ペーパーレスを機にデータドリブンへ!常に前進を続ける因幡電機産業の挑戦
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因幡電機産業株式会社(以下、因幡電機)は、電設資材業界No.1の専門商社として、照明、空調、音響、通信設備など、建物に欠かせない電気設備を供給しています。さらにはメーカーとして、全国シェアトップクラスの空調部材や、住宅設備、防災製品などの開発も行い、街づくりを支えています。そんな同社では、セルフサービスBIである「Qlik Sense」を用いたデータ活用を進めています。導入効果やこれからのさらなる活用方法とはどのようなものでしょうか。その取り組みに迫ります。
HEADLINE
プロフィール
電材カンパニー
企画室 課長
井上 勝史 氏
DX推進・人材育成・業務改革を担う。
管理本部
情報システム部 システム企画課 課長
藤幹(ふじもと) 昌宏 氏
基幹システムの企画や管理運用を担当。
管理本部
情報システム部 システム企画課
田中 健太郎 氏
基幹システムの企画や管理運用を担当。
トップダウンでペーパーレス化を実現
特種電動発動機の製造・販売会社として1938年に創業した因幡電機は、80年以上にわたって、時代のニーズに合わせて柔軟に姿を変えながら成長を遂げてきました。現在では電設資材を供給するリーディングカンパニーとして、社会の「当たり前」を支える使命を担うだけでなく、メーカー機能を併せ持ち、幅広い分野でニーズに即応したものづくりを手掛ける「技術商社」として独自の地位を確立しています。
「根強い紙文化」ならではの課題
因幡電機は2019年4月、激しい変化が予想される新時代に対応すべく、カンパニー制に移行しました。その一つ「電材カンパニー」では、傘下にある3つの統括部が集まり、毎月5時間にわたる管理職会議を実施していましたが、会議資料の作成に要する膨大な作業工数が課題であったと、電材カンパニー 企画室の井上氏は語ります。
統括部長は社内全体を分析しなければならず、会議の準備に3日かけるなど、作業量が膨大になっていました。そこで、分析や資料作成にかかる時間を短縮できないか相談を受けていたのです。会議のために60ページの資料を24人分準備しなければならず、6人が1日かけて作成・印刷しているような状況も改善したいと考えていました。また、会議の参加者によると資料が使われるのはその場限りで終了後には廃棄されるため、作成にかかる手間に対して無駄が多いことも課題でした。
電材カンパニーは同社の中でも、特に「紙文化」が根強かったといいます。こうした背景を受け、経営陣からペーパーレス化の大号令が下り、紙の資料ベースで行われていた会議を改革することになります。その際、井上氏が目をつけたのが様々な企業データを分析するビジネスインテリジェンス(BI)ツールだったのです。
直感的なデータのわかりやすさを統括部長が高評価
井上氏は情報システム部に相談を持ちかけ、紹介されたのがQlik Senseでした。情報システム部の田中氏はこう語ります。
少し前に、在庫商品を取り扱う部署から在庫を可視化したいという依頼が情報システム部にありました。色々なBI製品を比較した結果、応用のきくQlik Senseを導入していました。電材カンパニーの会議にも活用できると考えて、Qlik Senseを紹介しました。
しかし、それまで見慣れていたExcelの資料をやめてBIツールへ移行することについて、関係者の反応はどうだったのでしょうか。
Qlik Senseでは、KPIに対する結果をランキングやグラフなど多彩なかたちで直感的に伝えられるため、統括部長に紹介したところすぐに気に入ってくれました。自ら管理職会議でQlik Senseのプレゼンを買って出たほどです。会議の出席者からはQlik Senseにポジティブな反応が返ってきて、すんなりと導入できました。
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報告だけに留まっていた従来のExcelの資料を用いた会議は、Qlik Senseを導入したことで、その場でデータをドリルダウンして原因を探ることや経年変化を見ることができるようになり、ディスカッションの場に変化しました。
データ活用で「業務の偏り」をなくすことに成功
電材カンパニーでは、Qlik Sense導入以降に様々な場面で役立つBIアプリを作成して業務改善をしています。その一例が売上分析や営業の業務分析です。
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電材の卸売りでは主にFAXでやり取りが行われています。しかし、紙のやり取りでは社員の業務量を可視化するのは困難でした。そこで因幡電機では、クラウドFAXを導入して送受信ログを取得できるようにし、それをQlik Senseで残業データや社員の入社年次などとひも付けることで、業務の偏りを分析しやすくしています。
問題・課題の発見から受注業務をセンター化
FAXでの受発注処理の偏りが可視化されると、それを解消するために、営業の業務改善と生産性向上を図ることになります。企画室に受注を集約し分析によって見えたばらつきを解消するため「受注センター」を立ち上げることになりました。その後稼働を始めた受注センターは、期待どおりの役割を果たしています。
現在のデータを見てみると、以前は特定の社員に偏っていたFAX対応の負荷が明らかに分散されています。データで明確に状況を示すことで意識改革を促し、本来のコア業務に割く時間を増やすことができました。
