに取り組む目的や将来像を明確に示すことが大事だと思います。
KPIや今後のビジョンについて経営層と合意を取りながら、現場を巻き込んでいく。私が現在携わっているプロジェクトでは、各事業部からメンターを立ててもらい、その人たちと一緒に活動しています。経営層が考えている方向性と現場のギャップをいかに埋めていくかを意識しながら進めています。
現場の業務部門やシステム部門など関係するメンバーの密接なコミュニケーション、そして全体の目的や方向性の共有が不可欠、と3社とも実感していました。
今後の展望
最後に今後の展望をそれぞれお聞きしました。
これまで社内でバラバラに対応していたデジタルマーケティング活動やデータ分析の取り組みを集約していく予定です。
弊社のビジネスに対してデータを使ってどのようにアプローチできるか、その第一歩としてデータ分析基盤構築とデータ整備に取り組んでいきます。
私の部署は工場内や部内の情報化を促進していくチームなので、これまでもデータ分析ニーズに対してデータ収集の考え方などのガイドラインを示してきました。今後も継続していきます。
また業務変革におけるトップダウンの重要性を感じています。ボトムアップでの情報提供と、全体最適の視点での検討、そしてトップダウンでの展開をスピード感を持って取り組む、この重要性を社内に発信していきたいですね。
このパネルディスカッションで全体最適という観点と、事業部門と全社IT部門のバランスはすごく重要だと感じました。弊社の社内プロジェクトに持ち帰り、今日の気づきを生かしていきたいと思います。
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