企画室の明確な役割と権限が普及を促進
データ活用・分析を社内に普及していけるかどうかは、社内の体制も深く関係しています。電材カンパニーはその点でも特徴がありました。
遅れていたからこそトップに強い課題意識
一般的にデータ分析は、情報システム部門や専門部署、または専門のスキルを持った人材に頼りがちです。しかし、電材カンパニーでは企画室が中心となり、ユーザー部門主体のデータ活用を展開しています。これは、トップの方針と企画室に明確なミッションがあったことが大きかったと田中氏は推察します。
情報システム部から見ると、電材カンパニーは4つあるカンパニーの中で最も保守的だと感じていたので、新しい文化を受け入れることが難しいと考えていました。しかし裏を返すと、その分カンパニーの上層部が組織文化に課題を持っていたはずです。トップの判断で会議資料のペーパーレス化を進めたことにより、達成感がもたらされ、そのギャップが成功の大きな要因となったのではないでしょうか。
さらに電材カンパニーは、井上氏の所属する企画室がカンパニー内の変革を主導する体制をとっているという点で独自の動きを見せています。他のカンパニーと比較して、ある程度権限委譲されており、新しい事にチャレンジできる雰囲気があるため、カンパニー全体に対しての改善を担う企画室が積極的に行動しています。
そのため、例えば新しいツールを導入する際には、まず企画室で試用し、良さそうだと判断したら責任者に説明して、すぐに承認を得てカンパニー内に導入しているといいます。
Qlik Senseのデータを責任者が率先して活用することで、カンパニー全体にデータを見ようという意識の変化も見られました。管理職はほぼ毎日のようにアプリにアクセスしています。こうしたデータを活用しようという意識の高まりは、アプリへの改善要望が増えてきていることからも感じられると井上氏は話しています。
情シスとユーザー間の架け橋となる存在がカギに
電材カンパニー内では、データ活用の推進だけでなく、ログやユーザーの声をアプリの改善に生かす取り組みも繰り返し行っています。事業部門が主体となってデータ活用を進めていく場合、情報システム部門との役割分担はどうあるべきなのか。藤幹氏は次のように説明します。
BIツールでのアプリ作成は現場である事業部門で行い、情報システム部門や推進部門は、それを支援するスタンスが好ましいと考えています。現場の課題が分かるのはやはり現場です。ただし、新しいことに積極的にチャレンジしたい人は一握りですし、誰でもできるわけではありません。そういった人材の橋渡しを事業部門の企画室が担い、ユーザー側のリクエストに対してデータを素早く提供できるようにすることが情報システム部門の役割です。
当初は現場でのアプリ作成に不安があったものの、アシストのサポートセンターがあれば、現場でもできると確信できたと田中氏は言います。
サポートセンターには助けられており、付加価値のあるサービスだと感じています。かなり多くの現場担当者が直接サポートセンターを利用しており、導入時の不安も解消することができました。
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電材カンパニーの例が示すように、従来の業務が大変であるほど、その課題意識とのギャップで成功体験を得やすく、その後のデータ活用も加速していきやすいといえるでしょう。また、企画部門が情報システム部門と事業部門の架け橋となり、データと業務を繋げてデータ活用を推進していくという、組織内での関係性は今後さらに重要になってくると考えられます。
データドリブンの先に目指すもの
因幡電機では、電材カンパニーでの成功事例を他部署に展開することはもちろん、データ活用をさらに進めていこうとしています。
社内のデータリテラシー向上
社会でデータドリブンやデジタルトランスフォーメーションに取り組む風潮が高まる中で、井上氏は、データを読み書きして行動できる従業員を増やしていくことが重要だと説きます。
データを扱うスキルには、Qlik Senseそのものの習熟度はもちろん、「仮説力」がカギになります。営業担当者も管理職も、仮説を立てた上で分析できる力を身に付けることが理想です。 アシストさんにご支援いただきたいことを挙げるなら、教育の機会でしょうか。BIツールでアプリを作るのには相応の時間がかかるので、ツール教育については1日コースだけではなく、合宿のような形で短期集中で習得する機会があればより定着しやすいと感じています。
Qlik Senseを通じて自社全体がデータの価値を実感した際、次に見据えるのはデータを活用した新たなビジネスの展開です。例えば物流センターにある在庫のデータを取引先と共有することで連携を強化したり、データの価値を感じてもらえる企業にデータを販売することができないか、現状はまだ具体的な動きはありませんが、考えを巡らせているところだといいます。
ペーパーレスの取り組みからスタートした因幡電機のデータ活用は、情報システム部門と業務部門の連携でさらに発展していくでしょう。全社的なデータリテラシー向上とビジネスを推進するデータ活用に向けた同社の挑戦に、これからも期待が高まります。
※ 掲載内容は、取材当時(2022年3月)のものです。現時点の情報と異なる場合があります。
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